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繰り返す不安とその先にある凄み。「おもしろ荘」でブレークした「ちゃんぴおんず」が示す“やりきる覚悟”

中西正男芸能記者
「ちゃんぴおんず」の日本一おもしろい大崎さん(左)と大ちゃんさん

昨年元日の日本テレビ「ぐるナイ おもしろ荘」を“ちょんってすなよ”のリズムネタで制したお笑いコンビ「ちゃんぴおんず」。一気に注目度が高まり生活が激変する中、日本一おもしろい大崎さん(34)、大ちゃんさん(33)ともにあらゆる思いと向き合ってきたといいます。定番とマンネリの間で揺れ動く不安もありましたが、そこから見出した覚悟とは。

変わらないことへの不安

大ちゃん:去年の「おもしろ荘」があって、人生が変わりました。関わる人も、周りも、本当に変わりました。

「千鳥」さんに飲みに連れて行ってもらうだけで夢みたいなことですし、飲んでいてふと横を見ると大悟さんだったりすると、改めてまた「これ、現実だよな…」と思う。そういうことが何回もあった一年でした。

大崎:その一方で、とにかくその日の仕事を終えるのに必死というか、何とか毎日を泳ぎ切る。そうしているうちに終わった慌ただしい一年だったとも思います。

「おもしろ荘」まではテレビ出演が年に2~3本だったのが、月十数本になりました。本当にありがたいことなんですけど、そうなると、これまでやったことがないお仕事に日々接することにもなります。

ずっとテレビで見ていた方々とどう絡むのか。どうすれば面白くなるのか。そして、何かの流れで話を振られたとしても、その瞬間はその瞬間にしかなく「次はこうしよう」がなかなかできない世界でもある。どうすれば、その瞬間で良い対応ができるのか。とにかく一日一日、無我夢中でした。

大ちゃん:明日の収録でどんなことをすればいいのか。そんな心配をするのが夢でもあったので、まさに夢みたいな年にさせてもらいました。

あと、お仕事をいただく中で、迷って、迷って、気が付いたのが、自分たちのネタ「ちょんってすなよ」への思いでした。

こっちは毎日それをやっているなので、どうしてもい不安が出てくるんです。

「皆さん、もう飽きてしまったんじゃないか」

「『この人たち、同じことばかりやってるな』と思われないだろうか」

大崎:皆さんがもう飽きているんじゃないかという恐れとの戦い。そして、新たなものも見せていかないと終わってしまうんじゃないだろうかという不安との戦い。それをこれでもかと感じたのも去年でした。

「おもしろ荘」から半年ほど経って、同じことばっかりじゃダメだと思って、基本の流れは通しつつも細部のセリフをちょっとずつ変えたりもしていたんです。

それをロケでもやったりしていたんですけど、そのVTRをスタジオで見ていたお笑いトリオ「ハナコ」の秋山(寛貴)さんから言っていただいた言葉が本当に大きかったなと。

「あそこはもっともっとオリジナルをやったほうがいいと思うよ。まだまだ知らない人もいるから」

そこで一つ目が覚めたというか、これでもかと貫く。貫いて、貫いて、やっと少し知ってもらえる。それが自分たちの感覚と皆さんの感覚の間にあるズレだろうし、もっと、もっと、やらないといけないと心底思ったんです。

大ちゃん:本当に烏滸がましい話ですけど、偉大な先人の思いを少しはのぞけた気もしました。

志村けんさんが「アイーン」をする。「テツandトモ」さんが「なんでだろう」をやる。これをやり続ける意味と凄み。ほんの少しですけど、感じた気がしました。

大事に、本気で、全力で

大崎:「同じことを繰り返す不安」とともにあったのが、リズムネタなので「人間性を見てもらえないのでは」という思いだったんです。

お互いのキャラクターを出した上でのストレートな漫才ならば、そのネタ自体がその人たちの“取扱説明書”というか、説明にもなっている。でも「ちょんってすなよ」はそこの部分がない。

なので、去年は途中から「人を見せる」ということにシフトチェンジしようかとも思ったんですけど、それこそ、先ほどの秋山さんの言葉や周りの先輩からの助言もあり、まずは「ちょんってすなよ」を知ってもらう。

そこを目指すべきだと思いましたし、そうなると、おのずと「あの人たちってどんな人なの?」という流れが出てくるはずだと。そのターンが来たら、周りの方々がこちらの人間性を引き出してくれるだろうと。

人間性は自ら見せるものではなく、にじみ出てくるもの。そんな真理にも気づかされたのが去年でした。

大ちゃん:そんなことを感じて、去年の「М-1グランプリ」の予選でも「ちょんってすなよ」を全面的に出したネタで勝負しました。

大きな場ですし、違うネタをやって「こういうこともできるんだぞ」を見せる場にしたいという思いもあったんですけど、二人で話をして「今はとことんこれを見てもらおう」となったんです。

そうなると、じわじわと「こいつら、根性すわってるな」という空気も出てくる。そうなると、少しずつ、実際に人間性を掘られるようなお仕事も増えてきました。

大崎:もっと自分たちのネタを愛さないといけない。とことん本気で全力でやらないといけない。自分たちが自分たちのネタに飽きない。そこに気づいた一年でもあったなと。

なので、3月3日の単独ライブのタイトルも「ちょん」ですし、中身も「ちょんってすなよ」のオンパレードになるはずです(笑)。

「ちょんってすなよ」を代表作として、それをやり続ける。それで面白くないとなったり、やり続けていても人間性が見えてこなかったりしたら、それはもう自分たちが悪い。力がなかったのか、才能がなかったのか。そういうことだと思っています。

大ちゃん:今年も「ちょんってすなよ」で「М-1」に出て、一番の理想はそのネタで決勝に行けることなんですけどね。多くの人たちに「こいつら、マジだな」と思っていただけるかなと(笑)。

大崎:せっかく見つけたものですからね。僕らが大事にしないで誰が大事にするのかという話だとも思います。

なんとか頑張って80歳くらいまでお仕事ができていたら、僕がちょんとされているのに気づかない(笑)。そんな流れも味はあると思いますし、これからも、大事に、本気で、全力でやっていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■ちゃんぴおんず

1990年3月5日生まれで長崎県出身の日本一おもしろい大崎(本名・大崎義孝)と91年1月11日生まれで鹿児島県出身の大ちゃん(本名・堀之内大輔)がそれぞれ別のコンビを経てコンビ結成。2022年にコンビ名を「ちゃんぴおんず」に定める。ワタナベエンターテインメント所属。23年元日に放送された日本テレビ「ぐるナイ おもしろ荘」で“ちょんってすなよ”のリズムネタを披露し優勝。3月3日には東京・浅草東洋館で単独ライブ「ちょん」を開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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