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吉本新喜劇新座長・吉田裕が語っていた「これからの新喜劇」

中西正男芸能記者
吉本新喜劇の新座長に就任した吉田裕さん(2021年、著者撮影)

川畑泰史座長が勇退し、新座長に吉田裕さんとアキさんが就任する。

大きな動きが吉本新喜劇にありました。

吉田さん、アキさんともにこれまで拙連載で話を聞いてきましたが、2021年9月のインタビューで吉田さんは座長についての思いを語っていました。

NSCに入った時に目標にしたのが「47都道府県を営業でまわる」ということだったんです。それを2年ほど前に達成したんです。60周年の時に。となると、燃え尽き症候群というほどのものじゃないですけど、じゃ、次の目標は何にしようかと。

例えば、座長ということもあります。これも僕なんかのレベルの者が言うのは申し訳なんですけど、目指すものなのかどうかも分からないというか、周りが選ぶものなんじゃないかなと。次はこの人やろと。その感覚が昔からあって、じゃ、今、リーダーという形をさせていただいていて、次の座長は誰やねんとなった時に「吉田やろ」と人さまに言ってもらえるようなことをずっとしていかないといけないなと。

ただ、座長って偉いわけじゃなくて、そもそも新喜劇は先輩方が作ってくださったものですから。その船がこれからも進んでいくために、誰かが舵を握らないといけない。その役割をたまたまその時代の誰かがやる。それが座長だと思います。

時を経て、まさに、次の座長は「吉田やろ」になりました。

この取材の少し前に第一子が誕生し、父としての思い。そして、新型コロナ禍や「見た目を笑いにしない」など世の中の変化についても思いを吐露していました。

こんなに大変で、こんなにすごいことを妻(新喜劇座員の前田真希)がやってくれたんだということで、より一層、思いが強くなりました。

より一層、頑張らないといけない流れなんですけど、コロナ禍がこれでもかと新喜劇を直撃しています。

すっちーさんとの“乳首ドリル”も今はほぼやってないんです。それでなくても、新喜劇は大人数ですし密になります。その中で“乳首ドリル”も試行錯誤を重ねました。

1.8メートルは離れないといけないので、長い棒を使ってみたこともあったんですけど、すっちーさんも標的が定めにくくて、僕が自分から棒に乳首を合わせにいったりもして(笑)。これは難しいなと。

飛沫を考えてフルフェイスのヘルメットをかぶってドリルをしたりもありました。ただ、これでは「誰がやってるか分からん…」となる。結局、もう今はドリル自体を新喜劇の中ではほぼゼロというか、やらなくなっています。

ただ、これは良い意味でチャンスだとも思ってるんです。こういう機会に「ドリルだけじゃない」というのを見せることに意味があるのかなと。

あと、いわゆる多様性を大切にするという中で、人の容姿をいじらないという意識が急速に高まってきました。

確かに、新喜劇でも“ブサイク”とか“小さい”とかそういうことで笑いを取ってきた部分もあります。だから、今の流れがもっと強くなったら新喜劇は大丈夫なのかと心配してくださる方もいらっしゃいます。

気にかけてくださることは本当にありがたいことなんですけど、新喜劇の根本は芝居です。ギャグやキャラクターもあるけど、あくまでも芝居が軸です。

容姿イジリで笑いを取ってきた部分もありますけど、あくまでもそれは枝葉。なので、もし「ブサイクやなぁ」の笑いがなくなったら、また別の葉っぱが出てくる。その根っこと幹の頑丈さこそが、実は新喜劇の真骨頂だと思っているんです。

先述した座長への思いもそうですし、インタビュー中、枕詞的に何度も繰り返していたのが「僕なんかがおこがましい話ですけど…」という言葉でした。

確かに、当時は人気者とはいえ、一人の座員の立場。そこを踏まえた上での発言だったんでしょうが、この時の原稿はYahoo!トピックスにも掲出され、非常に多くの方に読まれました。

それは言わずもがな吉田さんの言葉の強さあってのことですし、それだけのことが言える吉田さんに大きな可能性を取材者として感じたのも事実でした。

座長就任で、もう「僕なんかが」という言葉は逆に不釣り合いになります。

覚悟を持って自分の色を出す。その結果、新喜劇がどんな進化を遂げるのか。注視していきたいと思います。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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