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今、石塚英彦がYouTubeを始めた理由

中西正男芸能記者
YouTubeチャンネル「石ちゃんねる」を立ち上げた石塚英彦さん

 “まいうー”でお馴染みのお笑いコンビ「ホンジャマカ」の石塚英彦さん(59)。大きな体を活用したグルメリポートで独自の世界を築き、今月8日にはYouTubeチャンネル「石ちゃんねる」を開設しました。新型コロナ禍で飲食店が大ダメージを受ける中、石塚さんを衝き動かした思いとは。

自分にできること

 そうですねぇ、ここ数カ月くらいですかね。ものすごく遅ればせながら、YouTubeを見始めたんです(笑)。

 これまでも、YouTubeの存在は知っていたし、何かの折に少し見たりすることもあるにはあったんですけど、なかなかご縁がなくて。ただ、コロナ禍で家にいて家族が見ているのを横目で見ているうちに「これは面白い!」となったんです。

 最初、興味を持ったのは心霊、オカルトのジャンルだったんですけど、いろいろ見ていくと食に関するチャンネルもたくさんあって、それも楽しいものだなと感じました。

 そして、もし自分がYouTubeチャンネルをやるんだったらどういうことをやりたいかを徐々に考えるようになっていったんです。

 コロナ禍でもグルメロケに行かせてもらう機会はあるんですけど、お店の方と話しても、やっぱりダメージが凄まじいというお話をうかがうことが多かったです。

 そういうお話を聞いていると、本当にもどかしくて…。今までそういう皆さんの協力があって仕事をさせてもらってきたので、僕にできることはやりたいという思いが純粋に強くなって、YouTubeチャンネルを立ち上げることになりました。

 …と偉そうに言っても、僕はYouTubeの撮影方法をよく知らないので、そこはプロに入ってもらってます(笑)。僕自身にできることは食レポくらいなので、お店のお料理を食べて、それをYouTubeで伝える。そんな内容になっています。

 その結果、少しでも紹介したお店に行って食べてみたい、テイクアウトしてみようかなと思ってくださる人が増えればうれしいですし、「助ける」とかそんな大げさなことではなく、何かのきっかけにでもなればなと思っています。

 コロナ禍ということもあり、今はテイクアウトの料理をスタジオに持って来て、お店の方とはリモートで話をさせてもらうという形から始めているんですが、後々は直接お店に行ってお話をうかがう形にしたいと思っています。

 お店に行った方が雰囲気も伝わりますし、お店の人の表情も直接見えますしね。食べるということは味そのものの評価もあると思うんですけど、お店の雰囲気や働く方々の人柄という部分がとても大きいと思うんですよね。

 厨房での無駄のない動きだとか、鍋の裏の使いこみ具合だったり、換気扇がピカピカに磨かれていたり。その光景からも味が伝わってくるんですよね。

 コロナ禍でロケに行った際に衝撃を受けた出来事があって、常連さんが一言もしゃべらずに黙々と食べていたんです。自分の大好きな味を守りたい。そのためにお店には行く。ただ、決してしゃべらない。その様子がいかにお店を愛しているか、雄弁に物語っているなと感動しました。

 今は当然ですけど、テレビも皆さんもウイルスというものをすごく警戒している。それはもちろん大切なことなんですけど、一歩間違うと「そこはやってもいいんだよ」というところまでやらなくなったりする気がするんですよね。

 お店に行くこと自体は悪いことじゃない。僕はお店に行ってほしいんです。お客さんに来てもらうためにお店の皆さんも頑張って感染対策をしているわけだし、東京都とかのステッカーも貼ってるのにいつの間にか行くこと自体がダメみたいな空気にもなっている。

 もし、お店で食べるのに抵抗があったら、テイクアウトという形でお店を応援する。お店側も、料理一筋でやってこられたこだわりの強い方ほど「アツアツを食べてもらいたい」という思いからテイクアウトをしないお店もあるんですけど、あくまで僕個人の思いですが、その気持ちも分かるけど、それよりもお店が潰れちゃうことの方が悲しい。

 だから、おうちで温め直して食べれば近い味になるようなものにするとか、とにかく、世の中の形が今とは変わってくるまで、なんとか持ちこたえられないかなと。そこを少しでもサポートできないかと、そんな思いでYouTubeを始めました。

