Yahoo!ニュース

ワンオペ育児中に子供が発熱 「子連れ出勤」より必要なこと

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
子どもは発熱が多く、保護者は対応が必要だ(ペイレスイメージズ/アフロ)

インフルエンザが流行し、子どもの病気で仕事のやりくりに苦心する家庭は多いと思います。先日、夫が3週間ほど出張してワンオペ育児中、娘が発熱を繰り返しました。保健室から呼ばれ出席停止の病気ではないかドキドキ、予定の仕事は進みません。どんな対応が必要かまとめました。

関連記事→育休から復帰、どうする子どもの病気

子連れ出勤、私たちの場合

●風邪治らないままワンオペ突入

昨年12月、筆者の風邪がなかなか治りませんでした。11月からずっとのどが痛くて、声もガラガラ。アラフィフになったからでしょうか、治りが悪くて常にマスク姿です。身内は遠方・高齢で、何かを頼める状況にありません。そんな状態で夫が3週間ほどの出張へ。

最初の週末は、娘の行事が3件ありました。土曜日は学校公開で、児童による音楽会が開かれました。日曜日は習い事の発表会で、無事にできて本人も嬉しかったようです。友人の家族が声をかけてくれたり、同じクラスのママが動画を撮ってくれたり、助けられました。発表会の後は学童保育の行事に駆けつけ、娘が友達と楽しそうに「U.S.A.」を踊るのを見て、こうした日常が送れることに感謝の思いがわき上がりました。

しかし感動している場合ではなかったのです。学校の音楽会のために「オーディション」やハードなスケジュールが組まれるとは、保護者も知りませんでした。連日の朝練・リハーサルとハイテンションをキープして疲れがたまったみたいです。やる気はあっても、体はまだ1年生。土曜授業や行事の振替休日はなく、小学校生活もなかなか厳しいです。

●初めての保健室呼び出し

ワンオペが始まって1週間の金曜日。用事のためバスに乗っていると学校から携帯電話に着信が。保育園時代は4歳まで毎月のように発熱呼び出しがあったので、これはという予感がします。途中下車して電話したら保健室の先生からで、娘の熱が37度ぐらいあるということ。

娘は1〜2歳の頃に熱性けいれんを2回、起こしました。37度5分以上の際に使うけいれん止めの座薬を処方され、仕事用バッグに入れて常に持ち歩いていました。保育園に駆けつけて使った日もあります。いくつかの病院の説明や先輩の体験を総合して「小学生になったらけいれんは起きない」と判断し、けいれん止めの持ち歩きはやめていました。

でもやはり気になります。子どもの状態は、実際に見てみないとわかりません。

●クリニック受診、あちこち連絡

保健室に行くと、毛布をかけて長椅子に横になっていました。頭が痛いと訴え、保健室で給食を出してもらったそう。高熱はなく「教室に戻って授業を受けたい」と泣きましたが、担任の先生からストップが。連れて帰り、近くの耳鼻咽喉科クリニックを受診して、うつる病気ではなかったと学校に連絡しました。学童保育や習い事に連絡して、理解してもらうのも一仕事です。子どもの発熱を理解しない人もいますから。

筆者の用事をリスケジュールした際、「お子さん、インフルエンザじゃないんですか?」と聞かれました。つまり「うつさないで」「あなたもかかっているんじゃないの」と言いたそう。「今回は違ったけど、家族全員で予防接種しても保育園や学校で流行ると避けられないんですよ」などと社交辞令しながら、「家族がインフルエンザになったら出歩けず大変なんだよ。今はワンオペだし」と心の中で叫びました。

●学童保育で遊んでいたら39度に

熱は上がらず、土曜日の用事はキャンセルしてのんびり。日曜日は元気になり、近場の図書館など出かけました。月曜日朝は熱はなく登校。学童保育には先週から話してあり、何かあれば熱を測ってもらえると思っていました。

夕方、念のために「体調はどうですか」と学童保育に電話したところ、元気といいます。ところがすぐ折り返し電話があり、測ってみたら39度あるとのこと。その前に頭が痛いと訴えたそうですが、楽しく遊んでいて元気だったため、先生が熱を測らなかったとの話です。

けいれんが起きるかは微妙な年齢です。けいれんを見ると学童の先生がびっくりしてしまうだろうと、学童を利用する前の面接で「37度以上、熱があれば連絡してほしい」「起きても救急車は呼ばなくて大丈夫」など詳しく話しました。先生たちに伝わっていると思い、油断していました。子どもって限界まで遊ぶし、高熱があっても元気なんですよね。今後はとりあえず、学童保育で体調不良を訴えたら熱を測るようお願いしました。

●再びの保健室で本音が…

高熱は一瞬でした。火曜日は下がり、本人の希望で登校しました。療養のため学童保育はお休み。いつも放課後に学童で遊ばないと気がすまない娘は、学校が終わって迎えに行くと物足りなさそう。筆者は「学童に行かない子はこんな早くに帰るんだなあ」と新鮮でした。

水曜日も学校へ。午後、再び保健室から電話です。「39度あって」と先生もあせり気味。保育園や学童保育など子どもが密集してる場所では、瞬間的に熱が上がります。保健室に駆けつけると暑かったため体温を再び測らせてもらい、38度ぐらいでした。

