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結成35年。お笑いコンビ「しましまんず」が今改名した理由と噛みしめる“味”の意味

中西正男芸能記者
先月改名を発表した「しましまんず」のフジイテルオさん(左)とすなやま心すなおさん

1988年結成で、35年の節目を迎えたお笑いコンビ「しましまんず」。先月、藤井輝雄さん(56)が“フジイテルオ”に、池山心さん(56)が“すなやま心すなお”に改名したことを発表しました。ここに来て新たな一歩を踏み出した理由。そして、結成16年以上の賞レース「THE SECOND」に出場して噛みしめたものとは。

“味”と向き合う

すなやま:35年やってきて、このタイミングでの改名ですからね。「何があったんですか」とよく聞かれるんですけど、一つのきっかけになったのは「THE SECOND」でした。

マネージャーから大会があることを聞いて、断る理由がないなと思ったんです。正味の話、出場者の中心は「M-1グランプリ」の出場資格(結成15年以下)を失いたてくらいのコンビで、僕らくらいの年代の人はほとんどいない。

ただ、定期的にソロイベントもやってネタ数も増やしてきたし、普段の舞台とは違う“勝ち負け”のある場に出ることになる。どうなるか分からないけど、何かしら得るものが大きいだろうなと思ってエントリーしました。

フジイ:実際、お客さんは20代が中心で、いつも僕らのライブを見に来てくださるような客層とは全く違ったんですけど、それも刺激になりました。

すなやま:フジイ君が言ったようにお客さんとのギャップも感じましたけど、新しい空間でネタをやることで、僕らのカタチも変わった。そこもすごく感じました。

これまでは劇場出番で漫才をするのが中心だったので、何というか「これをしておけば間違いない」というオーソドックスなネタに固まっていってたんです。遊びの部分を削ぎ落して確実なものだけで作っていくというか。

ただ、今回大会用にネタを作っていった中で、それこそフジイ君のギャグとか、妙な動きを新たに入れることにもなった。これまでの劇場ネタとは違う色のものができました。

そこで再認識したのが、個性というか、“味”が大切だということでした。今、56歳の僕らが映し出されているネタ。フジイ君の生き様が出ているネタ。そういうもののほうが僕らがやっている意味が出るなと。

正直、今になって思うと、これまでのネタは誰かが完コピしようと思えばできるものだったとも思います。どんなお客さんにもウケやすいものということは、僕らである特徴があまりないというか。

でも、今のネタは僕らじゃないとウケない。芸人とは個性ですから。それはよく分かっているつもりでもあったんですけど、改めてそこを噛みしめました。

そんなこともあり、新たな一歩を踏み出す。その思いが改名につながりました。ま、前からそれぞれ本名の字画が良くないということも聞いていたんですけど、だったら変えてみよう。踏ん切りをつけさせてくれたのが「THE SECOND」でした。

台本の奥にあるもの

フジイ:改名を機に、昔から付き合いの深い(後輩コンビ)「メッセンジャー」の二人がラジオでいろいろイジってくれたり、周りの愛を感じるきっかけにもなりましたしね。ありがたいことに。

ただ、改名が決まってから発表までに少し時間があったんです。近々大きな発表をしますよというアナウンスだけして、何かは言わない期間が何日かあったんです。

そんな状況なので、芸人仲間からも「アレ、何のことなんですか」と聞かれるわけです。言ったらアカンもんは言ったらアカンと思って、嫁にも息子にも言わない状況だったので、周りの芸人にも黙っていたんですけど、どこからか、僕が大病を患っているみたいな話も出てきて(笑)。

結果、改名。しかも、僕個人で言うと、カタカナ表記になるというだけだったんで、何とも言えない「え、それだけ?」感が襲いかかってもきましたけど(笑)。

すなやま:フジイ君はまじめですからねぇ(笑)。ただ、やっぱり気持ちも新たにというところはありますし、互いに衣装も変えたりして、50代半ばにしてモデルチェンジをした感覚もあります。

以前、僕らが40歳になるかならないかの頃に、松竹芸能の横山たかし師匠から言っていただいたことがあったんです。

「君ら、今が一番年齢的にしんどい時やと思うわ。ここからもう一つ歳を取ったら、また変わってくるから頑張りや」

今の歳になって、たかし師匠に言っていただいたことの意味が分かってきたというか、やっと“味”というものと向き合う年代になってきたのかなと思っています。

フジイ:漫才ですから、もちろん台本はあるんです。でも、台本の奥というか、根っこの部分に人間性が見える。もっと言うと、生活がにじみ出ている。それが味ということなんやろうなと。

別にカッコいいことじゃなく、僕で言うと「この人、いろいろと大変なんやろうけど、突き抜けてアホなことやってるわ」と思っていただくのが僕の味なのかなと。逆に言うと、もう僕なんかはそれしかないでしょうし、ネタというものと生き様をどう組み合わせるか。ここからはその勝負なんやろうなと思っています。

昔、著名な占い師さんに「君は74歳からブレークする」と言われたことがあったんです。その時は「そこから何年できんねん!時間との勝負やがな」とリアクションをしてたんですけど、今思うと、さもありなんというか、一つの示唆が込められた言葉やったなと感じています。

すなやま:最近、フジイ君は「何もかも忘れる」というのが悩みらしいんですけど、昔のことは覚えてるみたいですね(笑)。ま、何もかも忘れるのも味ですから。そこを漫才で味わってもらえればとは思っているんですけど、漫才とは思えんくらい、正味、ボケが安定しないのはツッコミとしては困る部分もあります(笑)。

フジイ:いやいや、そんな決まり切ったことをしてても面白くないから!漫才とはいえ、どうなるか分からん香りがあったほうが面白いねんて!

ただ、あんまり迷惑ばっかりかけんように僕も気を付けてるから。今朝も、家でプルーン飲んできたし。

すなやま:ま、ほな、大丈夫か…(笑)。

(撮影・中西正男)

■しましまんず

1966年8月27日生まれのすなやま心すなお(本名・池山心)と66年12月30日生まれのフジイテルオ(本名・藤井輝雄)が88年にコンビ結成。すなやまは大阪府出身、フジイは兵庫県出身。今宮こどもえびすマンザイ新人コンクール福笑い大賞受賞。すなやまは阪神タイガースの大ファンで、競馬への造詣も深い。フジイは「トラブル発生!」「ウォー!」などのギャグを持ち、ミニカーの収集家としても知られる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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