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元楽天・ブリガムも「Why?」 ドームでもサングラスをかけるコーチが新監督に就任

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
サングラスをかけたソン・ヒョク新監督(写真:ストライク・ゾーン)

キウムヒーローズは今季の新監督に、昨年までSKワイバーンズで投手コーチを務めていたソン・ヒョク氏(46)を招いた。

ソン新監督について筆者は以前から気になっていることがあった。それは投手コーチ当時、ベンチの中では帽子のつばにのせていたサングラスを、マウンドに向かう際、グラウンドに出る瞬間になると必ず着用して投手のもとへ向かっていたことだ。それはナイトゲームであっても毎回そうだった。

キウムが春季キャンプを行う台湾・高雄でソン監督にその理由について聞くと、自身の現役時代の経験が関係していると語った。

「自分が投げていた時、マウンドに来た投手コーチから『大丈夫だ』と言われても、不安に思っているというのが目から伝わってきた。それがプレッシャーになったことがありました。私は目の動きが隠せない方なので、コーチとしてピッチャーに同じ思いをさせないために、わざわざサングラスをかけてマウンドに行くんです」

確かにソン監督の目は大きく、瞳の動きがわかりやすい。加えて明るい性格で感情が表面に出やすいタイプだ。

ソン・ヒョク新監督(写真:ストライク・ゾーン)
ソン・ヒョク新監督(写真:ストライク・ゾーン)

筆者と同じく、ソン監督のコーチ時代の「サングラスプレイ」を不思議に思っていた選手がいた。今季が韓国4年目となるキウムのジェイク・ブリガム投手(元楽天)だ。キウムは韓国唯一のドーム球場、コチョクスカイドームを本拠地にしている。

「SKのピッチングコーチはなんでドームでもサングラスをかけるのか、前からずっと気になっていました」

ブリガムは自軍の監督になった「サングラスの元投手コーチ」からその理由を聞いた。そして監督に笑いながらこう伝えたという。

「もし私が投げている時にマウンドに来る時があったら、サングラスをかけないで来てください。約束ですよ」

このやり取りを横で聞いていたもう一人の外国人投手、エリック・ヨキッシュはこう口にした。

「監督がマウンドに来るということはあまりない。あるとしたら7、8回まで投げている場面ということだろうから、ピッチャーとしては好投しているということだよね」

ゲーム終盤まで0点に抑え、完封目前といった場面なら監督がわざわざマウンドに足を運ぶ可能性はある。チームにとってはいい状況だ。

フリー打撃に登板したジェイク・ブリガム(写真:ストライク・ゾーン)
フリー打撃に登板したジェイク・ブリガム(写真:ストライク・ゾーン)

キウムの昨季の成績は3位。ポストシーズンでは準プレーオフでLGツインズを、プレーオフではSKを下して、韓国シリーズまで上り詰めた。しかしチームを率いたチャン・ジョンソク監督は再契約には至らず新監督を招くことになった。

ソン監督はSKの投手コーチ以前にキウム(当時の名称はネクセン)でもコーチを務め、チームの状況をよく知っている人物という点が評価されている。

キウムは3年連続2けた勝利のブリガム、昨季13勝のヨキッシュの両先発に加え、昨秋のプレミア12で代表入りし日本戦で先発した左腕のイ・スンホ、リリーフには速球派のチョ・サンウがいる。

また攻撃陣にも韓国の主砲パク・ピョンホ、走攻守で高い能力を見せるキム・ハソン、イ・ジョンフの韓国代表メンバーが名を連ねている。

優れた選手を率い、初めて監督の重責を担うことになったソン・ヒョク監督。新指揮官は今シーズンに向け、「ナインに自分の緊張感が伝わらないように、今季はベンチでもまったく目の動きがわからないようなものすごく濃いサングラスをかけますよ」と言って笑った。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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