囲碁を愛する文化人は多い。宝塚ホテルで行われた第44期囲碁名人戦第3局の前夜祭に、放送作家・小説家の百田尚樹氏がやってきた。主催の朝日新聞社の招待に応じたのだ。百田氏は囲碁愛好家でアマ高段者としても知られる。

愛棋家の百田尚樹氏

「19歳の名人が誕生するか」と注目されている第44期囲碁名人戦七番勝負。第3局が兵庫県宝塚市「宝塚ホテル」にて9月25、26日に打たれた。

それに先だって24日に行われた前夜祭に、百田尚樹氏は主催の朝日新聞社に招待されて参加された。百田氏は大の囲碁ファンで、アマ六段の実力者だ。

以前にも朝日新聞社主催の囲碁名人就位式で、名人となった井山裕太四冠に百田氏は祝辞を述べている。

井山裕太四冠の名人就位式で祝辞を述べる百田氏=2013年12月6日、筆者撮影
井山裕太四冠の名人就位式で祝辞を述べる百田氏=2013年12月6日、筆者撮影

井山四冠が最初の七冠を達成するシリーズでは、産経新聞紙上に観戦記も載せるなど、囲碁界とも深いつながりがあるのだ。

江戸時代の囲碁棋士を描いた作品、「幻庵」(文藝春秋、2016年)もあり、読んだかたも多いと思う。

作家と囲碁

文筆家の囲碁ファンは多く、作品も多い。

川端康成は囲碁棋士との交流も多く、世襲制の最後の本因坊の引退試合の観戦記を小説にした「名人」を残している。

遠藤周作、夏樹静子や江崎誠致の囲碁好きも有名だ。

囲碁を扱った作品として、内田康夫の「本因坊殺人事件」、最近では水原秀策の「黒と白の殺意」、竹本健治の「囲碁殺人事件」などがある。新井素子は囲碁エッセイ「素子の碁-サルスベリがとまらない」で囲碁の魅力を語っている。

こうしてみると、推理作家、ミステリー作家の多いことに気づく。

将棋と違い、囲碁は何もない盤面に石を打って、自分を表現していく。自由に創造してくところに、芸術家との共通項があるのかもしれない。

「囲碁を愛するものどうし……」

百田氏の愛棋家ぶりは筋金入りだ。息子さんに、江戸から明治期に活躍した囲碁名人の名前をつけるほど。ちなみに、その息子さんはプロを目指して修業した経験もあり、前夜祭では修業時代の仲間との旧交を温めていた。

囲碁関係のパーティで百田氏が顔を見せることは珍しくなく、参加していた囲碁ファンもとくに騒ぐことも注目することもなかった。

囲碁担当記者が百田氏に声をかけて立ち話が始まった。

「朝日はけしからん」と百田氏が持論を展開する場面もあったが、記者の「囲碁を愛するものどうし、囲碁を盛り上げていきましょう」という記者の言葉で和やかに終えた。