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青木崇高が見据える今後と役者の意味

中西正男芸能記者
韓国映画にも活動の幅を広げた青木崇高さん

他を凌駕する存在感でオンリーワンの立ち位置を築く俳優・青木崇高さん(43)。韓国映画「犯罪都市 NO WAY OUT」(2月23日公開)にも主要キャストのアウトロー・リキ役で出演しています。これまでも「ちりとてちん」「龍馬伝」などであらゆる作品であらゆる顔を見せてきましたが、今考える俳優の本質、そして見据える未来とは。

覚悟と勇気

 今回、初めて韓国映画に出演することになりました。

 撮影は2022年の夏にあったんですけど、これがね、本当に刺激に満ちた空間だったんです。

 一番驚いたのが、撮影当日、直前で台本やシーンの内容がガラッと変わることです。しかも、それが頻繁にあるんです。

 もちろん、戸惑いもあります。でも、それ以上に監督さんの熱意がヒシヒシと伝わってくるんです。「なんとか、少しでも良いものを作ろう」という。そうなると、戸惑い以上に「よし、やってやるぞ」という思いが強くなる。そんな日々でした。

 もちろん、監督やスタッフさんがそれまでに考えて「これがベストだ」と思うことを台本にされるわけです。でも、実際にやってみたら何か違う。

 でも、ま、これまで準備をしてきたんだから、そのままやってしまおう。それが普通というか、スムーズな対応なのかもしれませんけど、そこで変える覚悟と勇気。それを常に持っているのがすごいなと痛感しました。

 身近なことになりますけど、靴とかでもお店に飾ってあるのを見て「かっこいい!」と思っても、履いたらしっくりこない、足に合わないということもありますよね。履くと風合いが違う。足の形に合っていない。でも、店員さんにいろいろ出してもらったりしたから、このまま買ってしまおうか。そんな思いになるのもすごくよく分かるんですけど、そこで「買うのをやめます」という勇気。いろいろレベルが違う話ではあるんですけど(笑)、それを日々やってらっしゃる姿から学ぶことがたくさんありました。

 全ては良いものを作るため。面白いものを見ていただく方に届けるため。そこの妥協がないところに韓国のエンターテインメントのすごみを見た気もしました。

 …ただ、やる側からすると、やっぱり大変は大変ですけどね(笑)。準備してきたものが全部変わるわけですから。でも、事前に「そういう流れになると思うよ」と聞いてもいたので、大変ながらも「お、これが聞いていたアレか!」と韓国映画の醍醐味を味わっているような気にもなりました(笑)。

 今回の撮影も自分の枠を広げてくれた現場になったんですけど、これまでもありがたいことにいろいろな現場を経験させてもらいました。

役者とは

 大切なことを教えていただいた先輩は数え切れないほどいらっしゃるんですけど、その中からあえてお一人挙げさせてもらうと、香川照之さんから学んだことは大きかったなと。大河ドラマ「龍馬伝」で役者の心意気というか、心の在り方を見せていただきました。

 言葉が刺激的になってしまうかもしれませんけど、とことん役者はマゾというか、そういう心構えでいることが大切なんだなと。

 例えば、すごくパワーを使う、全部を振り絞るようなシーンをやって、力を出し切ったところで「もう一回」と言われることもあるわけです。そこで「あんなこと、もう一回なんて無理」と意気消沈するのか「あれをもう一回させてもらえるんだ!」と笑顔になるか。そこで「これを喜びと思わなくてどうするのか」という考え方を教えてもらったのが香川さんだったんです。

 もちろん、それを思うためにはこちらの心のパワーも要ります。「ウソだろ」ということを楽しむ。それくらいの尋常じゃないパワーがないと、この仕事は務まらない。そして、何かしら規格外のところがある人間がやらないと見てくださる方も面白くない。そういう部分を持っていないと、非日常を提供できない。そんな根っこの部分まで教えていただいたのが香川さんという存在だったと思います。

 何かしらのリミッターを外す。そういう部分は必要な仕事なんだろうなとは思っていたものの、それを実際にやってらっしゃる方を目の当たりにする。この体験はすごく大きなものとなりました。

 願わくば、これからもそういう積み重ねを繰り返して、新たな領域に歩みを進めていければと思っています。ただ、僕の場合はね、すごく飽き性なんです(笑)。「これだ!」と思ったことにはすぐ動くし、実際に世界をバックパッカー的にまわったりもしていたんですけど、何か一つのことをずっと続けるということが得意ではない。

 でも、この飽き性も活用の仕方次第というか、自分の目の前に新鮮な餌をぶら下げて常にアグレッシブに動くように自分をコントロールする。そうすると、コンスタントに新たなものを身につけていけるのかなとも思っています。ま、そんなにうまい具合にいくかどうかは分かりませんけどね(笑)。

 國村隼さん、敬愛してやまない大先輩ですけど、國村さんは今でもどんどん挑戦をされています。日本のみならず海外のあらゆる作品にも出演し、新たな世界を切り開いてらっしゃいます。

 大先輩がやってらっしゃるのに、自分が落ち着いている場合じゃないですからね(笑)。ここでも、実際にやってらっしゃる方を目の当たりにしているわけですから。

 皆さんからこれでもかといただく刺激を糧に、もっと先へ、もっと外へ。なんとか走り続けられればと思っています。

(撮影・中西正男)

■青木崇高(あおき・むねたか)

1980年3月14日生まれ。大阪府出身。専門学校を卒業後、芸能事務所の面接を受け2002年に映画「マッスルヒート」で役者デビュー。06年にNHK「繋がれた明日」で初主演。07年、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」でヒロインの結婚相手となる落語家・徒然亭草々役を演じる。10年には大河ドラマ「龍馬伝」に出演。12年、河内家菊水丸、天童よしみ、三池崇史らとともに、八尾市長から市のPR活動を行う「八尾の魅力大使」に任命された。16年、タレントの優香と結婚。20年に第一子が誕生。韓国映画「犯罪都市 NO WAY OUT」(2月23日公開、マ・ドンソク主演、イ・サンヨン監督)に出演。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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