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「M-1」敗者復活に挑む「ハイツ友の会」が考える“売れる”のカタチ

中西正男芸能記者
「ハイツ友の会」の清水香奈芽さん(左)と西野さん

ローテンションの世界観の中、毒を感じさせるワードチョイスが光るお笑いコンビ「ハイツ友の会」。「M-1グランプリ2022」では準決勝に進出し、18日の敗者復活戦にも出場します。清水香奈芽さん(25)、西野さん(30)ともに京都府出身で、はんなりとした京ことばがさらに毒を際立たせもしますが、オンリーワンのスタイルを支える先輩の背中。そして、二人が思う“売れる”のカタチとは。

“自分”よりも“ネタ”

西野:中学1年の時にお笑いにハマりまして、こんなに面白いことができる芸人さんってすごいなと思ったのがこの仕事に目が向いたきっかけだったんです。

自分もネタを書いて、それが面白いと思われたい。自分の作品としてのネタを評価されたい。自分がワーキャー言われるということではなく、作ったもので喜んでもらいたい。

それが根本にあることなので、感覚的なことになりますけど、自分に注目が集まるというよりも、ネタを面白いと思ってもらいたい。それが根本にある気持ちなんです。

なので、分かってもらいにくいかもしれませんけど、自分が注目されるというか、そこに目を向けられるということはあまり求めていないというか。

変に聞こえるかもしれませんけど、私は自分が芸人をやっている、吉本興業に所属しているということも、あまり知られたくないんですよ。

例えば、周りの芸人さんとご飯に行ったりしても、会話の中で「今回の『M-1』でな…」みたいな話が出たら、周りのお客さんが「…え?この人ら、芸人なん?」みたいになるのが好ましくないというか。

ネタは見てもらいたいし、面白いと思ってもらいたいんですけど、自分がその結果注目されたいという感覚はまた違うんですよね。

もちろん、今、こういう取材なんかの場では芸人だとバレてもイヤじゃないんですけど(笑)、普段の生活でそういう部分を必要以上に出したくはないというか。

それと今回も「M-1グランプリ」で敗者復活戦に出場させてもらいますけど、賞レースはNSCに入る前からすごく好きで、録画して何回も見るくらいだったんです。自分が見ていた「M-1」に自分がエントリーして準決勝まで行くことができた。そして、敗者復活にも出る。これは純粋にうれしいことではあるんですけど、やっぱり一番にあるのはネタが面白いと思ってもらいたいという部分なんです。

なので、せっかくたくさんの方に見ていただける場でネタをさせてもらえるので「なんで、この人ら、ここまで残ったんやろ」と思われたら逆になってしまう。きちんとネタが面白いと思ってもらえるよう、やりたいなとは思っています。

清水:私も賞レースで結果を出すことは大事なことだとは思ってるんですけど、私自身がそれによってどうこうというよりも、そのことによって「この人らはネタが面白い人だ」という認知度がアップする。そこを一番求めているんだと思います。

それがあると、まず劇場に出た時の反応が変わるし、知ってもらっていることによってお客さんもスッとネタに入れるし、よりウケやすくなる。それがあることによって、やりやすくもなるし、楽しんでもらいやすくもなる。それを得る場が賞レースでもあるので、だからこそ、そこでは結果を残そうと思っているんです。

ネタはどちらかではなく二人で作っています。いろいろなパターンを試して、声のトーンとか色合い的にも今とは違うネタも試したんですけど、こちらの気持ちやお客さんの反応、そういった部分が一番乖離せずにしっくりくるのが今のネタの感じだったんです。

私、歌が苦手でネタの中でも歌うようなボケとかは極力避けてますし、イベントとかでも歌うことが求められるようなシチュエーションは何とかして回避したり、うまいことやりすごしたりしてるんです。

というのは、自分が歌が得意ではないのもありますけど、自分が歌って、それを聞いているお客さんの空気が乖離しているというか、歌という自分が苦手なものを出してそれがまたお客さんとマッチもしていないという空気が本当にイヤなので、歌は極力避けてきているんです。

ネタ選びもここと似ているところがあって、まず自分たちが自分たちに合うものをやる。そして、それがお客さんに合致するように考える。それを考えた結果、一つの答えとして出てきたのが今の形だったんです。

西野:自分たちの中にあるものを大切にする。そういう部分を姿として見せてくださっているのが「ビスケットブラザーズ」の原田さんだなと。

私ら二人ともかわいがってもらっていて、食事に連れて行ってもらったりもしているんですけど、これは言っていいかどうか分からないですけど、原田さんは自分の中で大事なことをしっかりと定めてらっしゃるんです。

情に厚い方なので、後輩のライブを大事にしてはったり、恩のある方の仕事を大事にしてはったり。周りから言われるからやるというのではなく、自分の中の優先順位で大事にするものを決める。それを貫いてらっしゃると思いますし、その結果「キングオブコント」優勝という形も残されました。

清水:この仕事を始めた頃は、仕事なんだから、お声がけいただいたものは何でも引き受けないといけない。そんな思いもあって、それでしんどくなったこともあったんですけど、原田さんがしっかり“自分”を判断基準にやってらっしゃるのを見て「この形もあるんだ」と思えたことで楽になったところはすごくありました。

西野:ありがたいことに、去年に比べて今年は仕事量が3~5倍くらいにはなっていると思います。それは純粋にうれしいことなんですけど、“売れる”ということにもいろいろな形があるんだろうなと思っていて。

テレビにたくさん出て、ネタ番組以外のバラエティーでも引っ張りだこになる。それが一番イメージしやすい“売れる”なのかもしれませんけど、私たちの思う形はまた違っていて。

軸になるのはライブで、そこでネタをお見せする。それでお客さんに面白いと思ってもらう。その数が増えていく。それが求める“売れる”だと考えていて、そこに近づけていけたらいいなと思っているんです。

また他の芸人さんたちが考えてはることとは違うのかもしれませんけど、それができたら一番だなと今は考えています。

他の人たちと違うのかなということで言うと、私、好きな食べ物がジャガイモなんですけど、それを周りの芸人さんに話すと「それは食べ物ではなく、素材や」と言われるんです。

確かに、餃子みたいに料理というか、完成した食べ物ではないかもしれませんけど、それでもジャガイモが好きやし、素材かもしれんけど、その感覚には違和感を覚えもするんです。

清水:ま、でも、それは純粋に素材やからやと思うけどなぁ。

西野:確かに、その通りかもしれませんけど、私からしたら「ホンマのことを言っただけなのに…」という思いもあり。なんなんでしょうね、このジャガイモがスッと受け入れられない感じ。それが今の私の悩みでもあります(笑)。

(撮影・中西正男)

■ハイツ友の会(はいつとものかい)

1997年8月2日生まれの清水香奈芽と92年8月1日生まれの西野が2019年に結成。ともに京都府出身でNSC大阪校41期。NHK新人お笑い大賞、NHK上方漫才コンテストともに決勝進出。「M-1グランプリ2022」では準決勝で敗退し、18日の敗者復活戦に出場する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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