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「M-1」優勝から10年。石田明が語る「NON STYLE」の未来

中西正男芸能記者
父になっての思い、そして「NON STYLE」の未来について語る石田明

 全身真っ白の衣装、超虚弱体質ボディーでおなじみの漫才コンビ「NON STYLE」の石田明さん(38)。相方の井上裕介さんと2008年に「M-1グランプリ」で優勝するなど漫才の実力は折り紙つきですが、ここ数年は個人として舞台の脚本や演出も手掛けるなど新たな領域にも歩みを進めています。昨年8月に双子の女児が誕生したことをきっかけに幼児・小学生向けのイベント「ももたろう」(東京・ルミネtheよしもと、7月23日~8月10日、休演日あり)もプロデュース。「M-1」から10年、父親になって10カ月。人生の変化が笑いの質にも変化をもたらしていると言います。

娘ができて分かったこと

 結婚して5年。去年、やっと子供を授かりまして。ママ友・パパ友がすごく増えたんですけど、皆さん口をそろえて言うのが「娯楽が限られてくる…」ということなんです。それを聞いた時に、お笑いって、こんなにストレス発散に向いているはずなのに、子育てで疲れたお母さんを生の舞台でほぐすことができないのかと。そう感じて、是非ともそういうコンテンツを作りたいと。子どもも楽しめて、パパ・ママもしっかり笑える。それを作れたらと思って立ち上げたのが「ももたろう」だったんです。

 子ども連れでお越しの方も劇場にいらっしゃいますけど、申し訳なさそうに赤ちゃんを抱いてらしたり、ちょっとでもぐずったら大慌てで外に出ていかれたり。なので、最初から“乳幼児大歓迎”ということをうたってしまおうと。そして、中身も1公演を45分と短くして、女の子が好きなアイドル的な要素もあり、男の子が好きな戦隊ものの要素も入れようと。そして、それをお母さんとかが一番動きやすい午前中の時間帯にやろうと。

おもちゃから学ぶ

 今回の舞台もそうですけど、子どもができていろいろ変わりましたね。考え方というか。言いたくない言葉も増えましたね。「わざわざこの言葉を言ってまで、テレビに出たいか」というような問いかけを自らにするようになりました。今はどんどん映像も残っていく時代ですしね。例えば、下ネタとか、人のことを悪く言うとか。ま、相方の井上に対しては別なんですけどね。井上を悪く言うのは、職責をまっとうしているだけなんで(笑)。

 あと、今、積極的に取り組むというか、勉強をさせてもらっているのが、おもちゃなんです。一時期、雑誌「GetNavi」さんでおもちゃの連載をさせてもらっていたつながりもあって、おもちゃ製作の企業さんの定例会議みたいなところに見学に行かせてもらっているんです。

 おもちゃって、何かしら子どもたちの教育になることを入れようとするものと、とことんくだらないものを作ろうという二手に分かれるんですけど、とことんくだらないものと言っても、作る側は本当に真剣なんですよ。当たり前なんですけどね。いいオッチャンたちがおもちゃから出るオナラの音一つに対して激しく会議をしてるんですよ。「ちょっと、これ、生々しすぎないですかねぇ」とか「もっと高音の方がいいんじゃないですかね」とか(笑)。

 だから、うちの娘たちにはこの世にある全てのもの、そこに対して、それを無下に否定したり、軽んじたりすることはしないようにと思って、育てていきたいと思っています。まだ1歳にも満たないので、これからだとは思うんですけど、ちゃんと物に、人に敬意を払える人間になってもらいたいなと。変にまじめな話をするつもりは全くなかったんですけど(笑)、物作りの現場を見て、そして、自分もここ数年、漫才のネタ以外に、舞台の脚本なんかもさせてもらうようになって、その意識は強くなりましたね。

井上がサクラ

 少し入り組んだ話になりますけど、漫才よりもたくさんの人が関わる舞台のお芝居を考えるとなった時、今まで僕が書いていたコンビとしてのネタの見え方も変わってくるんですよね。「M-1」の頃とかは、本当に自分本位のお笑いをやっていたなと。細かく言うと僕がそのフレーズを言いたいがために、一つ前にそのフレーズを僕が言うためのワードを井上に言わせているというか。井上が僕がしゃべるためのサクラと言いますか。

 「M-1」で優勝した時も、まだ井上はサクラだったと思います。「面白いことをせなアカン」という意識が強すぎて。ただね、やっぱり大会となると、これでもかとウケないといけないし、どうしてもそっちに頭が働いていくんです。ただ、そこから大会に出て云々ということが減っていって、少しずつナチュラルな会話というか、自然なやりとりになってきたかなと感じています。

 それでもね、今から数年前の「THE MANZAI」(フジテレビ系)の頃は少し残ってるんですよね。たった一つのフリで僕がずっとボケ続けて、井上が「ボケ、多い!」とつっこむネタがあったんですけど、それがナチュラルな流れになっていった原型かなと自分では思っています。こんなこと、ムチャクチャ細かい話なんで、皆さんにお話をしたところで「知らんがな!」という領域だとは思うんですけど、自分の中ではターニングポイントやったんですよね。

 …ま、それでも、今振り返ってみると、あるんですよね。「あー、言わせてるなぁ」というところが2~3カ所。バーッと流れで見てたら気にならないのかもしれませんけど、一つ挙げると、僕が次々ボケていって、そこで井上が「これ以上ボケたら絶交な!」って言うんです。こんなもん、エエおっさんが“絶交”なんて言うわけないんですよ。ただ、僕がそのあと「願ったり、叶ったり」って言うんです。その言葉を言いたいがためのサクラをまた井上がやっちゃってるんですよね…。ま、こうやって少しずつ、漫才って変わっていくもんなんやろうなと思います。

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「NON STYLE」の未来

 今後、さらに年月が進んでいったら、もっと、もっと、人間としての味が出てくる漫才になっていくんだろうなと。井上もあんなキャラですけど、ちゃんと歳をとって、もっと、今というものにしがみついていく姿を見せられると思うんですよね。もう完全にオッサンになっている井上がカッコつけて、今なら「キモイ」ですけど、この先は「無理すんな」になると思うんです(笑)。「もうエエやん、ゆっくりせぇ」と。僕は逆にどんどん冷静になっていって。「オレも、この歳で『キモイ』とか言いたくないねん。娘2人、もう社会人や」とか。正味、そう思うでしょうし(笑)、そういう変化が味になるのかなとも思います。

(撮影・中西正男)

■石田明(いしだ・あきら)

1980年2月20日生まれ。大阪市出身。高校卒業後、トリオ、ピンとして芸人活動をした後、中学・高校の同学年だった井上裕介と2000年にコンビ結成。ABCお笑い新人グランプリ審査員特別賞、上方漫才大賞優秀新人賞、MBS新世代漫才アワード優勝、NHK新人演芸大賞演芸部門大賞、上方お笑い大賞最優秀新人賞など受賞多数。井上がナルシストキャラを見せる“イキり漫才”を確立し、08年には「M-1グランプリ」で優勝を果たす。12年には12歳下の一般女性と結婚。17年8月に双子の女児が誕生する。ここ数年は舞台の脚本、演出なども手掛けている。幼児・小学生に向けたプロデュースイベント「ももたろう」(東京・ルミネtheよしもと、7月23日~8月10日、休演日あり)も開催。出演は石田のほか、テレビ朝日系「海賊戦隊ゴーカイジャー」でゴーカイレッドを演じた小澤亮太、バイク川崎バイクら。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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