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山田裕貴、父の“光”から見えたもの

中西正男芸能記者
まさに“旬”の俳優、山田裕貴

TBS系ドラマ「3人のパパ」(水曜・11時56分)に出演中の俳優・山田裕貴さん(26)。テレビ朝日系「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビューし、映画「ストロボ・エッジ」や「HIGH&LOW」シリーズなどでも注目を集めました。今年だけで10本の映画に出演し、今まさに旬という存在ですが、父親は元中日ドラゴンズ、広島カープで選手として活躍し、現在広島でコーチを務める山田和利氏。強い光を放ち続ける父の存在が、今の自分を形作ったと言葉に力を込めました。

現場に無言の一体感

今回、若者3人がいきなり置き去りにされた赤ちゃんのパパになるというドラマなので、撮影中はずっと赤ちゃんと一緒だったんです。もちろん赤ちゃんですんで、正直、なかなか泣き止まないこともあるし、当然、赤ちゃんが悪いわけではないんですけど、日々そんなことの連続でした。

でも、僕ら出演者も、スタッフさんもみんな前向きに、一切ネガティブな感情を持たずにその状況を受け止める。それが共通認識になっていたというか、無言の一体感というか、全員で「やり遂げるぞ!!」という気持ちにあふれた現場となってました。

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こちらの本気が届いた!!

あと、今回の作品だからこそ味わえた“しびれるくらいグッときた場面”もあったんです。僕が赤ちゃんと対峙(たいじ)して切々と教えを説くというシーンがあるんですけど、この日は、いつも以上に赤ちゃんの機嫌が悪かった。みんな、いろいろ試したんですけど泣き止まない。そんな中での本番。当たり前ですけど、いつも本気で、真剣に本番に臨んでいるんですけど、こっちも本気の、本気の、本気のスイッチが入ったというか「絶対に、マジで、この子に語りかけよう」と思ったんです。赤ちゃんという、容易にコントロールできるものではない存在と向き合ったからこそ、いつもと違うスイッチが入ったというか。

ジーッと赤ちゃんの目を見て「いいか、大切なことをお前に伝えるぞ。1つ目は『他人に迷惑をかけないこと』。2つ目は『辛い時ほど笑顔でいること』」という風に語りかけていったんです。本当に、本当に、親としてこの子に絶対これを教えるんだという強い気持ちを持って。そうしたら、さっきまで泣いていた赤ちゃんがパッと黙って、こちらの話を真剣な表情で聞いているんです。そして「つらい時ほど…」と話し出したところで、ニコッと笑ったんです。

もちろん、偶然かもしれませんし、本当のところは今でも分からない。でも、自分としては「こちらの本気が届いた!!」という感覚があって、それがすごくうれしくて。それを感じるからこそ、こちらも自然と目頭が熱くなるというか。実際に、自分がやっている役を生きられたというか、この感覚は、自分の中で実に大きかったです。本気で相手に語りかける大切さ。文字にしたら当たり前のことなんですけど、本気度の重要さを体感できた気がしました。

父への思いからたどり着いた答え

今回、内容的に、「父」ということを強く意識する作品にもなったんですけど、僕の場合、父がプロ野球選手だったんです。なので、小さい頃は、その姿をテレビで見て、カッコイイなと思ってましたし、いろいろな思いを持つことにもなりました。実際、父への思いから自分も野球を始めましたし。ただ、ずっと野球をやっているうちに「これは、自分のために野球をやっているんじゃなくて、父に勝つためだけに野球をやっているじゃないか」という思いがどんどん出てきてしまって。そして、野球は中学までで辞めたんです。

そして、高校3年生の時、忘れられない体験をしまして。自分の友達が高校野球で甲子園に行って、スタンドに応援に行ったんです。その時、まだ試合も始まっていないのに、グラウンドを見ていたら涙が止まらなくなったんです。あのまま続けて頑張っていたら、スタンドじゃなくて、グラウンドに立っていたかもしれない。オヤジを超えていたかもしれない。なのに、途中であきらめてしまった。父という存在に自分から負けてしまって、あきらめてしまって、今、自分はスタンドにいる…。そんな思いが一気にあふれてきまして。一緒に応援に行っていた友達からしたら「なんで泣いてるの?」になったと思いますけど(笑)、その時に自分の中で何かがはじけたのは間違いありません。

そこで、考えたのが「俳優」という道だったんです。というのは、うちは家族みんなで楽しむことといえば、リビングで映画やドラマを見ることだった。父は試合やキャンプなどで1年の3分の2ほどは家を空けてましたし、家族全員でそうやって見ている時間というのが、すごく楽しくて。じゃ、家族で見てきた映画やドラマに出る存在になろうと。そう決めて、進学もせず、高校卒業と同時に東京に出て俳優を目指しました。

今回のドラマでも、あてがきかと思うくらい自分とかぶることがありまして。僕の役は父親が東大を出て官僚をしていて自分は父には勝てなかったけど、普通の幸せな家庭を築くことが父への親孝行であり、自分の心の落としどころみたいに考えている商社勤務のサラリーマンという設定。僕は冒険心が強かったので(笑)、今の仕事を選んだんですけど、気持ちの面ではすごくよく分かる役柄でもあったんです。

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“全部、自分のせい”だから…

今、思うのは、身内といえども、父親といえども、人と比べるものではない。自分の声と、顔と、体と、感性で自分は成り立っているんだから、同じ存在はいないし、自分にしかないものが必ずあるはず。父親にさんざん対抗意識を燃やし、負けたという感覚も味わい、だからこそ、今、本当にそんな風に思うんです。

さらに、そこから踏み込んで思うようになったのが“全部、自分のせい”という考え方なんです。パッと聞いたら、ネガティブな考え方に聞こえるかもしれませんけど、結局は全てをプラスに転じさせる魔法の言葉だなと。例えば、現場の雰囲気が悪い。じゃ、自分が明るくすればいい。スケジュールが合わずに仕事が流れた。じゃ、スケジュールを調整し直してでも使いたいという魅力を自分が磨けばいい。そんな風に考えるようになったんです。

そうやって、最終的な目標に考えているのが“亡くなった時にニュースになる俳優になる”ということ。これは、死ぬまで叶わない夢なので(笑)、とにかく生きている間は走り続けるしかないなと。

今、父は僕の作品をすごく見てくれてます。こんなに可愛らしい目ができたんだというくらい、穏やかな顔で(笑)。中でも「HIGH&LOW」がお気に入りだそうで。ただ、こっちに言ってくるのが「アレは、ただ“ハマリ役”だっただけで、お前の芝居がうまいわけじゃないからな」と(笑)。さらに「昔の『仁義なき戦い』シリーズの○○さんや□□さんの迫力といったらな…」と評論家みたいにまくしたててくるのにも、もう慣れました(笑)。

■山田裕貴(やまだ・ゆうき)

1990年9月18日生まれ。愛知県名古屋市出身。身長178cm。ワタナベエンターテインメント所属。高校卒業後、俳優を目指し、ワタナベエンターテイメントカレッジに入学。2011年、テレビ朝日系「海賊戦隊ゴーカイジャー」のゴーカイブルー役でデビューする。2014年には「ライヴ」で映画に初主演する。昨年上演された「宮本武蔵(完全版)」で舞台初主演と着実にキャリアを積み上げる。父親は中日ドラゴンズ、広島カープなどに所属した山田和利氏。現在、TBS・MBS系で放送中のドラマ「3人のパパ」に出演している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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