「自分の席はないんじゃないか」。中山秀征が明かす“休む恐怖”からの脱却

仕事、家族への思いを語った中山秀征

 日本テレビ「シューイチ」の司会、そして、バラエティー、芝居など様々な分野で活動する中山秀征さん(53)。11年ぶりとなるミュージカル「GangShowman」(東京・日比谷シアタークリエ、9月18日~10月3日)にも出演し、常に前へと歩を進めています。17歳のデビュー以来、ひたすら走り続けてきましたが、新型コロナウイルスによる自粛生活はこれまでの考え方を一変させたといいます。

3カ月で300キロ

 長男は大学4年生で、野球部の寮に入ってたんです。でも、コロナで自宅に帰ってきまして。ウチは男ばっかり子どもが4人いるんですけど、今は全員集合状態になってます。

 長男が大学で野球、二男が高校野球、三男がサッカー、四男がバスケ。みんな、もうでっかくなってますんで、なんとも暑苦しさもあるんですけど(笑)、こんなに間近で成長を見ることもなかったなと。そう考えると、気持ちがふさぎ込むことが多いご時世ですけど、ある意味のプラスも見いだせているのかなとも感じています。

 息子たち全員体育会系なもんですから、自粛期間中にトレーニングの機器も通販で買いまして。家の駐車場に置いてみんなでウエートトレーニングをしたり、子どもたちと一緒に走ったり。ただ、僕以外は現役バリバリですからね!全くついていけないんですけど(笑)、なんだかんだで5月、6月、7月の3カ月で300キロ走りました。

 この期間で7キロほど痩せたんですよ。コロナ前は68~69キロくらいだったんですけど、だいぶグッときましたね。なんと言うんでしょうね、逆に、この期間中に「良くしないといけない」と思ったんです。

 僕らは人前に出ることによって、髪を整えたり、きれいな格好をさせてもらったりします。逆に言うと、仕事がないと本当に何もしないんですよ。油断すると、人前に出る仕事であることを心も体も忘れるというか。息子たちがいたのもありますけど、今こそもう一回ちゃんとしなきゃというのがあって走ったのも、正直、あるんです。

「家にいることはムダ」

 あと思ったのは、もし今のタイミングで僕が一人だったらどうなってただろうということでした。僕は一人でいるというのが本当にダメなんですよ。誰かと一緒にいたい。ワイワイしてたい。寝る寸前まで人がいてほしいタイプだったので、今回改めて家族のありがたみを痛感しました。

 うるさいし、ケンカもするし、もめたりもするんだけど、そういう空間があったことで、確実に、僕の場合は救われましたね。自粛期間に入って今に至るまで、家族以外とご飯も食べてないですしね。頻繁に飲みに行っていた人間が本当に行ってないですもん。

 もちろん、外食に行ってはいけないなんてことはないんですけど、これは僕個人の思いとして、万が一僕が感染したら、僕がやっているものが全て止まってしまう。ということは、周りの人の生活も止めてしまう。そう思うと、飲みに行かなくなりました。ずっと誰かと一緒にいた人生だったのに、こんなに家にいる自分になるなんて思いもよらなかったですね。

 というのはね、一つは、家にいることはムダだと思ってたんです。家にいても誰とも会わないし、発想も浮かばないし、得るものがない。そんな思いが特に若い頃にはあって、誰かと話して何かを入れる。一人の時間は極力短くする。結婚するまではまさにそうでした。

 結婚してからも、ありがたい話、日常的な幸せはあるんだけれども、この幸せだけではいけない。何かを得るために外で動いて、ある程度の無理や無茶もしないといけない。その思いは引き続きあったんですけど、今回のことで、新たな考えが生まれました。「この時間も大切だな」と。何もしてないことの大事さというか。

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 少し別の角度からの話になるかもしれませんけど、例えば「新春かくし芸大会」(フジテレビ)で三味線の練習したことがあったんです。本番に向けて何か月も休まず練習する。経験ゼロから本番までに間に合わせないといけないので、それこそ合間があったら練習するわけです。不慣れなことだから腱鞘炎にもなるし、同じことの繰り返しだし、イヤになるんです。もうやりたくないと。

 で、本番が終わって、10日くらい経った。痛みもなくなってきたし、なんとなーく、一回やってみようかなと。そうしたら、10日前より圧倒的にうまいんですよ。その間、なにもやってなかったのに。

