ワールドマスターズゲームズ2021関西 硬式野球アジアエキシビションに女子野球レジェンドが参加

往年の野球ファンも多く集まるPRイベントに女子選手は目を引く存在だった

桑田真澄さん率いる日本選抜が試合

 東京五輪翌年の2021年に、一般アスリートたちの祭典が日本で開催されます。『ワールドマスターズゲームズ2021関西』(以下、WMG2021関西)です。そのPRイベント、硬式野球アジアエキシビションが、三木総合防災公園野球場(兵庫県三木市)で11月30日に開催されました。

PL学園OBチームとして今年のマスターズ甲子園にも出場した桑田真澄さん
PL学園OBチームとして今年のマスターズ甲子園にも出場した桑田真澄さん

 対戦カードは、日本マスターズ選抜対海外マスターズ選抜。

 WMG2021関西のアンバサダーを務める桑田真澄さん率いる日本マスターズ選抜に対し、海外マスターズ選抜はWMG2017オークランド大会アンバサダーを務めた元千葉ロッテの清水直行さん(監督兼選手)をはじめ、ネパール、インドネシア、スリランカ、タイ、フィリピンの元ナショナルチーム選手たちの混成チームです。※男子選手は、マスターズ甲子園のからみで、全員、母校野球部のユニフォームを着てのプレーでした。

 日本マスターズ選抜には他にも、駒田徳広さん(元巨人ほか)や尾崎匡哉さん(元日本ハム)など、そうそうたるメンバーが参加。その中に、2人の女子選手の姿がありました。元女子プロ野球選手、川保麻弥さんと川端友紀さんです。

川保麻弥さん(左)と川端友紀さん(和歌山Regina提供)
川保麻弥さん(左)と川端友紀さん(和歌山Regina提供)

そもそもワールドマスターズゲームズとは?

 ワールドマスターズゲームズは、概ね30歳以上なら誰でも参加できる、世界最大の生涯スポーツの国際総合競技大会です。1985年にカナダのトロントで第1回大会が開催され、以来、4年ごとにデンマーク、オーストラリア、アメリカなど世界各地で行われ、延べ17万人のスポーツ愛好家が参加してきました。

 2021年の第10回大会は、アジア初の日本開催で、関西を中心に35競技59種目(19年7月現在)が行われます。

 今回の対戦カードは、初のアジア開催でありながら、これまでアジア圏からの参加者が少なかったことから、大会認知を上げる目的でアジア選抜チームとの対戦が企画されました。

エキシビションマッチ参加女子選手の顔

 川保麻弥さんと川端友紀さんといえば、女子球界のレジェンドとも言える人です。

彼女たちは、元女子プロ野球選手。川保麻弥さんは、まだまだ女子が野球をすることが珍しい時代から野球を始めた、まさに日本女子球界パイオニアの一人です。高校時代から日本代表に選ばれるほどの素質の持ち主で、2010年~13年にプロ第一期生として在籍していました。

プロ一年目に最多打点や最多盗塁阻止率を上げるなど、初代MVPに選ばれる活躍を見せ、現役引退後は監督も務めるなど、プロ選手の育成に携わってきました。

 

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現在は、和歌山県田辺市でアマチュアのクラブチームを立ち上げ、監督として中学生から社会人まで幅広い世代の女性へ指導し、女子野球の裾野を広げるべく、日々奮闘しています。

 川保さんより5つ年下の川端友紀さんは、同じくプロ第一期生。2010年~18年のプロ在籍中には何度も首位打者をとる活躍を見せ、国際大会出場の日本代表に何度も選出された実績の持ち主でもあります。プロ時代に彼女が付けていた背番号23は、永久欠番になっています。

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今季から企業チームのエイジェックに所属し、コーチ兼任選手としてアマチュア界で現役を続けています。

そんな女子球界のレジェンド二人は、WMG2021関西にエントリーすることを決めています。

レジェンド女子、試合を大いに楽しみ、そして大活躍

 試合は、10対8と日本選抜の逆転勝利でした。

 6点ビハインドで迎えた5回裏に日本選抜がホームランなどで同点に追いつき、6回裏には2点を追加し勝ち越すとそのまま勝利しました。

 急きょ集まったメンバーとはいえ、そこは30歳以上の熟練者たち。劣勢に立たされたとしても、勝利するムードの作り方を知っています。

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ファインプレーにはみんなが手を上げて拍手を送り、ベンチに戻る時はハイタッチを交わし、得点すればベンチから飛び出し全身で喜び合うなど、常に盛り上がりチームワークはバッチリ。真剣勝負の中にも楽しめるのは、WMGだからこそかもしれません。

 そんな中、川保麻弥さんは3打数1安打、川端友紀さんは鋭いスイングで3打数2安打と、共に得点にからむ活躍。川端さんが打席に立てば「さあ、友紀、1本!」、川保さんには「(スイングを)もっと豪快に、もっと豪快に!」といった声がベンチから飛ぶほど、すっかり溶け込んでいました。途中、本職のキャッチャーとは違い、不慣れなサードに打球をはじいてしまった川保さんに対し、ベンチから相手打者へ「もう1本、サード方向へ打ってやってください!」といじられる、というシーンもあったほどです。

