CBCテレビ「ゴゴスマ」などで独自の世界観を見せるドラァグクイーンのナジャ・グランディーバさん(47)。初の著書「毎日ザレゴト 人と比べて生きるには人生短すぎるのよ」が3月24日に発売されるなど、さらに活動の幅を広げています。「常に60%」という人生哲学。そして、激しく変容する世の中で自らに求められるもの。今の思いを吐露しました。

近づきすぎない

 去年、出版社の人から「本を出しませんか」というお話をいただいたんです。でも、そんなん売れへんやろし、なんか本って面倒やな…とも思ったんですけど(笑)、せっかく言っていただいたお話なのでやらせていただきました。

 初めての本だったんですけど、改めてこれまでの自分を振り返るきっかけにもなりました。その結果、痛感しました。「ホンマに、全力で生きてないな」ということを(笑)。ずっと60%くらいでダラダラ生きてきたなと。

 今、テレビにも出してもらっていますけど、私、自分から「テレビに出たいです!」とか「この仕事をやりたいです!」と手を挙げたことがないんです。全て出会いや流れに身を任せてきた結果ここにいる。それが正直なところなんです。

 大学時代にゲイバーで働きだしたのも、初めて行ったお店でママにスカウトされたのがきっかけでした。そこから女装にハマッてクラブイベントに行ったら、そこでお声がけいただいて定期的にイベントに呼んでいただくようになりました。

 さらに、当時マツコ・デラックスとかミッツ・マングローブとかがテレビに出て人気者になり始めた頃で、関西テレビのプロデューサーさんが関西版のああいう人を探してらっしゃって。たまたま人づてに私のことを知って、2011年から始まった「ハピくるっ!」という番組に呼んでくださったんです。その番組がレギュラーとして番組に出してもらう最初の番組になりました。

 また、それをたまたま関西テレビに出入りしていた太田プロのマネージャーが見ていて太田プロに所属することになり、東京でのお仕事にも呼んでもらうようになった。そんなこんなで今に至るという流れなんです。

 その都度、好きなことを見つけて、好きなことはやり続けてきましたけど、別にそれを使って世に出ようとは一切思っていない。もしかしたら、そのガツガツしていない感じがご縁を呼んでくれたのかもしれませんね。だったら、ありがたいことですけど、こればっかりはなかなか分からない領域ですけどね。

 ただ、一つ言えるのは“近づきすぎない”。これは心がけてますね。人間関係の距離が近くなると、見んでもエエところまで見てしまう。そして、その結果、結局多くの人がもめてるんですよ。

 例えば、オネエの人ってすごく悩み相談をされるんですよ。ただ、私は友達から相談されたとしても、答えに距離を置くんです。

 彼氏とケンカして連絡が来ないという相談があったとして、聞くのはしっかりと聞くんですよ。ただ、明確な答えは出さず「困ったもんやなぁ。でも、そのうち来るんじゃないの」くらいしか答えない。ここは考えて、あえてそうしています。

 相談、特に恋愛相談なんかは話をした時点でほぼスッとしてるんですよ。だから、しっかりと話を聞いた時点で98%終わってる。そこから踏み込んだ答えを言ったところで、むしろ「あんたの言った通りにしたのに、ダメだったじゃない!」と火種が生まれる可能性の方が高い。全てにおいて60%。それは自分の中にあるものだと思います。

“オネエ”の今とこれから

 低空飛行で、無理せず、そのまんま。そんなイメージでやってきたんですけど、ここ最近、数年くらいかな、いろいろと世の中の状況も変わってきました。

 10年ほど前はバラエティー番組で罰ゲームとして「オネエとキスをする」みたいな流れがよくありました。でも、今ではすっかりなくなりました。オネエを罰ゲームの対象にするということへの違和感が世の中に広がっていったからです。

 世の中としてはその方がフラットやし、優しい世の中に近づいているんやと思います。これは間違いない。だけど、当事者というか、私としたら、これはこれで、いろいろ思うところもあるんです。そういう世の中の方が良い。それは分かっているんですけど、もう一方のことも考えるというかね。

 罰ゲームで呼ばれたオネエの人は主旨に納得して仕事として行っているわけで、そこだけを見たら、あるのは“感謝”のはずなんです。

 これは他の分野でも言えることだと私は思っていて、ブサイクと言われていた女性芸人さんも、それで笑いが起こることによって仕事が来る。そして、自己実現というか、自分がやりたかったことに近づいていくことにもなる。本人はイヤではないはずなんですよ。

