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「飛ばないボール」で本塁打42%減の韓国 東京オリンピック4番候補の対策とは?

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
韓国の主砲パク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)

前年比42.3%減。

これは韓国KBOリーグの昨季とその前年2018年の本塁打数を比較したものだ。

2018年には全10球団720試合で1756本だったホームランの数が、昨年2019年は1014本に減少。1試合平均で2.44本から1.41本と約1本減ったことになる。

昨季の本塁打王はパク・ピョンホ(キウム)。自身5度目のタイトル獲得だったが、その本数は過去の平均42.3本(本塁打王獲得年)に対し、昨季は33本だった。

キャンプでのフリー打撃で快音を響かせるパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)
キャンプでのフリー打撃で快音を響かせるパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)

リーグ全体、そして韓国を代表する一発男に影響を与えたもの、それは「飛ばないボール」の導入だ。

KBOリーグはそれまでの極端に打者が有利な状況、いわゆる「打高投低」解消のため、昨季から試合球の反発係数の基準値を下げた。その数値は「0.4134から0.4374の間」から「0.4034以上、0.4234以下」に。ちなみにNPBは「0.4134」を目標値としている。

台湾・高雄での春季キャンプに参加しているパク・ピョンホは昨季を振り返り、ボールの違いを大きく感じていた。

「すべての部門で数値が落ちた。僕だけではなくパワーのあるバッターはみんな感じたと思う。力だけでは打球がフェンスを越えなくなりました」

昨季のパク・ピョンホは打率2割8分、33本塁打、98打点。18年は打率3割4分5厘、43本塁打、112打点だった。パク・ピョンホが「すべての部門」と言う通り、リーグの平均打率も2割8分6厘から2割6分7厘と2分近く減少している。

ブルペンで投手の投球にタイミングを合わせるパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)
ブルペンで投手の投球にタイミングを合わせるパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)

パク・ピョンホは飛ばないボールの対策として、このキャンプで取り組んでいるのがミートポイントを前に置くことだ。

「本当にわずかな差ですが、前(投手寄り)で打つようにしています。これまでの前の肘を曲げてスイングする打ち方ではなくて、体の重心を活用した打ち方に変えています」

パク・ピョンホは2016、17年とメジャー、マイナーリーグでプレーした。アメリカで主流とされる後ろに置くミートポイントから、今季は少し前でボールをとらえることを意識している。またバットの重さもこれまでの880~890gから870~880gへと軽くした。

9つ年下でともに代表チームで活躍するキム・ハソン(右)と打撃フォームについて話すパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)
9つ年下でともに代表チームで活躍するキム・ハソン(右)と打撃フォームについて話すパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)

「常に発展するためにどのような変化が必要かを考えています。どんなに良い成績を残したとしても、現状を維持しようと考える選手はいないと思います。絶えず研究して、そして先を見据えた準備が必要です」

冷静かつクレバーにそう語るパク・ピョンホ。彼の今季の取り組みが実を結び、再び一発を量産するとチームは昨季に続き上位争いに加わるだろう。そして韓国代表の4番として東京オリンピックでの活躍にも期待が高まる。

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韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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