 彼女たちは、どこかじっくりと野球を味わっているようにも見え、何より二人の笑顔がずっと輝いたのが印象的でした。

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『30歳の壁なんてない』。それを私たちが証明したい

 閉会式を終えた後、川保さん、川端さんに参加した感想を聞きました。

 打席に入る前に桑田さんから「追い込まれるまでは自分のスイングをしたらいいけれど、追い込まれたらスイングをコンパクトに、ショート、セカンドにゴロを打つ意識で」というアドバイスを受けたという川保さんは、「とても勉強になりました」と話し(この打席でライト前ヒットを放ちました)、川端さんは「今日を心待ちにしていました。

桑田さんからバッティングのアドバイスを受ける川保さん。この後、見事ライト前にヒットを放った
桑田さんからバッティングのアドバイスを受ける川保さん。この後、見事ライト前にヒットを放った

男女関係なく、しかも元プロの方々とプレーするという貴重な経験ができて楽しかったです」と笑顔でした。

 毎年、高校に女子硬式野球部が増えていることなどを見ると、女子野球の存在が世間的に広がりつつあるのがわかりますが、それでも女子球界はまだ発展途上だといえるでしょう。2人がこういう場でプレーする姿を見せることは、後輩たちの将来に選択肢増やすことになるはずです。

 WMG2021関西参加を決めた理由について、川保さんはこう話します。「私は現役を引退して監督になっているけれど、一度指導者になってからでもまだやれることを見せたかったし、友紀のような30歳を越えてもこんなに素晴らしい選手がいることを、大会を通じて伝えていきたいと思ったのです。実際、今日の友紀を見たら、プロ時代よりも送球が上手くなってるし(笑)」

センター前と三遊間を抜くヒットと二安打を放ち、守備はもとより打撃のセンスを見せつけた川端さん
センター前と三遊間を抜くヒットと二安打を放ち、守備はもとより打撃のセンスを見せつけた川端さん

 また、“女子野球は、30歳を越えたら終わり”、というイメージを持たれているのを肌で感じているといい、「まだこんなにもできる、むしろ、まだこれからだということを証明したい」のだと意気込みを語ってくれました。「もちろん、これからもっとトレーニング積んで、体が動くようにしていきます」

 川端さんは、3年前から川保さんにWMGへの出場を誘われていたそうで、「今日でまた新たに多くの方に女子野球を知ってもらえたと思うので、それが一番です」と、今回のPRイベント試合参加の意義を話しました。

 2人が揃って同じグランドに立つのは、川保さんがプロ選手最後のシーズンである2013年以来のこと。川保さんは「まさか、また友紀と一緒にプレーできる日が来るとは。嬉しいです、本当に」としみじみ。

年月を経てまた一緒にプレーできる喜びが味わえるのは、ベテランの域まで頑張ったからこそ。彼女たちの笑顔が輝いていたのは、これが一番の理由かもしれません。

桑田真澄さんと長らく談笑

 試合前、桑田さんと長い時間話し込んでいた川保さんと川端さん。話題は女子野球の展望だったそうで、「桑田さんは、女子球界のことに関心が高くて。『これからもっともっと底辺を広げて、サッカー界のようなピラミッド組織にしていくことが大事』ということとか、『君たちがこれから指導者を経て、やがて結婚して子供を産んだ後も、子どもとキャッチボールができるというような、長く野球ができる環境を作っていってね』ということを言ってもらった」(川保さん)といいます。

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 「桑田さんからこのような話が聞けて有意義でした。そういう意味でも、今日、参加した甲斐がありました」とも話しました。 

この日の試合前後は、グランド内で敵味方なく選手同士、思い思いに語り合い、記念撮影をするなど交流していました。海外選抜チームの選手たちから「女の子でも野球するんだね」と話しかけられたり、「日本には女子プロ野球もあるの?!」と驚かれたりしたそうで、川端さん曰く「女子野球W杯とはまた違った国の人たちとの交流ができたことで視野が広がった」と、WMG 本番が楽しみな様子。日本だけでなく、まだ女子野球が存在しない海外の国々へ女子野球の輪が広がれば良いと、彼女たちは話します。

WMG2021関西が女子野球の新たな可能性の扉を開く?!

 WMG2021 関西のエントリーは、来年2月に受付開始です。

 川保さん、川端さんはどのようなメンバー構成のチームで出るのか、女子チームなのか、男女混成チームなのかなど、どのような形でエントリーするのかはまだ決まっていませんが、彼女たちが出場することで、女子球界の新たな扉が開くことは間違いなさそうです。

(注釈入り写真以外の写真は全て筆者が撮影)

試合後は全選手や審判、運営スタッフ全員で記念撮影
試合後は全選手や審判、運営スタッフ全員で記念撮影