・FIDEM(国際メダル連盟)が84年目にしてアジア初の国際メダル展を開催

 今日(2021年12月2日)から12月16日まで、FIDEM国際メダル展「FIDEM TOKYO 2020」が東京・目黒のホテル雅叙園東京 「百段階段」で開催される。

 FIDEM国際メダル展は、1937年(昭和12年)にパリで第一回が開催されてから84年続く伝統ある催しで、今回はアジアでの初開催となる。ほぼ隔年で開催され、次回の2023年がイタリア・フィレンツェ、その次は2025年がドイツ・ミュンヘンでの開催が予定されている。日本でこれだけのメダルアートが一堂に展示公開されるのは初めてのことであり、次回はいつになるか判らない。

各国からの作品が並ぶ(撮影・筆者)
各国からの作品が並ぶ(撮影・筆者)

・美術分野の集まりというだけではなく、工芸産業、伝統産業など広く関係

 FIDEM(国際メダル連盟)に所属しているのは世界47カ国のアーティストたちや各国の美術館、博物館、造幣局などで、単に美術分野の集まりというだけではなく、工芸産業、伝統産業など広く関係しているものだ。それだけに業界最大の催しである国際メダル展には、世界から最先端の作品が集まる。

・和の趣向を凝らした会場で、世界から集まった作品を楽しむ

 さて、展示会場となっているホテル雅叙園東京内の「百段階段」は、東京都指定有形文化財で、天井や欄間に豪華な装飾が施された、趣向の異なる7部屋を99段の階段で結ぶ建物。「昭和の竜宮城」とも呼ばれる建物だ。こうした建物の中で、世界37カ国から集まった約850点のアートメダルを見ることができる。

 このFIDEM国際メダル展は、2020年10月に開催が予定されていたものだ。本来は世界メダル会議と国際メダル展が開催され、世界47カ国から参加者が集う非常に華やかなものだ。今回は新型コロナの影響を受け、会議は史上初のオンライン開催となった。新型コロナ感染拡大の影響を受け、訪日を断念した海外からの出展者やアートメダルファンも少なくない。それでも日本側のFIDEM TOKYO 2020実行委員会の尽力で国際メダル展は、一般公開を行っての開催となった。

 柿坪正晴FIDEM TOKYO 2020実行委員長は、「長い歴史の中で、欧米以外の開催は、この東京が初めて。世界のアートメダル関係者にも大きな刺激となり、発展するきっかけとなる」と開会のあいさつで述べた。内覧会には、各国大使館の関係者も数多く参加し、関心の高さをうかわせた。

・アートメダルとは「手のひらにのるアート」

 一般社団法人FIDEM JAPANの山田敏晶代表理事は、「手のひらにのるアートと考えていただくと、これまでのメダルのイメージから広がるだろうと思います。アートメダルには、明確な定義はなく、素材、技法などには特に規制はなく、自由で様々な表現を行うことができます。つまり、”自分が”メダルと思うもの” という魅力があるのです」と言います。一般的には、メダルというと「円形で裏表のある金属の彫刻」をイメージするが、アートメダルはそうした範疇には収まらない。

各国の作品をゆっくりと干渉することができる(撮影・筆者)
各国の作品をゆっくりと干渉することができる(撮影・筆者)

・多種多様な作品に感動

 今日(12月2日)の公開を前に、関係者に展覧会の内覧会が1日に開催された。

 99段の階段の途中にある和の趣向を凝らした部屋に、様々な作品が展示され、独特の空間を生み出している。通常の博物館や展示会場とは異なり、会場そのものが日本の伝統美を生かした歴史的建造物だ。関係者の中からは、「海外からの関係者、来日客に見てもらえなかったのが、本当に残念だ」という声が聞かれたが、日本人から見ても、その斬新な展示方法に感動する。

 世界37カ国から集まった「手のひらにのるアート」は、勲章やオリンピックメダルといった権威の象徴と言える作品から、前衛的な芸術作品や、部屋に飾りたいと思わせる温かみのある作品まで本当に様々で、前知識がなくとも充分に楽しめる展示となっている。

まるで富豪のコレクションルームに迷い込んだようだ(撮影・筆者)
まるで富豪のコレクションルームに迷い込んだようだ(撮影・筆者)

