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妊娠、上司にどう報告する?

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
妊娠をどうやって上司に報告するか悩む人も多い(ペイレスイメージズ/アフロ)

妊娠がわかったら、いつどの上司に報告するか悩む人は少なくない。私は会社に勤めていたころ、妊娠中に職場を異動し、夫は海外に単身赴任するという激動の時を過ごした。周囲にどうやって言うか、つわりはどんな具合だったか、安定期までの体験を紹介する。

妊婦さんへ・つわり編(子育て支援NPOサイトに連載していた「アラフォー初めてママのときどきドキドキジャーナル」より」)

流産の経験から相談ためらう

読んで下さっているかたへ…いま、妊娠中ですか? 

お知り合いに妊婦さんはいますか?

働きながらの妊婦生活は大変ですよね。私は妊娠初期に、いつ上司に伝えるか悩みました。流産の経験があったので早めに言うのも抵抗があり、でも言わないと仕事の内容にかかわります。

しかもつわりがひどい時期に部署を異動したので、気をつかいました。具合が悪いけど休めないし、周囲の人にも言えず…。

出血「仕事休むか自分で決めて」

今回はちょっと気持ち悪い話です。つわりに苦しむ妊婦さんや周囲のかたには、参考になるかもしれないので、具体的に記したいと思います。つわりが全くないという人もいれば、出産まで続くという人も。私はわりと重かったのですが、振り返ってみれば数カ月のことでした。

娘がおなかにいたころの日記を開いてみました。妊娠2カ月ぐらいの7月に「つわり…けっこうきてます」「むかむかと、だるさ、暑さがすごいですー。製造してるよ元気にビシバシ!」とあります。特定のものを食べ続けるタイプではなかったのですが、おなかがすいても気持ち悪いのでちょこちょこと食べていました。

出血したときにクリニックに電話すると、「安静にしたほうがいいけど、仕事を休むかどうかは自分で決めて」と言われ悩みました。まもなくベビーの心拍が確認できて、産科に予約するなど成長しています。

別の部署のママ上司に相談

つわりが落ち着いて安産祈願に行った なかのかおり撮影
つわりが落ち着いて安産祈願に行った なかのかおり撮影

8月に入り、別の部署のベテランママ(管理職)に相談し、どの上司にいつ言うかアドバイスしてもらいました。そして毎日、吐いていました。何が大丈夫かは食べてみないとわからない。ロールパンにチーズをはさんだものは食べられたので、会社に持参したことも。キャンディやカフェオレ、野菜ジュースはNG。

産婦人科でもらった胃薬は、あまりききません。夕方から夜になると特に体調が悪くて、眠い、むかむか、けろけろです。週末ははりきゅう師の女性に自宅に来てもらい、妊婦でも大丈夫なマッサージをお願いしました。

バッハはNG、ハワイアンはOK

暑い夏で、熱中症が怖かったです。スポーツドリンクは味が受け付けませんでした。アイスでカロリーをとっていましたね。気分をまぎらわそうと、音楽を聴いてみました。バッハが好きなのですが、「マタイ受難曲」は妊婦には重すぎました。ハワイアンソングはOKで、CDを繰り返し聴いて横になっていました。

食べることへの渇望がすごくて、だれかに作ってもらったふつうのごはんが食べたかった。実際は作ってくれる人がいないのですが。食べたいものを書き出して、「安定したら遊ぶぞー!」って自分を励ましていました。近所のヘアサロンでは、シャンプーだけなら大丈夫でした。

マンガ「ガラスの仮面」でまぎらわす

せっかくの夏休みも、家で休養です。夫は1週間、フィリピンの英語学校へ。「ガラスの仮面」「プライド」など家にあったマンガや、好きな作家さんの子育て日記を読んでまぎらわせました。難しい本、長い文章は読めません。

