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日本のパスポートは世界最強 中国は66位 世界の信用度の差が歴然か

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

1月10日、英国のコンサルタント会社、ヘンリー&パートナーズは、ビザ(査証)なし渡航できる都市が最も多い国・地域ランキング(パスポートインデックス)を発表した。

その結果、日本は5年連続で第1位となったことが明らかになった。

日本は1位、中国は66位

これは国際航空運送協会(IATA)のデータをもとに、199ヵ国・地域のパスポート(旅券)を比較・集計したもの。第1位の日本は、世界227都市のうち193都市にビザなしで渡航することができる。

以下、2位は韓国とシンガポール(192都市)、3位はドイツとスペイン(190都市)、4位はフィンランドとイタリア(189都市)だった。

6位はイギリス(187都市)、7位はアメリカ(186都市)の順。アジアで日本、韓国に次いで多かったのはマレーシアで14位(179都市)だった。

一方、日本の新型コロナの水際対策強化などを受け、日本から中国に渡航するビザの発給を一時停止したことを10日に発表した中国は66位(80都市)だった。

日本人は主要都市を始め、世界の多くの国・地域に渡航するのに(観光)ビザなしで行けるのに対し、中国人は多くの国・地域に(観光)ビザなしで渡航することができない。

コロナ禍の前、「爆買い」が話題になった中国は、急激な経済成長を追い風に、2015年頃から世界中を旅行するようになったが、中国人の海外旅行には、常にビザがつきものだった。

ビザとはその国の信用度

ビザとは、簡単にいえば、その国・地域に入国しようとする人を事前に判断する「身元調査」のようなものであり、その人が入国しても問題ないという証拠、お墨付きのことだ。

66位だった中国は、GDP第2位の経済大国であるのにもかかわらず、海外ではまだ大きな信用度、信用力がないことが、図らずも今回の調査結果に現れたことになる。

中国人がビザなし渡航できるのは、アフリカや中東、中南米、太平洋の島国、アジアの一部などが中心で、たとえばモロッコ、チュニジア、ハイチ、サモア、トンガ、バーレーン、アラブ首長国連邦、ミャンマー、カンボジアなどだ。

アメリカ、日本、イギリス、フランスなど世界の主要国・地域に渡航するのにはビザが必要で、しかも、渡航先によっては、あらかじめ申請した旅行日数分(滞在日数分)だけしかビザが発給されない場合もあるという、非常に厳しいものだ。

そのため、今回、中国側がとった対抗措置でも、中国から見れば、ビザ停止というカードは強力な措置といえるかもしれないが、日本人からすると、必ずしもそうとはいえない。

むろん、日本政府が中国の措置の撤廃を求めたことは当然だし、このような措置は遺憾だが、一般的に考えて、感染爆発している今の中国に、現段階で新しくビザ(この場合、就労ビザや留学ビザなどが想定される)を申請・取得して渡航しようという人は、もともと多くないと思われるからだ。

中国の日系企業の人事異動に伴う移動や家族の訪問、往来など、中国の隔離がなくなったことにより渡航を計画していた人にとっては、もちろん影響があるだろう。

だが、現状では、多くの日本企業が中国への駐在員や出張者の渡航を自粛、ストップさせている状態であるため、当面、大きな問題はないだろうと考えられる。

中国が対抗措置を発表してすぐ、このような世界のパスポートランキングの発表があったことは皮肉なことだが、逆にいえばそれだけ、中国にとって、お金があっても得にくいものは、世界から信用されることなのかもしれない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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