・「一見さんお断り」と書かれたポスター

 1月になって話題になったのは、御殿場市で起きた「一見さんお断り」問題です。1月13日までに御殿場市役所が飲食店約200店に「一見さんお断り」と書かれたポスターを配布したことが批判を呼びました。

 このポスターの配布と掲出が、思わぬ反響を呼んでしまったのです。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、地元の飲食店経営者や自治体職員にとっては、やむを得ない判断であったのでしょうが、課題もいくつかあるようです。

・「言葉が強くないですか」

 「京都は、一見さんお断りの本場みたいに言われていますし、実際、そういうお店も多いですが、それをそのまま書いて貼っている店はあんまり見たことないですね。」京都のある飲食店の経営者は、言います。「多いのは会員制や予約制という表示ですかねえ。本格的になると、もともと看板とかも出していないですかねえ。」問題の一つは、この「一見さん」という言葉の使い方にもありそうです。

 首都圏で飲食店を持つ経営者も、「この状態ですから、県外のお客様は御遠慮くださいでも良いでしょうし、予約のみにしても良かったのではないでしょうかね。一見さんお断りって、言葉が強くないですか」と言います。

 別の飲食店経営者は、「昔からバーとかスナックとかでは、入口に会員制って掲示している店が多いんです。それを理由に断れるからで、実際は一見でも入れるんですよ。無用なトラブルを避けられます」と笑います。「テーブルやカウンターの上に、予約席という表示を置いておくことも、同じです。そうすると、さっき電話があって、すみませんと断れるでしょ。」

・地元外の客というのと、一見客というのとは、意味が違う

 実は、当初、ポスターには1月8日から発出された緊急事態宣言に合わせて、「主に該当地域からお越しのお客様等、一見さんお断りとさせていただいております。緊急事態宣言が解除された折には、皆様のお越しを、心よりお待ちしております。」と掲載されていました。

 首都圏の飲食店経営者は、「地元外の客というのと、一見客というのとは、意味が違うと思うのですがね。私たちの店もそうですが、遠方のお住まいだけれど常連の方もいますし、地元でも初めてのお客様もいますよね」と疑問を呈しました。

・ネット時代の問題

 もう一つの課題は、ネット時代だということです。「地元の飲食店にこうしたポスターを貼った程度のことは、以前なら話題にも上らなかったでしょう。」中小企業の経営に詳しいコンサルタントの一人は、そう指摘します。「今回も、地元からというよりも市外の人たちからの批判が多いようです。はっきり言って、批判している人たちは、一見客お断りでも関係のない人がほとんどではないでしょうか。」

 一方でこうした指摘もする。「地元向けのポスターだとしても、ネットに掲載されたりして、すぐに拡散する。拡散するということを前提に、文章やイラストなどにも外部の視線を考慮することが必要です。」

 ネット時代になり、地方からも簡単に情報を発信できるようになったが、そのことが思いもよらぬハレーションを引き起こす可能性も高くなりました。それだけに言葉の選択なども、より重要になっていると言えます。

・8割の人が飲食店を応援したい

 株式会社ROI「ファンくる」が12月に実施した「2021年度の新年会についての意識調査」(有効回答数931名)によれば、コロナ禍で飲食店を応援したい人が79%、お店に行って応援したいと思う人が60%となっています。

 このように多くの人が飲食店を支援したいと考えています。しかし、一方で新型コロナウイルス感染拡大によって、飲食店側は営業時間の短縮や予約客に限定するなどという措置を取らざるを得なくなっているケースも出ています。御殿場市のように地域外の客の受け入れを制限するということを選択する場合も出ています。

 飲食店によって、客層も、状況も異なるため、その対策も様々です。そうしたことも考慮に入れ、客側もそれぞれに合った支援をしていくべきでしょう。

 「一見さんお断り」も飲食店の困惑の中からのものです。言葉の選択を慎重にすることも大切ですが、一方で、批判もあるでしょうが客側も冷静な反応をしていくべきでしょう。今、危機的な状況であることは間違いありません。私たちの中の無用な対立や分断は、コロナ禍からの復興を遅らせるだけだからです。

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