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3年間で24000軒に飛び込み営業した歌手・かとうあいが語る夢!

中西正男芸能記者
「アウト×デラックス」でも注目された歌手・かとうあいさん

 独特の舌足らずなしゃべり方からは想像できない歌唱力で、フジテレビ系「アウト×デラックス」でも注目された歌手・かとうあいさん(23)。8月23日には数々の有名アーティストがライブを行っている大阪・なんばHatchでソロライブを開催しますが、すでにチケットは完売しています。フリーで活動し、大阪や東京を中心にクラブ、ラウンジ、スナックなどをまわる“流し生活”を続けている異色の女性ミュージシャン。これまで約24000軒のお店に飛び込み営業をしてきましたが「毎日たくさんの人と会って、その人たちの善意で私は生活できている。だから、絶対に恩返しをしないといけないんです」と真っすぐな瞳で話しました。

在学中に200万円稼いだ

 出身は島根県なんですけど、昔から歌うのは大好きでした。地域のイベントとかで歌わせてもらっていて、高校に入る時にはもう将来の道として歌を考えていました。ただ、高校在学中に「スター☆ドラフト会議」(日本テレビ系)のオーディションを受けたんですけど、結果的に本選には残れなくて…。これまで田舎で歌っていた時はずっとうまくいっていたのに、やっぱり歌で本当にやっていくにはちゃんと勉強をしないといけない。そう思って、音楽の専門学校に入るために大阪に来たんです。高校を卒業してすぐに出てきたので、19歳の年でした。

 うちはお母さんだけの家庭で、私が三姉妹の真ん中なんです。お母さんを説得して大阪に出ることを許してもらって、高校3年間でバイトをやりまくって、お金を貯めました。ファミリーレストラン、喫茶店、回転寿司と3つを掛け持ちして、回転寿司ではひたすら鯛を1枚7グラムに切っていました(笑)。そうやって、全部で200万円ほど貯めて、専門学校の学費やしばらくの生活費を持って大阪に出てきたんです。

「アウト×デラックス」出演

 大阪に出てきてからも最初はいろいろなアルバイトをしようと思って、コンビニとか居酒屋さんのバイトをしていたんですけど、こんなしゃべり方だからなかなか続かなくて。高校生の時はまだみんな目をつぶってくれていたのかもしれませんけど、もう社会人の歳になってのこのしゃべり方はなかなか接客業とかには不向きだったみたいで。

 別にキャラクター的にわざと作ってやっているものでもないし、子どもの頃からこんなしゃべり方だし、う~ん…となっていたら、専門学校がアルバイトを紹介してくれまして。それがファッションイベントの「関西コレクション」でスタッフさんにケータリングのお弁当を配るお仕事だったんです。イベントの裏側を見学もできるし、スタッフさんとかに会う機会にもなる。

 本当にありがたいアルバイトだったんですけど、そこで、イベントに関わっていた事務所の方に「おもしろいしゃべり方をする子だね」と声をかけていただいて、その事務所に所属することになったんです。そんな流れで出してもらったのが「アウト×デラックス」で、それが2015年、19歳の時でした。

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“流し”生活へ

 “しゃべりと歌にギャップがありすぎてアウト”という切り口で出してもらって、それ以来、テレビやラジオのお仕事もさせてもらったんですけど、事務所との契約が終わったこともあって「やっぱり歌で皆さんに知ってもらいたい」という思いが強くなりまして。そのためには歌のスキルを上げないといけない。そして、歌に関係ないアルバイトはせずに、歌だけで暮らしていきたい。そんな思いから、コンサートやライブを開かなくても歌えるし、クラブやラウンジ、スナックなど夜のお店で歌わせてもらう“流し”の生活を始めたんです。この生活になって、3年ほど経ちます。

 歌のスキルを上げること。そして、1人でも多くの人に知ってもらいたい。そんな思いで毎晩スナックビルを上から下まで全部のお店に声をかけてまわって「1曲、歌わせてもらえませんか?」と飛び込みでまわっています。

 「1曲…」と声をかけるのにも理由があって、そのお店でたくさん歌わせてもらえたら、それはそれでありがたいんですけど、そのお店だけで一晩終わってしまうと、会える人数がそのお店の人だけになってしまう。それよりは、1人でも多くの人と会えたらなと思って、歌って次へ、また次へという感じで毎日やっているんです。

3年間で24000軒

 皆さんがくださるチップやご飯とかだけで3年間食べています。歌わせてもらったお店では必ずお店の名刺をもらうことにしているんですけど、今、手元にある名刺が8700枚くらい。断られたのが15000軒以上。なので、合わせて、だいたい24000軒くらいは声をかけてきました。

 23歳の女の子では会えないような方と偶然お会いできたり、大社長さんにご飯に連れて行ってもらったりという本当にありがたい流れもあります。ただ、ドアを開けないと、その先にどんなお客さんがいらっしゃって、どんなママさんがやってらっしゃるのかは分からない。なので、怖い思いをすることもあります。ビールをかけられたり、携帯電話を割られたり。当たり前ですけど、皆さん、お酒も飲んでらっしゃるので、少し前には「いいよ」と言っていたことが「何をしとんねん!」にもなる。あと、入ってみて「あ、このお店雰囲気、危ないな」と思っても、こちらが「1曲、歌わせてもらえませんか」と入った以上「歌え!」と言われたら、そのままお店を出ることはできないし。いろいろなことはあります。でも、365日、毎日歌っています!

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私には歌しかない

 音楽をやっている以上、のんべんだらりとやっていても仕方がない。きちんと目標を立てて、その都度クリアしていかなきゃと思って、自分の中で「25歳までにやること」を決めたんです。その1つが、8月に開催する大阪・なんばHatchでのソロライブ。

 なんばHatchを終えたら、次は地元の島根からスタートして全国をまわるライブツアー。そうやって全国でやるためには、まずはなんばHatchという大阪の大きなホールを満席にしましたという実績がいるだろうと思って、私なりに考えてのことだったんです。一応、いろいろ考えながらやってもいて(笑)。そして、いろいろやって思うのが、やっぱり私には歌しかない。本当に。その歌で生きていくために、たくさん考えて、たくさん動かなきゃと思っています。

 ステージという一段高い場所に立たせてもらうためには、そこに立ってもいい人間になるためには何をしないといけないのか。そんなことをいっぱい、いっぱい、考えるようにしています。

 まずは感謝の気持ち。毎日たくさんの人にお会いして、お会いした方々の善意で今私は生活ができている。当たり前ですけど感謝しかないし、お返しができるように、もっと、もっと頑張っていかなきゃと思っています。

 25歳までの目標が達成できたら、次は30歳までに大阪城ホールでやりたい。とんでもなく大きな目標だと思いますけど、なんとかたどり着けるように毎日積み重ねをしていきたいです。

 …すみません、途中から、あまりにも真面目すぎて、おもしろくないですよね(笑)。今、見てもらっているような写真の感じなのに、ついつい、こんな話ばっかりしちゃってごめんなさい(笑)。

(撮影・中西正男)

■かとうあい

1994年8月22日生まれ。島根県出雲市出身。本名・加藤愛。高校卒業後、音楽の専門学校に入るため大阪へ。3年前から全国のクラブやラウンジ、スナックなどに飛び込みで歌う“流し生活”をし、これまで約24000軒のお店に「1曲、歌わせてもらえませんか?」と声をかけてきた。8月23日には大阪・なんばHatchでソロライブを開催。「全人類とお友だちになりたい」がモットー。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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