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12球団のキャンプ日程が出揃う 韓国球団との練習試合は23試合

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
巨人でコーチ歴のあるKIAキム・ギテ監督と阿部慎之助(写真:ストライク・ゾーン)

25日、東京ヤクルトから今年の春季キャンプの日程が発表になり、2月1日から始まるNPB全12球団のキャンプスケジュールが出揃った。

1次キャンプをアメリカ・アリゾナ州で行い、その後沖縄へ移動する北海道日本ハムを除き、他の11球団は高知、宮崎、沖縄の国内でキャンプを実施する。

日本各地で練習を行うのは日本の球団だけではない。韓国・KBOリーグのチームも温暖な土地と整った環境を求めてやってくる。今年来日するのは、昨年と変わらず全10球団のうち7球団だ。

2019年日韓22球団 春季キャンプ日程表(ストライク・ゾーン)

日韓での練習試合は毎年20試合超

韓国のキャンプインも日本と同じ2月1日。同じ時期、同じ地域で練習を行う両者は毎年数多くの練習試合を行っている。

その数はこの7、8年20~30試合台で推移し、今年は2月11日のヤクルト対KIA(浦添)、中日対ハンファ(北谷)を皮切りに1、2軍合わせて23試合が予定されている(1月25日時点)。

その内訳は中日が最も多く6試合。次に日本ハム、オリックス、ヤクルト、巨人、横浜DeNA、阪神が2試合、その他の5球団は1試合ずつ対戦が組まれている。

松坂大輔(中日)の移籍後初の実戦登板は昨年2月26日の対ハンファ戦だった(写真:ストライク・ゾーン)
松坂大輔(中日)の移籍後初の実戦登板は昨年2月26日の対ハンファ戦だった(写真:ストライク・ゾーン)

出場するメンバーだが日本の場合、以前は2月中旬まで若手主体で、下旬になってから主力選手が先発出場することが多かった。しかし近年、野手に限っては主力も早い時期から試合に出る傾向にある。

一方の韓国は今も昔も、練習試合にほぼベストメンバーを組んでくる。これは「日本には負けられない」ということではなく、各球団、レギュラー選手と控えの実力差が大きいことが理由としてある。

「日本のチームへの礼儀として、先発メンバーは失礼のない顔ぶれを並べる」と、ある韓国球団の監督は話した。

練習試合で使うボールは2種類

日韓の練習試合は通常とは違って「2種類の試合球」が用意される。それぞれのリーグで使用球が異なるからだ。その使い分けは直接ボールをつかむ守備側が自国リーグの公式球を使う。

つまり日本の投手が投げる球はNPB公式球、日本の打者が打つ球はKBO公式球ということ。そのため球審は攻守交代の度に腰につけたボールバッグの中身を入れ替えている。

試合前、ボールボーイの側に用意された日韓の公式球。左がKBO、右がNPB(写真:ストライク・ゾーン)
試合前、ボールボーイの側に用意された日韓の公式球。左がKBO、右がNPB(写真:ストライク・ゾーン)

キャンプ地の球場は公式戦開催球場に比べて小さく、試合中のファールボールがスタンドを飛び出すことも多い。もし場外に「KOREA BASEBALL ORGANIZATION」と記されたボールがあったら、それは日本のチームのバッターが打ったものということがわかる。

両国の審判員が試合を担当することもある。左がNPB、右がKBO(写真:ストライク・ゾーン)
両国の審判員が試合を担当することもある。左がNPB、右がKBO(写真:ストライク・ゾーン)

ちなみにKBOリーグは極端な「打高投低」を解消するため、今季からボールの反発係数の基準値を下げる。これまではNPBが目標値としている0.4134を下限としていたが、今季からは0.4034以上、0.4234以下に変更になった。

両球界は人的交流も盛ん

日韓の球界はキャンプでの練習試合だけではなく人の交流も盛んだ。近年は日本から韓国に渡った指導者が、再び日本でユニフォームを着るケースが多い。

昨季、トゥサンベアーズの得点力をアップさせ、チームの公式戦1位に貢献した後藤孝志コーチは古巣巨人に復帰。1軍打撃兼外野守備コーチを務める。

またKIAタイガースに4年間在籍した中村武志バッテリーコーチも、今年から再び中日のユニフォームに袖を通す。

中日には中村コーチをはじめ、韓国での選手、コーチ経験者が6人も在籍。NPB全体では15人を数える。試合前にはコーチたちが互いのベンチを訪ね、笑顔で挨拶を交わす姿が見られるだろう。

【韓国・KBOリーグに在籍したことがあるコーチ、2軍監督】

埼玉西武:馬場敏史

福岡ソフトバンク:関川浩一、松山秀明

東北楽天:光山英和

東京ヤクルト:高津臣吾

巨人:後藤孝志

横浜DeNA:田代富雄

中日:伊東勤、中村武志、赤堀元之、門倉健、立石充男、勝崎耕世

阪神:高代延博、香田勲男

また選手間での交流も少なくない。その中にはプロ入り前の高校時代の国際大会をきっかけに親交を結んだケースもある。

ハンファイーグルスの遊撃手ハ・ジュソクは「キャンプでは高橋周平(中日)と会うのが楽しみ」と話す。二人はそれぞれ代表選手として2011年のAAAアジア野球選手権で対戦した間柄だ。

昨年の準プレーオフで三塁コーチとタッチするハ・ジュソク(写真:ハンファイーグルス)
昨年の準プレーオフで三塁コーチとタッチするハ・ジュソク(写真:ハンファイーグルス)

1年のうち3か月間、日本にいる選手も

日本の球団の多くは2月末にキャンプを打ち上げるが、その時期の韓国はまだ寒い。そこで韓国の選手は自国でオープン戦が始まる3月12日の直前まで日本に滞在する。

トゥサン、サムスンの場合、約1か月半の春季キャンプだけではなく、10月に宮崎で行われるフェニックスリーグに参加。さらに秋季キャンプも日本で行うため、選手によっては1年の4分の1にあたる計3か月間、日本で過ごしている。

その間にホテルの従業員や地域住民との触れ合いも生まれるため、簡単な挨拶だけではなく、「お久しぶりです」、「お願いします」、「疲れた」といった日本語を自然に使う選手は多い。

日韓の球界はお隣の身近な存在

選手と談笑する後藤孝志コーチ。今季から巨人に復帰するがトゥサンの選手からの信頼は厚い。このオフには「選手が奥さんを連れて韓国から毎週のように来てくれるんです。連れて行く食事先のネタが尽きました」と笑った(写真:ストライク・ゾーン)
選手と談笑する後藤孝志コーチ。今季から巨人に復帰するがトゥサンの選手からの信頼は厚い。このオフには「選手が奥さんを連れて韓国から毎週のように来てくれるんです。連れて行く食事先のネタが尽きました」と笑った(写真:ストライク・ゾーン)

韓国からキャンプ地の九州、沖縄へは飛行機で1時間半から2時間程。とっても身近な外国だ。その距離は東京からよりも短い。

日韓の野球界はキャンプを通して、顔を合わせてのコミュニケーションが続いている。その関係は国家間とは違って、近くて近い。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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