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モノマネ道を駆け抜けて35年。「ショウショウ」が感じる今の“息苦しさ”

中西正男芸能記者
結成から35年が過ぎた「ショウショウ」の羽田昇平さん(左)と羽田昇司さん

結成35年を迎えたお笑いコンビ「ショウショウ」。羽田昇平さん(55)、羽田昇司さん(51)ともにモノマネの腕を磨き、モノマネを軸にした漫才を確立しました。今ではポピュラーな柳葉敏郎さんや小泉純一郎さん、オール巨人さんのモノマネを生み出したパイオニアでもありますが、モノマネを通じて感じた世の中の変化、そして“息苦しさ”とは。

「そこにいくか?」

昇司:今年でデビューから35年が経って、もう36年目に入ります。大阪から東京に出てきたのが2005年。考えたら、大阪と東京の時間がもう半々くらいになるんですね。

もともと大阪にいた時に「どうやったら劇場でトリがとれるんだろう」と考えたんです。その時になんばグランド花月でトリをとってらっしゃった方々はほぼみんな漫才ブームの時に全国区で売れた人ばかり。

となると、僕らも全国で名前を知ってもらわないといけない。そう思って、東京に出てきたんです。

昇平:その中でいろいろなお仕事もさせてもらい、モノマネもたくさんやってきたんですけど、僕は王道を避けるというか、みんながやっているモノマネではなく「そこにいくか?」ということをやるのがうれしいといいますか。そんなクセがありまして。それが良いのか、悪いのか、分かりませんけど(笑)。

昇司:小泉純一郎さんも、相方は総理になる前からやってましたしね。オール巨人師匠のモノマネも、僕らがデビューした当時の1987年頃からやってました。当時、芸人仲間が集まってみんなで飲む「花月会」という忘年会みたいな会合がありまして、そこでやったのが初めてだったと思います。

ただ、目をつけるのは早いんですけど、そこからもっと大きな“同業他社”といいますか売れっ子さんもその人に着目して、いつの間にかそちらが本流になっている(笑)。“大手”がやり出したら、もうこっちがやったらパクリに思われるというか。

昇平:発見したポイントに最初に旗を立てたのはウチらかもしれませんけど、そこの開発が凄まじすぎて、いつの間にか旗が抜けてる(笑)。そんな感じですわね。

受け手の変化

昇司:あと、いろいろモノマネを考えてきた中で、時代の変化も感じますね。

それこそ、今から20年近く前、小泉さんのモノマネをしていた頃は、政治家のモノマネに対する風当たりもまだ大らかだったというか、いろいろと“遊びシロ”みたいなものもありました。

ただ、最近はなかなか難しい。メディアではやりづらいし、営業先なんかでもやりづらい。だからね、この前も相方に怒ったんですよ(笑)。相方が嬉しそうに言ってくるから何かと思ったら「岸田総理の声ができるようになった!」と。いやいや、なかなかそれをやるところがないんやと。

昇平:確かに、こちらは常に自分が面白いと思うものにチャレンジしているつもりなんですけど、受け手の皆さんの反応が変わってきたかもしれませんね。

昇司:これはね、何がどうとは言い切れない部分だと思いますけど、なんでしょうね、デリケートな部分が増えたんですかね。世の中の目が厳しくなったというか。

あと、やっぱりSNSですかね。何かあったら問題になる。炎上する。そういうものがあると、どうしてもみんなが安全な方にいくというか。

以前は「テレビでもないし、営業先ならいいだろう」と思って振り切ったネタをやっていたところもありますけど、今はSNSにアップされたら、そこから何か迷惑をかけてしまうかもしれない。そうなると、チョイスも変わってきますしね。

息苦しいというか、本当に難しい世の中になったなとは感じます。

昇平:それでなくても、今はどんどん細かい領域まで皆さんがモノマネをされるようになっているので、いろいろ難しいんですけどね。僕としては「そこは置いておいてよ…」という部分までどんどん掘り返されていくというか(笑)。

だからね、今やっているのは“大相撲の常連客”とか、かなり深いところまで掘りにいってるんですけど、そんなところももう開発の波が来てますからね。

そこまで皆さんが来られたら、もうあとはなんでしょうね…。自分の身内くらいしかなくなるのかもしれませんね。

さすがにそこは他のタレントさんはすることがないし(笑)、イジっても何か言われることはないかなとも思いますし。

本当に難しい部分も多くなりました。だけど、その中でも喜んでもらう。そのために何とか頑張っていきたいと思います。

(撮影・中西正男)

■ショウショウ

1967年7月23日生まれで山口県出身の羽田昇平(はねだしょうへい、本名・粟山健二)と71年9月10日生まれで兵庫県出身の羽田昇司(はねだしょうじ、本名・一色孝紀)が87年に「羽田昇司・昇平」を結成。昇平は「二葉由紀子・羽田たか志」の弟子。昇司は「由紀子・たか志」の実子。95年に「ショウショウ」に改名する。互いにモノマネを得意にし、モノマネを軸にした漫才を確立。オール巨人、柳葉敏郎、小泉純一郎らその後あらゆるモノマネタレントがレパートリーにしているネタに早くから着目し、芸人仲間からも一目置かれている。2005年に拠点を大阪から東京に移す。フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」内のコーナー「博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~」などに出演。11月11日に東京・新宿末廣亭で「末廣亭深夜寄席 吉本興業特別興行 ショウショウ寄席」を開催する。出演は「博多華丸・大吉」、くまだまさし、「オズワルド」ら。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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