お店の人に笑ってほしい

 以前ロケでお邪魔したお店にコロナ禍になってからうかがうこともあるんですけど、なんかやっぱりさびしいんですよね。これは僕の思い込みかもしれませんけど、やっぱりこう、忙しくしているお店の人ってイキイキして見えますよね。

 ウイルスに対抗する手段として、きちんと気をつけた上で一人でも多くお店に行ってもらう。テイクアウトしてもらう。そして完全にOKとなったら、これまで通り、もしくはこれまで以上にみんながお店に行く。それを願うばかりです。本当に。

 あと、単純にお店の人に笑ってほしいです。そして、いつか「あの時は大変だったね」と思える日が早く来てほしい。簡単なことじゃないけど、そうやって言える日が来ることを願うばかりです。

 東京・蒲田に「ぐりるスズコウ」というお店があるんです。そこは大将が元力士で、とにかくデカいんですよ。取材でもプライベートでも行かせてもらってるんですけど、ものすごくデブの気持ちを分かってくれているんです(笑)。クーラーから冷凍庫並みに白い煙が出てるようなお店なんですけど、その時点ですごく気持ちが通じちゃいました。

 もともと、すごくにぎわっているお店だったんですけど、今はコロナ前の3割くらいのお客さんらしいんです。この前も番組でお邪魔したんですけど、後日大将の妹さんから「おかげさまで、放送日は久々にお店が盛り上がりました」とメールをいただきました。

 それは本当にうれしいことなんですけど、逆にいうと、それ以外の日はそうじゃなかったということでもあるんですよね。僕は経営者でも何でもないですけど、これまで通り、毎日盛り上がってくれたらなと。これまで以上となると、大将も疲れちゃうかもしれないから、元通りでいいのかもしれませんけど、とにかく早くそうなってほしいです。

味30、人70

 そもそも、僕がグルメリポートのお仕事をさせてもらうきっかけをいただいたのが25年ほど前、34歳の時でした。

 そこでやらせてもらったのが、フジテレビ「おはよう!ナイスデイ」の豪邸訪問コーナーだったんです。会社の社長さんとかの豪邸にうかがって、家の様子をリポートするんですけど、掛け軸を誉めたり大理石に触るよりも、その社長さんが普段食べている松阪牛のコロッケを試食させてもらっている時が一番イキイキしていたみたいなんです(笑)。

 それを見ていたディレクターさんがその方向でいけるかもしれないと旅番組にも使ってくれるようになって、そこからグルメロケを25年ほどやってきたという流れです。

 ただ僕の場合、味そのものは極端な話「まいう~」しか言わないので、僕が伝えるように心がけているのはお店の人のこだわりや工夫なんです。

 どういうところにこの人は苦労しているのか。こだわっているのか。そういうところを引き出したいと思って食レポしています。僕の場合は、リポート全体の情報量が100だとしたら、味30、人70くらいだと思います。

 そして、そういう人たちに、これまで仕事をさせてもらってきたわけですから、なんとか、少しでもお返しができればと思っているんです。

 飲食店だけでなく、農家さんとか漁師さん、いわゆる生産者の皆さんにもお世話になってきたので、そういう食に関する方々が少しでも盛り上がるようなことができればなと思っています。

 これはかなり大きな話にもなってくるだろうし、僕一人だとキツいので「ドロンズ」の石本君とか内山(信二)君にも力を借りないといけないかもしれませんけど、そういうチームを組んででも、恩返しができればなと思っています。

 まぁ、夏に稼働するにはかなり暑苦しいチームかもしれませんけど…(笑)。なんとか、少しでもできればなと思っています。

(撮影・中西正男)

■石塚英彦(いしづか・ひでひこ)

1962年生まれ。神奈川県横浜市出身。関東学院大学卒業。TBS「ぴったんこカン☆カン」、テレビ東京「よじごじDays」月曜MC、SBS「静岡発そこ知り」、中京テレビ「前略、大とくさん」にレギュラー出演。6月8日にYouTubeチャンネル「石ちゃんねる」を開設。食に関するコンテンツを中心に水曜、土曜に動画を更新中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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