 声を上げているのは実は当事者ではなく周りの人。もちろん、世の中をより良くするために、そういうもの全般をなくしていくことが必要なのかもしれません。

 でも、ただただ「これはダメ」「これが正しい」ではなく、こっちから見たり、あっちから見たりすることが必要なんじゃないか。それも私の立場としては、リアルに感じることでもあるんですよね。

 それと同時に、テレビでのしゃべり方なんかでも10年前とは意図的に変えていっているところもあります。

 この前も北京オリンピックがありましたけど、フィギュアスケートの宇野昌磨君なんかを見ていると、やっぱりアスリートやからお尻の筋肉とかもすごいんですよ。盛り上がってて、プリっとしてて。

 今までやったらそこもストレートに「すごいお尻!」とか「触ってみたい!」と言ってたと思うんですけど、今は基本的には言わないようにしています。

 男性タレントが女性のフィギュアの選手に「お尻、引き締まってますねぇ!」と言って触ったら大問題になります。でも、私たちがラグビー選手のお尻を触っても、みんな笑ってる。実は、そこは全くフラットじゃない。「全てを同じ扱いにしないといけない」と言うならば、実は辻褄が合っていないんです。

 ここも今は段々変わってきましたけど、これまでは根本に「オネエは何を言ってもいい」ということが長くありました。

 それをもう一つ掘り返すと、最初からオネエを別物扱いというか、もっと言うと化け物扱いしているわけです。

 「自分らよりステージが低い人間がアレコレ言ってるだけやから、いちいち目くじら立てるものじゃないし、ま、エエやんか」。そんな考えが根底にあって、実は成り立つ構図でもあるんです。

 少し前まではそれを求められてやっていた部分もありましたけど、今は時代に合わせて自分なりにアップデートしています。でも、できてないところもあるし、自分の中でギクシャクしてるところもある。それがね、リアルな現状です。

 そこが問題視されてるということは、なんというのかな、フツーの人と同じステージに近づいていることやし、良いことなんやと思います。

 でも、ここもすごくリアルなことを言うと、逆に、私らもそこである意味“楽”ができてたわけですよ。オネエという“高下駄”を履くというか。

 その下駄が低くなり、これがもっと進んでいくと最後はみんなフラットになる。そして、いつかはオネエという言葉がなくなっていくんでしょうね。今でも、オネエという下駄は間違いなく低くなってますから。

 仮に私からオネエという要素を全て取っ払った時に、私が今と同じように仕事ができているか。これはね、多分全然できてないと思うんですよ。

 全て同じステージで勝負となったら、もっと能力が必要でしょうしね。私は今たまたまテレビに出てるけど、今後出てくる子は下駄がだいぶ低いわけやから、本当に実力があったり、アタマが良かったりという子しか生き残れない。

 だからね、結果、私はホンマに幾重にも恵まれているというかラッキーやと思っています。世の中の流れもあって、ここにいさせてもらっています。

 ただ、もともと私は手も挙げてはいないし、この世界にしがみつく気はないので、また今のお仕事がなくなったら小さなお店をやって暮らそうと思っています。

 よく考えたら、小学校の頃から通信簿に「欲がない」と書かれてたんですけど、案外当たってるもんですね(笑)。

 60%で生きて人間関係も入り込まない。それを「寂しい人生」と表現する人もいるかもしれませんけど、私はそれでいいと思っているんです。

 少しは友達もいるし、あと、時々美味しいものを食べさせてくれるお金持ちの知り合いもいるし(笑)。もうそれでね、私にとっては十分すぎると思っています。

(撮影・中西正男)

■ナジャ・グランディーバ

1974年4月10日生まれ。兵庫県出身。大学在学中に訪れたゲイバーでスカウトされ働き始め、女装に傾倒していく。2002年以降、浜崎あゆみや「DREAMS COME TRUE」のミュージック・ビデオに出演。2011年から関西テレビ「ハピくるっ!」にレギュラー出演するようになってメディア露出が増え、14年に太田プロダクションに所属したことを機に東京の番組への出演も増える。CBCテレビ「ゴゴスマ」、MBSテレビ「よんチャンTV」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。3月24日に初の著書「毎日ザレゴト 人と比べて生きるには人生短すぎるのよ」が発売される。