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「1人前は半個」「ベッドの下に10個以上はあった」中国人が語るスイカの思い出あるある

中島恵ジャーナリスト
上海のスーパーで見かけたスイカ(筆者撮影)

夏の果物の代表といえばスイカ。昨今、日本では4分の1サイズや、一口大にカットしたパックを買う人が多いが、かつてお盆休みなどで家族や親戚が集まると、台所の桶や風呂場のたらいなどに水を張り、冷たく冷やして食べたものだった。

中国はスイカ生産量、世界一。世界のスイカの半分以上は中国産というスイカ大国だ。中国人に「スイカの思い出」をたずねてみると、日本とはスケールが異なることに驚かされる。中国人にとって「スイカの思い出あるある」とは?

ベッドの下にスイカがゴロゴロ

「私が子どもの頃、スイカは1個1元(約20円)以下でした。夏になると、スイカは道端やトラックの荷台などで大量に販売しているので、一度に20個くらい買ってくる。麻袋などに入れ、涼しいベッドの下に保管しておくんですよ。

それを毎日コンコンと叩き、食べ頃なのを1~2個選んで、冷やして食べる。それが私の夏の思い出です」

こう語ってくれたのは内陸部出身の40代の中国人だ。この人によれば、どの家庭でもスイカを常備しておき、子どもたちも、半分にカットしたスイカをそのままスプーンですくって食べていたという。

上海在住の50代の女性も「私たちにとってスイカは1個や2個で買うものではなかったんですよ。家にはいつもスイカがゴロゴロ転がっていました。

水分補給のため、しょっちゅう食べていましたね。もちろん、1人前は真っ二つに割った半個です。数センチに薄くカットしたスイカなんて、数年前まで見たこともありませんでした」と話す。

10個以上まとめて買うのが普通

今でも農村に行けば、道端でスイカの臨時販売が行われ、どこででもスイカは買える。農村では今も5元~10元(約100円~200円)と格安のことも多く、最低でも「10個買い」が一般的。昔と同じようにベッドの下や台所に転がしておくという。

上海の小売店で。都市部では半分サイズで買うことも(筆者撮影)
上海の小売店で。都市部では半分サイズで買うことも(筆者撮影)

しかし、北京や上海などの大都市のマンションでは、さすがに昔ながらの風景はもう見かけなくなったという。

「スイカは好きなので今でもよく買うのですが、1個まるごと買うことは少なくなりました。冷蔵庫にも入りませんし……。

果物専門店に行くと、今でもだいたい20~30個、スイカがずらっと並べられているので、それらをコンコン叩いて吟味するのです。店員も『これが食べごろだよ』なんて教えてくれます。最近では、その場で半分にカットすることにも快く応じてくれますね。

中国では野菜や果物は基本的に量り売りのことが多いので、スイカの値段は大きさによって1個1個違うんですが、1個だと最低でも50元(約1000円)以上はします。

最近流行りの箱入りのブランドスイカだと80元(約1600円)以上することもあって『これがスイカの値段なのか!』と驚きます」(同じく上海在住の女性)

1人前、半個は過去の思い出?

筆者も見かけたことがあるが、スイカの値段はここ数年、急騰している。外資系のスーパーなどでは、日本のように2センチくらいの厚さにスライスしたスイカが数切れパックに入って20元(約400円)以上することもあり、「まるで日本みたいだ」と感じることも増えた。

物価が上がり、スイカ以外にもおいしい果物が豊富にある今、中国人とスイカのつき合い方も変わってきたようだ。

日本でも「たらいに水を張ってスイカを冷やした夏の思い出」が過去のものとなっているように、中国でも都会の若者は「スイカは1人前、半個」という豪快な経験はもうあまりできないのかもしれない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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