「ゲームプランを変えた」サンウルブズ、2勝目を挙げて今季を終了!

ファンの前で、満面の笑顔で勝利の記念撮影に応じるサンウルブズの選手たち(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

「終わり良ければすべて良し」でいいのか?

まるで「オセロ」のようなゲームだった。

19―21で迎えた後半16分に、ブルーズの途中出場したFLジェローム・カイノがハイタックルでイエローカードを受け10分間の一時的退場となったのを境に、ゲームの流れは一気にサンウルブズに傾いた。

以後は、すべてのプレー選択が想定以上に上手くいき、試合終了までの残り時間に5トライを奪って48―21と大逆転。昨年のスーパーラグビー参戦以来初めてとなる勝ちゲームでのボーナスポイントを獲得し、全体の順位も昨年の最下位を脱出して17位とアップ。秩父宮ラグビー場に詰めかけた観客を熱狂させた。

熱中症に対する厳重警戒が呼びかけられる環境下でのゲームは、両チームにとって非常に厳しいコンディションだったが、前半終盤から足が止まり始めたのは、その時点でリードしていたブルーズだった。そして、後半18分にサンウルブズにモールを押し込まれ、ペナルティトライを献上すると、真冬のニュージーランドから来たチームは明らかに集中力が低下。パスミスや、コミュニケーションのミスが相次ぎ、さらにはボールのバウンドまでがサンウルブズに有利に働いた。

これまで、前半から健闘しながら終盤にささいなミスから逆転を許し、そこから一気に点差を開けられるパターンに苦しんできたサンウルブズは、この試合ではまったく逆にあらゆる状況が有利に働いて次々とトライを重ねた。

本当に、ゲームの終盤で白と黒の駒が一気にひっくり返るオセロを思わせるゲームだった。

ブルーズのジェームズ・パーソンズ主将は「暑さを含めたコンディションを言い訳にすることはしない」と言明。悔しさをこらえて、「試合に臨む準備や姿勢でサンウルブズが上回っていた」と潔く勝者を誉め称えた。が、実際のところは暑さの影響が非常に大きかった。

一方、サンウルブズのフィロ・ティアティア ヘッドコーチ(HC)は、「確固たるゲームプランがあったからこそ、今日は運が我々に傾いた」と胸を張った。

ホームで迎えた最終戦を劇的な形で勝ったHCが胸を張るのは当然だが、それでもサンウルブズが、この勝利でようやく最下位脱出を果たしたという事実も忘れてはならない。

つまり、この勝利で「終わり良ければすべて良し」と総括しては、19年W杯への日本代表強化という点で方向性を見誤る。

最終戦を勝利で終えた今季は、どんなシーズンだったのか。

求められるのは、冷静な検証である。

ゲームプランを修正して臨んだサンウルブズ

試合後の記者会見冒頭に、ティアティアHCはこう言った。

「この3週間で少しゲームプランに変化を加えた。それを選手たちにクリアに落とし込むことができた。また、そのスタイルによって、今日は素晴らしいトライが生まれたのだと思う」

どんな変化だったのか。

田邉淳コーチは、こう説明する。

「それほど大きくプランを変えたわけではありませんが、サンウルブズのスタイルをもう少し貫きたいという思いがあった。どのチームも、我々に対してボールをキープしてくることがスタッツに表れていますが、そういう相手にボールを与えれば与えるほど失点の確率は高くなる。だから、本当に必要なとき以外はボールを蹴らないで、ボールをキープしてゲームを進めようというプランにしたのが、プラスに働いたと思っています」

つまり、昨季のボールを継続するスタイルを大切にして、今季から加えられたキックという戦術を見直し、吟味した結果が、この日のスタイルだった、というのだ。

そして、サンウルブズが日本代表強化を目的に結成されたチームであることを踏まえて、田邉コーチは、さらにこう続けた。

「長い目で見れば有意義な1年間だったし、ティム(=ティモシー・ラファエレ)や松橋(周平)という有望株が出てきたのは非常にプラスだった。サンウルブズが代表の助けになっていると思います。ただ、今日の試合やブルズ戦(4月8日 21―20で勝利)をもう一度細かく分析して、こういうキックが良かった、こういうキックは良くなかった、ここはキープすべきだった、と絞り込めれば、11月のジャパンや来季に向けてのいい資料になると思います。その点で、もう一度、コーチとしてシーズンを通して試合をレビューして、どういう試合が本当にいい試合だったのかを、勝った試合、負けた試合を含めて振り返りたいですね」