 やってない時間が“熟成”させるというか…、そういうことは断片的にあったりもしたんです。なので、感覚としてはあったんですけど、今回、ずっと家にいる中で、さらに強く感じました。

 家でゆっくりした時間を過ごすことによって、次に走った時に、以前より速く走れる。これは多分に感覚的なところなんですけど、仕事の現場でそれを感じた時に「あ、これはこれで意味があるんだな」と心の底から思えたんですよね。

通ってない道

 若い頃は「休みください」なんて一回も言ったことないですし、僕らの頃はそんなことを言ったら「一生、休んどけ!」と言われた時代でした。そもそも、僕らは日当の仕事ですから、仕事に行かないと収入がないわけですから。“休む恐怖”が尋常じゃない。

 その時のギャラだけでなく、僕が休むということは、代わりを誰かがやるということですから。じゃ、戻ろうとなった時に、自分の席はないんじゃないか。その一発で、それまで積み重ねてきたものを全部失うかもしれない。幾重にも休む怖さがあったんです。

 でも、毎日家で家族と過ごす中で、カミさんはこんなに朝早くから起きていろいろやってくれているんだとか、1日に3回洗濯をしてくれてるんだとか、朝ご飯作ったらもう昼ご飯の用意なんだとか、仕事以外の大事な部分をつぶさに見ました。もちろん、分かってるんですよ。そうやってくれていることは分かっているんですけど、まじまじと分かったというか…。

 道端に咲く花みたいなもので、車で走ってたら見過ごしてしまう。でも、歩いてると「こんな花が咲いてたんだ」と見つけられる。その感覚に近いというか。

 これは例え話じゃなくて、今回の自粛期間でランニングしたり、犬の散歩に頻繁に行ったりする中で、実際に体感したんです。僕はほとんど車移動だったんですけど、そうやって、自分の足でいつもの道を歩くと、今まで見えなかったものが見えてくるんですよね。「こんなところにお店があったんだ」「こんな抜け道があったのか」とか。

 この発見って、仕事においても、生活においても、もしくは概念としても、通じることだなと。これまでとスピードを変えたり、やり方を変えると、いろいろな分野に「通ってない道」をまだまだ見つけられるなと気づいたんです。

 もちろん車に乗ってても、外見て運転をしないといけませんから、景色は見てるんです。でも、その“見てる”と歩きながらの“見てる”は違うんですよね。

 いわば、これまでの芸能人生は人より速く目的地に行こうと思って、ずっと車に乗ってたんです。それは若い頃にはとても大切なことだし、そうやって走り続けたからこそたどり着いた目的地もあった。でも、ずっと車に乗ってることで見てなかったこともたくさんあったんです。見てるつもりだったけど、見えてなかったんです。

 これまでは外で飲んでた分、家でお酒はほとんど飲まなかったんですけど、今はちびちび晩酌をしたりしてます。また、これが何とも楽しいんですよね。うちの実家は商売をしてたもんで、親父が昼働いて、夜になったらテレビを見ながらちびちびやってたんです。それを毎日見てたんですけど、時を経て同じことを自分がやってるのも、何とも言えぬ味がありましたし(笑)。

 周りの皆さんから良いお酒をいただいたりすることも結構あって、もったいないかな…と思いつつも、この機会に開けてみたりね。あと「カクヤス」に行って「これはいったい何リットル入ってるんだ」というような大きな焼酎を買って飲んだりね。またこれが、意外とすんなりなくなっちゃって(笑)。53歳になりましたけど、まだまだ通ってない道、あるもんです。

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(撮影・中西正男)

■中山秀征(なかやま・ひでゆき)

1967年7月31日生まれ。群馬県出身。ワタナベエンターテインメント所属。85年、松野大介氏とお笑いコンビ「ABブラザーズ」を結成する。コンビ解消後はタレントとして活動。92年から出演した日本テレビ系「DAISUKI!」で、松本明子や飯島直子らとの息の合ったやり取りでも注目を集める。 現在、日本テレビ系「シューイチ」でMCを担当。屋良朝幸主演のミュージカルコメディー「GangShowman」(東京・日比谷シアタークリエ、9月18日~10月3日)にも出演する。

立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。2003年、故桂米朝さんにスポーツ紙として異例のインタビューを行う。「上方漫才大賞」など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、株式会社KOZOクリエイターズに所属する。現在、ABCテレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞する。また、CNN、BBC、ニューヨークタイムズなどが使用する記事分析ツール「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。

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