近所のママが「買い物ぐらいするからね」と言ってくれましたが、彼女も小さい子を抱えて働いているので頼れませんでした。

つわりがひどい時期は、気分も落ち込むし手助けが必要なのに、言えなくて孤独。ママ友もまだいない。健康に生まれてきてね、と祈るだけでした。

お米はNG、においも敏感に

そんな中、検診に行くと、まめつぶみたいだったベビーがヒトの形に。ドクターも「動いたわよ。全身がびくっと!」と言ってくれました。帰り道にけろけろでしたが、育っていることが支えです。ベビーの製造に、栄養もパワーもすべて使っている…自分は動物だなと思いました。

8月下旬になっても日記は毎日、けろけろの話です。会社で食べたサンドイッチ、ヨーグルトも…。夫がテイクアウトした韓国料理は、とうふ、スープ、おもちだけ食べられました。お米は受け付けず、しばらく食べなかったです。

においにも敏感になり、キッチンに無香料の消臭剤をおいてもNG。マスクをしても、会社前の交通量の多い道路がきつかったです。水道水も気持ち悪くて、浄水ポットを洗面所に置きました。

異動を前にマタニティ服を

9月の異動を前に、初めて百貨店のマタニティコーナーに。割高ですが、どの通販で買っていいかわからなかったので。のびるレギンスや授乳にも使えるキャミソール、ワンピースを買い、店員さんに励まされました。短い外出にも疲れ、家に帰って倒れ込みました。

いっときはピークを越えたかと思いましたが、9月に入ると、部署を異動したのでその緊張から体調が悪くなりました。暑くて眠れない。冷房のにおいや風も気持ち悪く、頭は熱いのに足は寒い。洗濯物はたまるし、食べられるものは少なくて、くつろいだ気分になれない。

「もう12週なのに、いつおさまるの?」と先が見えなくて落ち込みます。寝るときに、アイスパックを頭にあてるのが唯一の楽しみでした。出張マッサージの女性はときどき、おいしいお店のパンを買ってきてくれて助かりました。

外食で夢に見た蒸し春巻き

鏡を見ると、鼻のわきのほうれい線がくっきり。お肌の手入れもさぼっていたし、栄養も足りないんですね。あわてて美容液とクリームを塗ってみました。このころ、母子手帳をもらいに行きました。前回の妊娠のときは、早くもらって流産してしまい、悲しい思いをしたので。

外食は少し、できるようになりました。つわりで寝込んでいるとき夢に見たベトナム料理のお店に行き、蒸し春巻きやフォーが食べられたのです。おそばやさんの冷やしうどんも大丈夫でした。会社帰りに食べた洋食屋さんのコロッケはあとで…でしたが。

夫の海外赴任を告げられた!

もうすぐ安定期だから周りの人にも言える、と思っていたある日。夫から海外赴任が決まったと告げられました。ベビーと行けるような国でなかったので、おなかから出てきちゃうのではと思うぐらい驚きました。だけど生きていくしかありません。

ときどきは家で作った料理も、食べられるようになりました。お米はまだリハビリ中で、おかゆとか一口だけとか。それまでシャワーばかりでしたが、湯船に久しぶりに入りました。

安定期入るも体力戻らず

10月、安定期の16週に入ると吐き気やもやもやがあっても、食べたいものを食べていました。ベビーの名前も考えはじめ、友人と会ったりマタニティヨガに行ったり。栄養と運動の不足でふらふら。体力を戻すのが大変でした。とにかく疲れやすく、スケジュール詰め込みや「次の用事にダッシュ」ができなくなりましたね。

その後、39歳の誕生日はレストランでお祝い。ベビー連れだとディナーはしばらくできなくなるかと思い、少しずついただきました。家でおなべをしたり、夫の渡航準備で買い物に行ったりも。いったん減った体重もプラス2キロに。

10月下旬の戌(いぬ)の日に水天宮で安産を祈ったとき、おなかのベビーがダンシング。いつのまにかつわりは終わっていました。安定期については続編でお伝えします。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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