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「二人とも落ちたからやと思います」。「TKO」が語るコンビの今と、行きついた覚悟

中西正男芸能記者
今の思いを語る「TKO」の木本武宏さん(左)と木下隆行さん

投資トラブルにより昨年から活動を自粛していたお笑いコンビ「TKO」の木本武宏さん(51)。2月5日に大阪・梅田ラテラルで相方・木下隆行さん(51)とトークライブを行い、仕事を再開しました。この2年半で、ともに松竹芸能を退所。大きなうねりの中で得た覚悟。そして、今、噛みしめるコンビの意味とは。

これが木本

木下:去年、木本にトラブルが起こって松竹芸能を退所する連絡をもらいました。聞いた瞬間は目の前が真っ暗になった。それが正直な思いでした。

というのは、僕は先にトラブルを起こして3年ほど前に松竹芸能を退所していました。その僕を松竹芸能に戻すと木本はずっと言ってくれていたんです。

僕は何も言えるような立場ではなかったんですけど、木本がそう言ってくれることは純粋にうれしかった。ありがたい思いに感謝しつつ、自分としても戻ることを前提に人と会ったり、話したりしていたんです。

そんな中での木本からの連絡。松竹芸能という“港”に向かって船を進めていたところ、目的地がいきなりなくなってしまいました。

僕のトラブルから始まり、木本のトラブルでとん挫した。どこまでも僕らの問題ですし、誰かに何かを嘆くようなことでは全くありません。ただ、当事者としたら「これから、どうしたらいいのか」という思いが込み上げてきたのも事実でした。

ただ、これは言い方が難しいところでもありますけど、今回のトラブルを聞いた時も、木本のことを“嫌い”にはならなかったんです。

もちろん、木本がアカンところも多々あります。おせっかいが過ぎたとか、人を巻き込んでしまったとか。これまで僕も何回も注意してきました。

でも、同時に感じたのが、良くも悪くもこれが木本なんですよね。良い家電を見つけたら「このテレビ、エエで!」と薦めてくるし、美味しい店を見つけたら紹介してくる。基本は“良かれと思って”なんです。ただ、それが一番アカン形で今回は出てしまった。

ものすごく悪い形ですけど、これが木本なんです。なので、木本という人間の根本に失望することはなかった。これも相方としての正直な思いです。

木本:僕がトラブルを起こして退所することになった。それを最初に伝えるべきは木下です。もちろん分かってはいるんですけど、電話をしようとして何日もためらいました。

エラそうに「オレが戻すからな」と言っていたのに、できなくなってしまった。なんなら、さらに悪い事態になってしまっている。それをどう伝えるのか。木下はどう受け止めるのか。もしくは、受け止めてくれるのか。それを考えると電話ができなかったんです。

それでも何日後かに意を決して電話をかけました。その時の木下の第一声が「オレに何ができる?」だったんです。

その一言が、何というんですかね、折れかけていた僕の“背骨”みたいな部分をもう一回真っすぐにしてくれました。そこの一言が何かで全てが終わっていたかもしれない中、なんでしょうね…、直感的に「オレには木下がいる」と思えたんです。

コンビを組んで30年以上。良くも悪くもコンビらしい距離感といいますか、木下がいることが当たり前になっていました。しかも幼なじみでもありますし、わざわざ存在を意識しない存在になっていたといいますか。

でもね、今一度考えたんです。地元で一番仲が良かった木下。コンビを組んで一緒にやってきた木下。そして、松竹芸能を出ることになった木下。今回自分にこんなことがあった中、それでも一緒にいるのも木下。こうなると、もう一生横にいる人間が木下なんやろうなと。それならば、一日でも早く自分がしっかりせなアカン。木下の言葉で、そう強く思いました。

木下:僕が思うに、僕自身もそうなんですけど、木本って自分の弱いところを見せるのが本当にイヤな人間なんです。ましてや、相方である僕に見せるなんて耐えられないと思います。

その木本が僕に退所を伝える電話をかけてくる。重みは痛いほど分かるわけです。聞いた瞬間は目の前が真っ暗になりましたけど、伝えている木本はどんな思いなのか。さらに、幼なじみなので互いの親、兄弟の顔、瞬時に浮かぶんです。そうなると、今の思いをぶつけるよりも、ここから進むしかない。そう思ったんです。

でも、進むしかない

木本:木下が何回か「気をつけろよ」と忠告してくれていた時期というのは、もうすでに問題が広がっていた時期でした。本来、細かく説明をすべきなんですけど、解決のために駆けずり回っていた時期で、とにかく頭がいっぱいいっぱいでした。

木下を会社に戻すことを考えていたし、木下に話してもいたし、根回しというほど大層なことはしてないですけど、いろいろな人に話をしていたのも事実です。

それが僕のトラブルで戻すどころではなくなっている。僕がそんな状況では木下を不安にさせてしまう。一日も早く解決をしなければ。でも、事態は好転しない。それでまた頭がいっぱいになる。ひたすら「ヤバいなぁ」。これ一色でした。

一番いっぱいいっぱいになっていたのは騒動が明るみに出る前の昨年5月、6月でした。頭が完全にオーバーヒートというか、家のリビングにいて歯を磨きに行こうと立ち上がるんですけど、洗面所まで行くと「…え、オレ、何しに来たんやったっけ」となってました。それくらい、もう頭がグチャグチャになっていました。

