BC福島で高打率の元韓国プロ打者の3か月 「西岡(剛)選手は僕のロマン」

指名打者での出場時に試合中素振りするキム・ウォンソク(写真:ストライク・ゾーン)

年間70試合を戦う独立リーグのルートインBCリーグは、先週21日に前期が終了した。

元ハンファイーグルスの外野手で福島レッドホープスに所属する韓国人選手、キム・ウォンソク(金源石)はリーグ3位の打率3割7分9厘、本塁打6本(同7位タイ)、打点32(6位)を記録。二塁打はリーグトップタイの12本を放つなど、チーム切っての好成績を残している。

SNSのダイレクトメッセージでのトラブルが原因で、韓国球界を去ることになったキム・ウォンソク。韓国の独立リーグを経て今年日本にやってきた29歳の、シーズン前半戦を振り返る。

(関連記事:「偏見のない岩村監督に感謝」 韓国で居場所を失った29歳のスラッガーがBC福島で躍動 2019/4/23)

誰よりも数多くバットを振る日々

「日本語(の実力)が伸びました」

キム・ウォンソク(以下、キム)はこの3ヶ月間を振り返って笑った。キムに通訳はいない。簡単な日本語と英語、身振り手振りでコミュニケーションを取っている。

「日々楽しいですよ。ですがたまに“ここで何しているんだろう”と思うこともあります。ただそれよりも“野球をやっていること自体が幸せだ”と考えることの方が多いです」

そんなキムの姿を一番近くで見てきているのが1年目の内野手、畠山侑也(22)だ。キムは日々、畠山の車に乗って須賀川市の練習場に通っている。

「このチームでキムさんが一番練習しています」

畠山はそう話す。

キム自身も韓国でやっていた以上に、数多くバットを振ることを意識している。

「全体練習が終わった後、1時間半から2時間くらい残って個人練習しています。その時間が自分にとって大事です。そうすることで試合でも実力が発揮できるという、自分への信頼が生まれます。“これだけ準備したんだから、リラックスして試合に臨めばうまくいくはずだ”と思えるし、結果が出なくてもまた問題点を探していこうという気持ちになります」

キムと連日ティーバッティングをする畠山は、キムの技術や精神面から学ぶことが多いという。

「しっかりジャストミートしないと怒られます。一方で少しでも元気がないとこっちの気持ちを読み取って、LINEで“落ち込まないで”とメッセージをくれたりして、キムさんは誰よりも厳しくて誰よりも優しいです」

キム・ウォンソクと畠山侑也(写真:ストライク・ゾーン)
キム・ウォンソクと畠山侑也(写真:ストライク・ゾーン)

畠山は意思疎通もままならぬ異国で一人で暮らすキムを気遣い、気分転換をさせたいという。

「キムさんは動物が好きだというので、今度アクアマリンに連れて行ってあげたいです」

アクアマリンとは畠山の実家があるいわき市の水族館、アクアマリンふくしまのことだ。

打撃成績で並ぶ西岡剛は「僕のロマン」

チームの4番を務めるキム。しかし自らを4番打者と思っていない。

「チームが求める4番のレベルには達していません。チームが勝つために、ランナーがいなければ自分が1番打者だと思って出塁して、ランナーがいればホームランをたくさん打てなくても、責任を持って還すことに最大限集中しています。打率が高いといってもそれはシーズンが終わってから考えることです」

岩村明憲監督と笑顔でハイタッチを交わすキム・ウォンソク(写真:ストライク・ゾーン)
岩村明憲監督と笑顔でハイタッチを交わすキム・ウォンソク(写真:ストライク・ゾーン)

キムが所属する福島は前期を東地区6球団中、同率4位で終えた。その上の3位には3ゲーム差で栃木ゴールデンブレーブスがいる。

その栃木にはキムが一目置く選手がいる。千葉ロッテ、阪神でプレーした元メジャーリーガーの西岡剛(34)だ。前期を打率3割7分(4位)で終えた西岡とキムは打撃各部門でほぼ並んでいる。

「高校、大学の時、西岡選手のプレーをよくテレビで見ていました。高校生の時に内野手だった僕にとって、守備のうまい西岡選手はロマンでした。今、近くで見て、よく打つなと思っています」

キムは試合中、西岡のある姿に驚いたという。

「一番ベテランなのに三振した後、走ってベンチに帰るのを見てびっくりしました。メジャーリーグまで行った選手は違うと感じます」

描けずにいる未来への目標

4月にキムに未来について尋ねた時は「正直、わからないです」と言い、少し間を置いて「今日のプレーが最後の野球だ」と考えていると話した。今はどうか。

「ここでどれだけ頑張ったとしても、すぐに描ける目標というのはないです。現状に満足はしていませんが、幸せじゃないわけではありません。来年野球をやっているかどうかもわかりませんが、まだ野球のことは好きです」

プロ野球選手として日本と韓国、どちらで出来ることを望むかと尋ねると、キムは「日本がベスト」と答えた。

後半戦も求められる韓国プロ経験者の力

シーズン開幕から3か月。福島の練習場があるいわせグリーン球場の周辺は、その間に風景を変えてきた。桜の季節が過ぎ、5月中旬に田植えされた10cm程の苗は、30cmを超える草丈に成長した。

須賀川市のいわせグリーン球場の周辺には「こしひかり」や「天のつぶ」を栽培する田園風景が広がる(写真:ストライク・ゾーン)
須賀川市のいわせグリーン球場の周辺には「こしひかり」や「天のつぶ」を栽培する田園風景が広がる(写真:ストライク・ゾーン)

「キムさん、頑張って!」

季節の移り変わりとともに、キムにはちびっ子ファンから声がかかるようになった。

チームは後半戦に突入。岩村明憲監督は「今の状態だと7月を迎えると恐ろしい」と話す。投手、野手ともに体力がないことを憂えてのことだ。

特にBCリーグは夏場でもデーゲームが多い。過酷な状況下、韓国のプロでフルシーズン戦ってきたキムはこれまで以上に力を発揮することが求められる。

「日本での生活に大変なことがないと言ったら嘘になるが、外国人選手としてプレーしていることを面白くもあり、不思議だと思ってやっています。チームみんなで一つになって勝っていきたいです」

<キム・ウォンソク 釜山工高、東義大から2012年にハンファに投手として入団。野手に転向し、戦力外と兵役を経て再びハンファ入り。KBOリーグでの成績は89試合、打率2割7分6厘、7本塁打、26打点。身長180cm、体重88kg、右投げ右打ち。1989年10月29日生まれの29歳>