10月18日、ソニー中国が北京市朝陽区の市場監督管理局から100万元(約1770万円)の罰金を科されていたことがわかった。

これは今年6月末、ソニー中国が7月7日に新製品(カメラ)を発表するという広告をネット上に掲載したことに端を発する。中国でこのネット広告を見た人々から批判が殺到したことを受け、同社は7月1日に広告を削除し、不適切だったとして微博(ウェイボー)上で謝罪していた。

なぜ、新製品の発表に批判が殺到したのか。それは発表日(7月7日)が「中国にとって特別な日」であるからだ。

なぜ批判が殺到したのか

7月7日は日中戦争の発端となった盧溝橋事件(1937年7月7日)が始まった日だ。日本でこの日が話題に上ることはほとんどないが、中国ではこの日を記憶している人が少なくない。

ただ、通常ならば、「その日」を何事もなく過ごす年もあり、毎年この日に必ず何かが起こる、というわけではない。しかし、今年は様子が違っている。

8月に大連の「盛唐・小京都」(京都の街並みを再現した大型プロジェクト)が、営業開始からわずか1週間で休止に追い込まれたという一件からもわかる通り、今、日中を取り巻く“空気”は決して平穏なものではない。

そうした昨今の風潮や、中国の若者の間に広がっている愛国的な言動などもあり、中国のSNS上では「なぜ、よりによってこんな特別な日に新製品を発表するのか?」「日本が過去を反省していない証拠だ」などといった厳しい書き込みが殺到したのだ。

そうしたことを受けてソニー中国は謝罪に追い込まれ、北京市も同社に罰金を科すことによって、この問題を抑え込もうとしたのだといえる。

このような問題は日本企業にとって典型的な「中国リスク」の一つだといえるが、それにしてもなぜ、ソニー中国はこのような致命的なミスを犯してしまったのか。

中国に進出している日系企業ならば、企業規模の大小に関わらず、このようなことが起こる可能性(リスク)があることは、当然知っているはずであり、初歩的な問題だからだ。

忘れてはならない日

中国の日系企業にとって、開店イベントや工場の竣工式、新製品の発表などの行事を避けるべき日は1年に6日あるというのは、中国ビジネスに関わる人であれば常識だ。

それは5月4日(五四運動が起きた日)、7月7日(盧溝橋事件が起きた日)、8月15日、9月3日(抗日戦争勝利記念日)、9月18日(柳条湖事件が起きた日)、12月13日(南京事件が起きた日)だ。

これ以外に、6月4日(天安門事件が起きた日)や7月1日(中国共産党が成立した日)などを挙げる場合もある。

ほかに春節、国慶節などの大型連休も避けるし、地方都市によっては、別の日が“敏感な日”に挙げられることもある。

これらの情報は中国進出企業の関係者にとって、もちろん「イロハのイ」であって皆、知っている。中国進出のコンサルタントから教えられることもあるし、在中ビジネスマンのブログ、中国の日本大使館の公式サイトなどにも書かれている。

むろん、中国の日系企業で働く中国人社員も知っている。何かの発表会や行事を行う際は、地元政府の関係者を式典に招待することもあり、地元政府との日程調整などもあるため、間には必ず中国人社員が入る。

そのため、通常のコミュニケーションができている状態であれば、今回、ソニー中国がウェイボーで謝罪したような「日程の選択で皆さまに誤解と迷惑をおかけした」ということはあり得ないのだ。

それなのに、ソニー中国でこのような致命的なミスが起きてしまったことは、非常に不思議としかいいようがない。

日本の中に「中国側はいつまでそんなことをいっているのか」という意見もあることは理解できるが、中国は日本ではなく「外国」だ。

外国である中国に法人を置き、そこでビジネスを展開する以上、事前に、その“リスクの種”をできる限り取り除いておくことは、企業として必要不可欠なことだといえる。