・階段を上がるたびに広がるアートの世界

 今回の展示会が開催されている百階段には、階段を上る途中に6つ、最上段に1つの部屋がある。それぞれの部屋は、異なった和の意匠で作られている。そして、それらの部屋に世界から集められた様々な作品が展示されている。さながら富豪のコレクションルームを見ているような気分になる。

 99段の階段を昇りつめた最上階の展示室では、日本からも独立行政法人造幣局が、職人技と高い技術水準で作り上げた勲章や記念硬貨、2020年東京オリンピック・パラリンピックメダル、国民栄誉賞の楯などを出品している。さらに日本を代表する彫刻家 佐藤忠良氏が制作したメダルやアクセサリーも出品されている。

 同じ展示室には、筑波大学の「TAMP」プロジェクトで同大学附属校の生徒や学生が制作したメダルも展示されている。その中には、同大学附属視覚特別支援学校の目の不自由な生徒たちが作り上げた作品も展示されている。筑波大学の関係者は、「このプロジェクトを始めてから、付属小中高、特別支援校の児童、生徒に加えて、大学生も一緒になり、教育の分野だけではなく、地域や企業との連携にも拡がっています。そして、いったいメダルアートとは、なんだろうとよく私たちも話をするのですよ」と話す。確かに、最上階までの展示を見終わって、階段を降りていく時には、「メダル」に関する考え方が変わってしまうだろう。

筑波大学附属視覚特別支援学校の生徒たちの作品(撮影・筆者)
筑波大学附属視覚特別支援学校の生徒たちの作品(撮影・筆者)

・オンラインで拡大するアート市場

 FIDEM TOKYO 2020に限らず、国際的な催しが中止を余儀なくされたり、オンラインでの開催になるケースが、コロナ禍以降、多くなっている。また、世界経済の不振は、世界のアート市場にも大きな影響を与え、2020年には前年比で約22%減少の約501億ドルにまで縮小したと言われている。

 しかし、一方でオンラインでの売上げは倍増し、実店舗での売り上げを超す史上最大規模の約124億ドルとなっている。

 日本の優れた美術分野を世界に知らしめることは、同時に新たな市場を開拓することにも繋がる。84年間の歴史の中で、初のオンライン開催も行うFIDEM TOKYO 2020は、新しい時代のアート市場の可能性を開こうとしている。素材や手法が自由なアートメダルは、日本の各地にある伝統産業や地場産業との連携も期待される。

東京オリンピック・パラリンピック2020のメダルなども展示されている(撮影・筆者)
東京オリンピック・パラリンピック2020のメダルなども展示されている(撮影・筆者)

・世界的に人気の高まるアートメダルを一堂に

 山田代表理事は、「残念ながら海外から日本に来ていただいての開催は叶いませんでしたが、日本のみなさんにメダルのオリンピックを一般公開することができました。国際が付く美術展は数ありますが、37カ国もの国々から作品を集めての展示は珍しいと思います。また、アートメダルは新しい美術分野として、世界的にも人気が広まっている分野ですので、これを機会に多くの方に見ていただきたいと思います」と話す。

 日本の造幣局は、2007年以降、世界の10か国14種類の外国貨幣を製造するなど高い技術が評価されている。今後、こうした精度の高い加工技術や偽造防止技術が新たな産業に結び付く可能性も高い。一方では、芸術的な面でも新たな市場を生み出す可能性のあるアーティストが日本でも生まれつつある。衰退や沈滞が指摘される日本の伝統産業や地場産業にとっても新しい可能性を秘めている分野だとも言える。

 新しいアートの動き、そしてオンラインでの挑戦。歴史ある和の建物に展示された日本と世界のメダルアートは、ポストコロナを象徴するもう一つの東京オリンピックと言えそうだ。単なる美術品の展示会というだけでは終わりそうにない。

FIDEM TOKYO 2020 国際メダル展

<2021年12月2日(木) - 12月16日(木)>

11:30 – 18:00(最終入館17:30)

※金・土曜日は20:00(最終入館19:30)

■会場

ホテル雅叙園東京内

東京都指定有形文化財「百段階段」

■入館料(消費税込)

一般 1,000円

学生(大学生~小学生) 500円

国際メダル展 FIDEM TOKYO 2020公式ホームページ

※画像撮影にあたってはFIDEM TOKYO 2020実行委員会を特別の許可をいただきました。