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新型コロナ禍が直撃した「R-1」ファイナリスト・守谷日和が語る「力いっぱい」の極意

中西正男芸能記者
新型コロナ禍が直撃する中、感じた思いを語る守谷日和さん

 「R-1ぐらんぷり2020」でファイナリストになるなど卓越した演技力に裏打ちされた一人コントを見せる守谷日和さん(40)。ピン芸人のみならず、役者として舞台に立つ機会も増えていますが、初の朗読劇「ドウキの…」(9月20日、21日、東京・よしもと有楽町シアター)にも挑みます。次々と新たな一歩を踏み出してもいますが、新型コロナ禍が直撃する中でたどり着いた覚悟とは。

決勝進出から一転

 昨年3月8日に「R-1ぐらんぷり2020」で決勝に行くことができました。やっと決勝までたどり着いたんですけど、その直後から劇場も無観客になったり、ストップしたり、緊急事態宣言も出されて、世の中が一気に変わってしまいました。

 なので、本来なら「R-1」関連でいただけていたであろうお仕事がほぼ全てキャンセルになりました。

 芸人人生の中で一番「さぁ、ここからだ!」というところで、一番強いストップがかかる。もちろん、コロナ禍は致し方ないことなんですけど、よりによって、このタイミングで直撃するのかという思いはありました。

 そんな中だったんですけど、今年の春、拠点を大阪から東京に移しました。今年から「R-1」の出場資格が10年以下に変更されて、僕は出られなくなった。それは大きかったですね。

 大阪でピン芸人を続けていくにしても「R-1」で決勝までは行ったので、次は優勝をする。それが目指すべきものだし、それを達成すれば、広く知ってもらえる“チケット”を得られることにもなると思うんですけど、もうそこにエントリーもできない。

 となると、ピン芸人として大阪で活動する中で少しずつステージを上げていくということになるんだと思うんですけど、大阪の状況を考えた時に、いろいろな情報番組でロケに出ているような芸人はほとんどが漫才師。ピン芸人が出ることが極めて難しい状況がある。そうなった時に、もうこれは東京に出て勝負をかけるしかないと思ったんです。

準備できない準備

 当然、簡単な勝負であるはずはないですし、大阪であった劇場出番やメディア関連のお仕事もなくなるし、東京でゼロからのスタートになると覚悟していました。

 ただ、たまたま以前担当してくださっていたマネージャーさんが東京に異動になっていて動いてくださったり、以前「オールザッツ漫才」(MBSテレビ)に僕が出た時のネタを見てくださっていたスタッフさんがいたり、思いもよらぬ形で縁がつながったんですよね。その流れで、劇場やその他のお仕事も思っていた以上にいただけて心底ありがたい流れになっています。

 こんなことって準備のしようがないというか、毎日、力いっぱいやっていることがいつの日か何かにつながる。そんなことを今回の上京で思い知りました。

力いっぱいやる

 そうやって全力でやり続ける。そんなきっかけをくださったのが「笑い飯」の哲夫さんでした。

 先輩の前でネタをするという機会ってメチャクチャ緊張するんですよ。口にはしなくても全然やったなと思われたらいややなと思う。その時に、自分には自信がなかったりするんですけど、面白いと言ってもらえることで芸人を続けられてきた。

 今から9年ほど前に「笑い飯」さんのMBSラジオの番組でネタをさせてもらう機会があったんです。本当に面白い先輩の前でネタをする。ありがたいことなんですけど、ものすごく緊張する場面でもあるんです。

 面白いと思ってもらえたら、それこそ得るものが大きいんですけど、もしダメだったら「こいつはダメ」という烙印を押されるんじゃないか。他のところでも「あいつは面白くなかった」と言われるんじゃないか。そんな不安でいっぱいだったんです。

 今から思うと「笑い飯」のお二人が「…あいつな、おもんないで」なんて誰かの値打ちを落とすようなことをおっしゃるわけがないんですけど(笑)、その時はほぼファーストコンタクトの場だったので、異様にプレッシャーを感じまして。毎日放送に夜9時入りだったんですけど、夕方5時には着いてました(笑)。

 そして、迎えた本番。幸い、しっかりと面白いというお声をいただいて帰宅したんです。じゃ、Twitterのダイレクトメッセージで哲夫さんから連絡あったんです。

 「今日はお疲れさん!何してるの?良かったら、飲みに行こうか?」とお誘いをいただきまして。お酒をいただきながら「面白かったわ!」とメチャクチャ誉めてくださるんです。「今日、ホンマに面白かったから、一緒に飲みに行きたくて急に誘ってん」とどこまでもうれしい言葉を言ってくださいまして。

 なかなか結果が出ない時期で、慢性的に「自分のやってることって、ずっとミスってるんじゃないか」という思いがありました。その中での哲夫さんの言葉だったので、ものすごく沁みましたし、ただただ救われました。

 その中、さらに言ってくださったのが「ネタの中の表情がまたエエねん」ということでした。自分としては、特に表情を強く意識していたわけではないんですけど、その役に、その状況に力いっぱいなり切る。

 そう考えてやっていたことが、その表情に結びついたのかなとも思いますし、そうなると、その都度力いっぱいやってきたことは無駄ではなかったんだろうなと、幾重にもうれしくなったんです。

 今でももちろん力いっぱいやっていますし、それが何につながるかは分かりませんが、ただただそういう時間を積み重ねていこうと思っています。

 …ちょっと、真面目にしゃべりすぎてますかね(笑)?うまいこと、ポップにしといてもらえたら幸いです。

(撮影・中西正男)

■守谷日和(もりやびより)

1980年10月26日生まれ。大阪府出身。NSC大阪校26期生。吉本興業所属。本名・守谷崇宏。コンビ解散を経てピン芸人に。卓越した演技力に裏打ちされた一人コントで「R-1ぐらんぷり2020」で決勝進出。役者としても多くの作品に出演している。今春、活動の拠点を大阪から東京に移した。初の朗読劇「ドウキの…」(9月20日、21日、東京・よしもと有楽町シアター)に出演する。共演は小川菜摘、YOU、藤井隆、フクシノブキ。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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