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森崎ウィン、夢を実現した“逆境力”

中西正男芸能記者
ハリウッドデビューを果たした森崎ウィン

 スティーブン・スピルバーグ監督作品「レディ・プレイヤー1」(公開中)でハリウッドデビューを果たした俳優・森崎ウィンさん(27)。全世界で行われたオーディションを勝ち抜き、メインキャストの1人に選ばれました。一気に世界的スターへの階段を駆け上がりましたが、「10年以内に、必ずアカデミー賞を取ります!」と力強く宣言しました。

何の映画かも分からず…

 一次審査にあたるビデオオーディションがあったのが2015年でした。カメラの前で英語のセリフを言ってその映像を送るというものなんですけど、この段階で分かっていることは役柄が日本人でバイリンガル。年齢が20代前半。これだけでした。全体としてどんな作品なのか、そして監督がどなたかも全く分からない状態だったんです。

 幸い、ビデオオーディションを通過すると、次はいきなりLA(ロサンゼルス)に呼ばれたんです。そこにはスピルバーグ監督もいらっしゃって、監督、プロデューサー、キャスティングディレクター、アシスタントディレクターという4人の前でのオーディションでした。時間はだいたい30~40分だったと思うんですけど、それも定かではないくらい、とにかく緊張して…。完全に記憶が飛んでいます(笑)。

 そこから連絡がないまま、8ヵ月。半分「もう、ダメなのかな」と思っていたところで、事務所に呼ばれまして。普段行かない応接室みたいな部屋に入ると、事務所の幹部の方が座っていて。瞬間的に「うわ、怒られる…。何かやったっけ?」と最大限に頭を働かせていたら、幹部の方が立ち上がって「おめでとう」と。

 意外と言いますか、言われた瞬間ってうれしいという感情までたどり着かないというか、「…マジですか」というあたりで気持ちがウロウロするもんなんですね(笑)。ただ、もちろんすごいことが現実になったので「母親に言っていいですか?」と聞いたら、「守秘義務があるから誰にも言わないで」と。「うわ、そんな感じなんだ…」といきなり“ハリウッド感”を感じもしましたけど(笑)、その1週間後には撮影地であるイギリスに向かいました。

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ハリウッドを体感

 撮影期間は4ヵ月くらい。現場は、そりゃ、もう“THE HOLLYWOOD”でした!現場はイギリスの田舎の方だったんですけど、控室としてトレーラーが与えられて、中にはレザーのソファがあって、シャワーもあるし、テレビもあるし、キッチンもあるし。完全に豪華な家でした。また、そのソファの寝心地のいいこと(笑)。

 そして、撮影自体も、とても刺激的な時間でした。スピルバーグ監督、現場は若い人に任せているみたいなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんけど、思いっきり、ずっと現場にいらっしゃいます(笑)。細かい演出も監督がされるし、こちらが恐縮しながらもアイデアを出すと「いいねぇ!」とすごく前向きに受け止めてくださる。さらに、ものすごくエネルギッシュに「今の芝居、最高!」みたいなこと言ってくださるんです。それがすごく気持ちよくて!もっと、もっと頑張ろうという気持ちになるんですよね。

 それとね、ハリウッド作品に出たら変に気持ちが大きくなって「オレ、態度が大きくなっちゃったりするのかな…」とも心配していたんですけど(笑)、完全に逆でした。周りはすごい役者さんばっかりですけど、みんな、本当に、本当に、優しいんです。スタッフさんが荷物を持っていたら率先して荷物を持ってあげるし、自分がドアを開けてスタッフさんを通したり。細かいところかもしれませんけど、そうやって周りと一緒に盛り上げていくというか、そういう空気を作っていくというか。世界でもトップクラスのエンターテイナーの人というのは、こういう感じなんだと…。俳優として、人として、本当に刺激を受けました。

小学4年で来日

 そもそも、この世界に入るきっかけは中学2年の時にされたスカウトでした。小学4年まではミャンマーにいまして、両親が日本で働いていたので、その流れで日本に来たんです。今でもミャンマーの言葉は話せますし、逆に、日本語はこっちに来てから勉強しました。最初は「ウィンです」「ありがとう」くらいしかしゃべれなかったので、国語の時間は僕だけ別の教室に行って、日本語を教えてもらっていました。

 そんな状況だったので、正直、いじめみたいなこともありました。ただ、その中でも、自分のことながら「小学生の自分、よく頑張ったな」と思うくらい、そういうものに負けず、毎日立ち向かってたんですよね。たとえば、放課後にサッカーをやるんですけど、みんなキーパーは嫌がるんです。みんな、やったことないからよく分からないし、でも、点を入れられたら文句を言われるし。ただ、僕はそこでキーパーをやるんです。点数を入れられて上級生から文句を言われることもありましたけど、それでも、泣きながらでも食らいつくというか、必死にキーパーをやっていました。多分、外から見たら、いじめと呼んでもおかしくないこともあったはずなんですけど、それに対してシュンとするのではなく、そこに向かって行って、周りを納得させるというか。なので、結果としてトラウマ的なことにはならず、今もその頃の上級生と仲良くしています(笑)。

 小学生の頃からそうだったのかもしれませんけど、今でも、追い込まれて必死になるしかない状況だと、自分でも驚くくらいの力が出るんです。曲を作ったりもするんですけど「いつでもいいから作って」と言われたら、なかなかやらない(笑)。締め切りが迫ってきて、これはどう考えても厳しいだろうというところから一気に作るというか。そういう“逆境での力”みたいなものが、もしかしたら、今回のオーディションでも発揮されたのかもしれないなとは思います。

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10年以内にアカデミー賞

 あと、今、明確に思っていることが1つありまして。10年以内にアメリカでアカデミー賞を必ず取ります!(今作の)上映会があった会場が、アカデミー賞の授賞式が行われるドルビー・シアターだったんですけど、そんな記憶もあったからなのか、今年の授賞式で辻一弘さんが「メーキャップ&ヘアスタイリング賞」を取られてタキシード姿で出てこられた場面を見た瞬間、「あ、ここに立つ…」としっかりイメージできたんです。

 今こんなことを言うと、後出しじゃんけんみたいになってしまいますし、これまでも「いい気になって」みたいに思われるのもナニなので、言ってこなかったんですけど、今回の台本が送られた瞬間、「あ、これは、いける」というイメージが来たんです。

 ただ、それで言うと、子どもの頃のイメージどおりになっているならば、今の年齢にはサッカー選手になっているはずだったんですけど、それはハズレてますね。よく考えたら、ハッハッハ!ま、打率10割ではないですけど、そのイメージを実現できるようにこれからも頑張ります!

(撮影・中西正男)

■森崎ウィン(もりさき・うぃん)

1990年8月20日生まれ。ミャンマーで生まれ、小学4年で来日。日本語、英語、ミャンマーの公用語であるビルマ語を話す。中学2年の時にスカウトされ、スターダストプロモーションに所属。2008年、5人組ダンスボーカルユニット「PrizmaX」に加入し音楽活動とともに俳優としてもデビューする。映画「シェリー」(2014年公開)で初主演。現在公開中のスティーブン・スピルバーグ監督作品「レディ・プレイヤー1」でメインキャストとしてハリウッドデビューを果たす。同作はVR(仮想現実)の世界「オアシス」を舞台にした物語で、森崎は主人公の友人役を演じている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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