そして数回しか会っていない保健室の先生に、本音をぶちまけてしまいました。「更年期でつらくて…。夫は出張でいないし、祖父母は高齢で遠くて頼めません。保育園でも苦労したんです」って。動じず余計なことは言わない先生、さすがベテランです。インフルエンザは一家で予防接種を受けていましたし、学校でまだ1人もいないという情報を聞きました。

●1週間かけ悪いもの抜ける

それから子どもクリニックで溶連菌とアデノウイルスを検査しても、出ませんでした。娘が「この前のお薬は苦いから嫌」というと「おいしい薬出してあげるね」と優しいドクター。薬には賛否両論ありますが、今回はお薬ゼリーもコンデンスミルクもだめでアイス少しに混ぜ込みました。検査の結果はまた、学校に電話。感染症は管理が必要ですから、面倒でも仕方ないですね。

木曜日は熱がなく、登校しました。また呼び出しになったら気まずいと思いつつ、出席停止の病気ではない場合、慎重になって休ませると授業の遅れが気になり難しいところです。個人的な用事で気軽に休む家庭も少なくありませんが、娘は学校に行きたがります。この日は無事で呼ばれず、学童保育だけお休みしました。

「1週間かけて悪いものが抜けたかな?」という感じは、娘の表情を見てわかりました。延長時間・土曜もどっぷり利用していた学童保育を数日休み、学校生活は保育園よりハードなので自宅で過ごす時間も必要だと実感。金曜日は心配なく学校に行き、学童保育でダンスサークルに参加して日常に戻りました。

●「生き延びる」が目標だった

土曜日は母娘で学童保育へ。他の保護者とおやつを決める当番をこなし、日曜日は以前から決まっていた娘のイベントに付き添い。月曜日は祝日だったので娘と出かけ、体力を温存させながら過ごし、記事コピーを持ち歩いて待ち時間に仕事しました。

この間、「生き延びる」を目標にしていました。出席停止の病気だった場合、ワンオペで外出もできなくてどうしよう?自分がうつったら娘の世話や学校・学童保育の支度は…。母娘の健康と生活を維持するのに精一杯で、緊張の毎日でした。

産前産後、夫は海外に単身赴任していました。その間、筆者は胃腸炎になり救急外来で吐きながら3時間、赤ちゃん抱っこで耐えた経験もあります。「赤ちゃんや自分に何かあったら?」という考えが浮かんだらスーッと消すのが習慣になり、今回もそのようにしていました。

●勤め人は有給休暇か病児保育

ワンオペ中、仕事はどうなったかです。1月に「政府が子連れ出勤を後押しする」と報道され、改めて仕事と子育てについて議論になりました。子どもの病気の場合、お勤めだったら有給休暇で看病するか、料金を払って病児保育を利用するかです。恵まれた人は、祖父母や身内に看病を頼めるでしょう。

筆者が会社勤め時代は時間に厳しい職場で、娘の病気のため保育園から何度も呼び出されると不審がられました。頭を下げながら同時に病児保育・クリニックに予約の電話とメールをしまくります。予約できて病児保育室に連れて行くにも、山のような指定の持ち物が必要です。タオル・着替え・お弁当・おやつ・飲み物・ごみ袋などなど、一つひとつ記名させられます。

自宅に来てくれる病児シッターも同様の準備をした上、細かい聞き取りがあって引継ぎに1時間近くかかりました。子どもの看病で寝不足になり、病気がうつって倒れる親も多いです。

●子どもを見ながら仕事できるか

独立した今は都合がつくと思われがちですが、取材を子どもの病気でキャンセルとなると「だから子育て中の人は」って言われるんだろうなと構えます。このワンオペ期間は、以前から決まっていた100ページ以上の大きな締め切りがあり、アポイントは最小限にしていました。実際にワンオペで子どもが病気してしまうと、想像以上に生活がいっぱいいっぱいでした。

同時に「子どもを見ながら仕事できるのか」という問題があります。自分の考えを書くコラムなどは融通がききますが、取材したものを編集・執筆する際は、間違いのないように神経を使います。大量の資料を部屋中にひっくり返しての確認作業もあり、1人で集中しないと難しいですね。ワンオペ期間は、娘が寝た時間に短い記事から取りかかりました。大きな仕事は、娘が学校に行っている間に息つくまもなく没頭して学童保育に復活後、本格的に着手しました。

●子連れ出勤より必要なサポート

夫が出張から帰宅後、会社勤めがあるのであてにできるわけではないものの、「母が動けなくなったら子はどうする?」という差し迫った命の危機は減り、どたばたしながらも100ページ以上の仕事のラストスパートに入りました。

娘が終業式を済ませて冬休みになり、学童保育へ送り出した後に目の色を変えて格闘していると、「お弁当を玄関に忘れた」と連絡がありぶち切れてしまいました。家庭を運営し、細かい仕事にも対応しながら結果としては締め切り日に提出できました。後日に修正できる期間があったので命拾いしたけれど、修正期間がなかったら悔いの残る仕事になったかもしれません。

また子どもが1人だから何とか生き延びられました。きょうだいのいる家庭でワンオペ育児中の病気は、この記事のようなわけにはいきません。次々とうつって、総倒れもあり得ます。20年の会社勤めと自営の両方を経験している筆者も、在宅ワークや子連れ出勤ができたら助かると思います。でも、やはり基本的な育児のサポートや病児保育の仕組みを充実させた上での選択肢でしょう。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

なかのかおりの最近の記事