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「もっと売れたい」謹慎を経て「ザブングル」が打ち明けたリアルな思い

中西正男芸能記者
「ザブングル」の加藤歩(右)と松尾陽介

 “闇営業”騒動で謹慎生活を経験し、9月に復帰したお笑いコンビ「ザブングル」の加藤歩さん(44)と松尾陽介さん(42)。10月からレギュラー番組「建物の世界を深掘り ボクらケンセツ部」(サンテレビ)もスタートしました。新たな一歩を踏み出しましたが、謹慎中の生活、そして今の思いを「なんでも聞いてください。なんでもお話しします」と赤裸々に語りました。

当たり前じゃない

加藤:謹慎期間中は、どうしても必要な品を買うためにスーパーに買いに行くとか以外は、基本的に自宅で過ごす日々でした。もちろん、友だちと居酒屋さんに行くとか、そういうことはないですし、自分の中では、喫茶店に行くのも、銭湯に行くのもそぐわないと思って行ってませんでした。

松尾:少しでも楽しみの要素があったら、それは謹慎にならないという…。

加藤:謹慎して気づくのも情けないんですけど、これまでは当たり前だと思っていたことが全然当たり前じゃない。一つ一つが本当にありがたいことだったんだ。それを今回のことでこれでもかと痛感しました。今、もう一回やり直しをさせてもらっている中で、一つお仕事をいただけるありがたさというか、そこもまた噛みしめています。カッコつけた言い方みたいになってしまいますけど、それが本当に、本当に、今、思うことなんです。

介護施設での経験

松尾:謹慎期間中は、こちらからお願いして介護施設に行かせてもらってました。その中で、いろいろな方とお会いしました。入所されている方、現場で働いてらっしゃる方、運営されている方、皆さんとお話をしました。そこで、今までいかに自分たちがのうのうとやってきたのかを強く感じました。

加藤:ま、僕らなんてのは、ちょこっと行かせてもらっただけなんで、何を言っても、本当におこがましい話にはなるんですけど。

松尾:実際にボランティアスタッフとしてお手伝いをさせてもらう中では、これは、きれいごとじゃなく、本当にあらゆる意味で大変だし、必死にならないとできないお仕事でした。頭というよりも、その日々の中で、体で感じることもたくさんありました。

加藤:まずは熊本の施設で1カ月。その後、釧路、関東近郊、全部で10カ所くらい行かせていただきました。今も月に1回くらいのペースで行かせてもらってまして、現在は日々の生活のお手伝いというよりも、レクリエーションとして、入所されている方とクイズをしたり、しりとりをしたりして一緒に楽しんでもらうことをやっています。

松尾:いきなり僕らが行ってネタをさせてもらうというのは、何と言うんでしょうか、楽しんでもらいにくいというか、ご理解いただけない場合も多かったので。みんなで楽しめることとなると、必然的にクイズとかしりとりに落ち着いていったんです。

売れるということ

加藤:ほとんどの方は僕らのことをご存知じゃないんですけど、たまーにですよ、本当にたまに、僕らのことを「知っている」と言ってくださっている方もいて、僕らを見ると、すごく喜んでくださるんです。

それって、この仕事の根源的なところかもしれませんけど、こちらもすごくうれしいですし、純粋に「もっと売れたい」と思いました。売れるということは知られるということ。知られるということは、喜んでくれる人の数を増やせるということ。その意識も再確認しましたし、それが強くなったと思います。

松尾:確かに、そこは強く感じるところでしたね。

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加藤:あと、僕は今までお客さんのこととかを考えず「自分が面白いと思うこと」をゴリ押しするタイプやったんです。今も思いっきりそのタイプに見えるかもしれませんけど(笑)、自分の中ではそれが少し変わったというか、新たな考えが加わったというか。

高齢者の方々の前で僕のゴリ押しをしたところで、それは誰の幸せでもない。それよりも、皆さんに寄り添って、皆さんが喜んでくださるようなことをする。そういう考え方がこの歳になって芽生えてきたんです。

松尾:そこで皆さんが喜んでくださることが一つの正解であり、こちらも純粋に喜んでもらえたらうれしいですしね。

加藤:例えば、皆さんに寄り添ってしりとりをする。これは本当に正直な話ですけど、この“寄り添う”ことに恥ずかしさを感じる自分がいたんです。これまで通り、突っ切る自分ももちろん変わらず大切だと思いますし、それプラス、この寄り添うということも、大切なことなんだと今の自分は思うようになりました。

そして、さらにまた一つ奥のことにも気づかせてもらったというか、この前「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ)に出してもらったんです。そこで痛感したのが、僕は自分の力で、自分のやりたいことをやってきたと思っていたけど、それは周りがあってこそ。実は、周りが優しく受け止めて、僕に“寄り添って”くれていたんだと…。

周りの支え

松尾:今回のことで、たくさんの方からのお気持ちもいただきました。LINEでの連絡も本当にたくさんいただきましたし。いろいろな表現があって、ストレートに心配してくださる方もいらっしゃいましたし、「今日、飲みに来れる?」とサラッとボケて「行けるわけないでしょ!」とこちらに返させることで、力を与えてくださる方もいらっしゃいました。

加藤:そういう連絡の一つ一つが本当にありがたかったですね…。

松尾:事務所の先輩の名倉潤さんからも「大丈夫か」とメールをいただいたんですけど、その直後にご自身も病気で休養を発表されて。そんな中でも、こちらのことを気にかけてくださっていたんだと思うと…、ありがたいしかないですよね。

加藤:ここからの僕らでお返しをしていくしかないですからね。その一つで言うと、11月25日に僕の単独ライブやるんです。もともとは7月9日にやる予定だったんですけど、謹慎生活に入ってしまったので、やれなくなっていたんです。

そもそも、僕なんて人気があるわけじゃないし、お客さんは入らないだろうと思って70~80人くらいのキャパでやろうと思っていたら、カンニング竹山さんが「どうせやるなら、200人くらいのところでやらないと意味がないぞ。加藤ならやれる!」と言われて、7月に向けて大きな会場をおさえたんです。で、発売当日。2枚しか売れなかったんです…。

そこから謹慎での中止を経て、今回またやらせてもらうことになったんですけど、いろいろな方から励ましの言葉もいただきましたし「よし、今度こそ!」と思って、あえて7月と同じ会場にしたんです。じゃ、今回は3枚でした。

松尾:ま、一つ確実なのは、熱心に応援してくださっているファンが2人はいるよな。

加藤:ありがたいです!!

(撮影・中西正男)

■ザブングル

1974年10月26日生まれで三重県出身の加藤歩と77年1月28日生まれで愛知県出身の松尾陽介がそれぞれ別のコンビを経て99年にコンビ結成。ワタナベエンターテインメント所属。サンテレビ「建物の世界を深堀り ボクらケンセツ部」などに出演中。加藤の単独ライブ「ザブングル加藤劇場」(11月25日、東京・ユーロライブ)が開催される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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