ラグビーでは、プレーの選択に関して「表」と「裏」という考え方をする。

たとえば、パスとコンタクトを繰返してフェイズを重ねるプレーを「表」とすれば、それに備えた相手防御の背後にキックを転がすプレーは「裏」ということになる。

サンウルブズやジャパンには、15年W杯でジャパンが見せた徹底的にフェイズを重ねてアタックするイメージが強烈にあるので、こうしたフェイズプレーが、相手側から見て「表」のプレーとなる。当然、対戦相手は防御ラインを押し上げてスペースを埋めるから、防御ラインの背後にスペースが生まれてキックが有効となるわけだが、今春は、サンウルブズでもジャパンでも、最初から「裏」のキッキング・ゲームを多用したので、「表」「裏」という選択肢で相手を迷わせることができなかった。

対戦相手にすれば、一番警戒すべきフェイズプレーの最中にボールを蹴ってくれる上に、戦術に取り組み始めたばかりでキックを追う精度が悪かったから、比較的簡単にボールを獲得することができた。その結果、サンウルブズもジャパンも、しばしば相手が待ち構えたところにボールを蹴り込んでカウンターアタックの餌食となった。

ブルーズ戦では、前半からサンウルブズがフェイズプレーを多用し、前半終了直前の内田啓介のトライのような、相手がもっとも警戒する形でのトライが生まれた。だから、背後にスペースができた。しかも、あまりの高温に運動量が落ちて、後半は背後に蹴られると多くの選手が戻りの防御に走れなくなった。

「本当に必要なとき以外はボールを蹴らない」ことが最大の効果を発揮したのは、こうした要因がいくつも重なった結果だったのである。

誰がヘッドコーチを査定・評価するのか?

田邉コーチも、ティアティアHCもシーズン終了に際して、「レビュー(振り返り)」という言葉を何度も繰返した。

しかし、チームのなかでレビューが行なわれるのは当然としても、では、そもそもの話、キッキング・ゲームを指示したジェイミー・ジョセフ日本代表HCの判断は正しかったのか。

あるいは、ローテーション制を導入したために、「ツアーの1試合目、2試合目になかなか結果が出なくて、3試合目、4試合目で歯車があってきて、いいラグビーができた」(田邉コーチ)にもかかわらず、そのチームをまた入れ替えて、たとえばホームのチーターズ戦(5月27日)で大敗(7―47)したような采配が、果たして正しかったのか。

実際、秩父宮で行なわれた4試合の観客数は、開幕戦の1万7千553人から、ブルズ戦1万2千940人、チーターズ戦1万2千898人、そしてブルーズ戦の1万2千543人と減り続けている。

そして、1勝2敗に終わったテストマッチ3試合の総括も含めれば、果たして「チームジャパン2019総監督」ジョセフHCの評価はどうなるのか。

たとえば、今春のサンウルブズとジャパンを、さまざまな数値から分析してその長所と短所を洗い出し、結果として残った勝敗が妥当なものであったのか、それとも選手のポテンシャルを十分に引き出せなかった結果だったのか、といった分析・評価を担う専門家集団が組織のなかに存在していれば、「総監督」も常に緊張感を持って強化にあたることになる。

現状は、そうした評価システムが明確に存在しないために、ジョセフHCに全権が与えられている。組織の浮沈を賭けた重要なミッションを達成するために、強大な権限を与えた人間を、誰も評価・査定しないのは、そもそも組織のあり方として不思議である。

サンウルブズのシーズンが終了し、春の強化が一段落した今、チーム内で次の一歩のためのレビューが始まるのと同じように、首脳陣へのレビューもまた、必要ではないか。

それが、W杯開催を2年後に控えたホスト協会が、今すぐ取り組める前向きな一歩である。