そこからトラブルが表に出て、活動を自粛することになりました。いろいろな方からたくさんありがたい心遣いをいただきました。

本当に、本当に、どれも全てありがたかったんですけど、例えば、的場浩司さんは騒動になってすぐ電話をしてくださいました。そして、一言「元気か?」と尋ねてくださったんです。

当時は会う人、会う人に何があったかを説明していた時期でもあったので、反射的に説明をしかかったんですけど「そんな説明なんていいよ。元気なのか?」と。「なんとかご飯は食べられますし、寝ることもできています」と答えると「元気だったらいいんだよ」と電話を切られるんです。たびたび、そんな電話をくださって「元気か?」だけ聞く。その全てが心に染み入りました。

「よゐこ」の有野さんは僕のファンからのプレゼントを受け取りに行ってくれて、それを僕の家まで持って来てくれました。渡してすぐに帰るのかなと思っていたら、有野さんの車の助手席に乗るように言われたんです。

「最近、甘いもんとか食べてへんやろ?ミスタードーナツも、もう買われへんやろうし」と言われて、そうなると瞬間的にこちらも芸人モードになるというか「ミスタードーナツはなんとか買えるわ!」と返すわけです。そして、実際にミスタードーナツに行って食べきれないくらいのドーナツを買ってくださって、それを持ってドライブして、なんてことない世間話だけして僕の家に送ってくれました。言葉にはされないですけど「あくまでも“日常”やで」という感覚をくださっているというか…。ありがたさで胸がいっぱいになりました。

多くの方からありがたいお気持ちをいただきました。ただ、ありがたければありがたいほど、申し訳なさも込み上げてきました。「こんなにやさしさをくださる方々に気を遣わせるようなことを自分はしてしまったんだ」と。

ただ、そこで心が折れたら、みなさんが何のためにお心をくださったのか分からない。身から出た錆です。でも、それでも進むしかない。そう思っています。

二人とも「落ちた」から

木下:わずか2~3年ほどでこれだけのことがコンビに起こる。あり得ないことです。どちらか片方が不祥事を起こすのも珍しい中、二人とも起こしてしまった。

こんな奴らが愛されるのか。今後、どんな顔をしてやっていけばいいのか。コンビで何かあったら、普通はもう片方が叱ったり、イジったりしてリカバリーしていくんだろうけど、僕らは二人ともしでかしている。

無論、自分らが起こしたことなので、不幸でも何でもない。そこが大前提なんですけど、期せずして二人とも同じ景色を見ることになりました。見なくてもいい景色なんですけど、木本が言うことが僕には分かるし、僕が言うことも木本は分かるようになりました。

木本:…。

木下:結びつきは以前より強くなったとは思いますけど、これはね、いろいろあって絆ができたみたいなきれいな話ではない。僕はそう思っています。

芸人という「答えのない仕事」をやる中で、これまでも方向性をめぐってケンカはしょっちゅうしてきました。ただ、今はケンカをしなくなった。それは二人とも「落ちた」からです。

もう同じ方向を向くしかない。50歳を過ぎてのゼロからスタート。時間がない。重い現実がのしかかってきたからこそ、仲良し云々じゃなく「やるしかない」になっている。これが本当のところだと思います。

木本:2月5日に梅田でトークライブをやり終えた時、明らかに今までとは違う感覚になったんです。自分でもびっくりするくらいに。

これまでもトークライブはしてたんですけど、コンビとはいえ、それぞれがそれぞれの船に乗ってステージに立っている。そんな感覚があったんです。競争とか戦いということではないかもしれないけど、それぞれが面白いと思う話を相手に負けじとやりあう。そんな場だったと思うんです。

ところが、今回は確実に「同じ船に乗っている」感覚があった。だから、どうなるというところまでの答えはまだ出ていませんけど、新たな形になっていることは体感しました。

木下:それぞれ違う船に乗って別の動き方をした方がコンビとして大きくなる。そんな思いをずっと持ってきましたし、それも事実だとは思うんですけど、今の形にも意味がある。これもきれいごとではなく感じています。

この前のライブはとても温かい空気の中でやらせてもらいました。ただ、それは再出発に向けての御祝儀です。出てきた時の長い拍手、すすり泣き、大きな笑い声。久々にやるからこその御祝儀です。もちろん、ありがたいんですけど。

でも、もうそれは終わりました。これからは本当に面白いものを作っていかないといけない。商品としての「TKO」の力が問われますから。

なんとか積み重ねていくしかない。本当にそうするしか道はありませんし、ただただそれを二人でやっていこうと思っています。

(撮影・中西正男)

■TKO

1971年5月6日生まれの木本武宏と72年1月16日生まれの木下隆行が90年にコンビ結成。ともに大阪府出身で中学時代からの友人。デビュー当初から松竹芸能に所属。スタイリッシュなルックスと独自の切り口が光るコントで注目される。「キングオブコント」では決勝に3回進出。20年、後輩芸人へのパワハラ騒動により木下が松竹芸能を退所。22年には投資トラブルで木本も退所した。2月5日に大阪・梅田ラテラルで開催したトークライブで木本が活動を再開。今後もトークライブ、コントでの全国ツアーも予定している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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