Yahoo!ニュース

若い世代が重視している「争点」は何か?【参院選2022】

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
出典:日本若者協議会

7月10日に投開票が予定されている、2022年 第26回参議院議員選挙。

政治家やマスコミからは、「物価高」対策が最大の争点かのような声が聞こえているが、若い世代は何を重視しているのか?

日本若者協議会では、若い世代を中心に、現在国民が重視しているテーマは何かを把握するために、アンケートを実施した。

その結果を紹介したい。

2022年参議院議員選挙「あなたの争点」 アンケート結果まとめ(日本若者協議会)

アンケートの概要

このアンケート調査は、日本若者協議会のHPやSNS上で回答を募集したWebアンケートです。調査対象は、若い世代を中心に全世代で、実施期間は6月11日(土)〜21日(火)です。

・調査方法 Web調査(日本若者協議会のホームページやSNS上で回答を募集)

・調査対象 若い世代を中心に全世代

・調査期間 6月11日(土)〜21日(火)

・回収数 410回答

今回の選挙で争点だと思う内容は?

まず今回のアンケートは、インターネット上で行った調査であり、政治に関心のある層が回答している。

実際、今回の選挙にも84%が必ず行くと回答しており、他のマスコミの世論調査よりも多い。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

年代としては、20代、30代が多く、10代〜30代で85%を占めている。

また男女比としてはやや男性が多い。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

では、今回の選挙で何が「争点」だと思っているのか。

複数選択可で聞いたところ、「少子化対策(妊娠、出産、子育て環境の整備など)」が最も高く、次に「経済政策・成長戦略」、「教育・学費負担軽減」と「働き方・就職(賃金やワークライフバランスなど)」がほぼ同数という結果になった。

そしてその次は、「安全保障・外交」となり、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、関心が高まっているようだ。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

世代別にトップ5を比べると、若年層と高齢層はもちろん、同じ若年層でも異なることがわかる。

やや驚きだったのが、10代で特に「安全保障・外交」の関心が高かった点だ。以前から若い間で比較的関心が高く、そのため日本若者協議会でも憲法と合わせて議論しているが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、さらに関心が高まっているようだ。

ただ、個別の意見を見ると、憲法改正を含め安全保障体制を強化すべきという意見と、軍拡を避けて平和外交を強化すべきという意見に大きく分かれている。

世代別トップ5:

(10代)

1.少子化対策(妊娠、出産、子育て環境の整備など)

2.安全保障・外交

3.経済政策・成長戦略

4.教育・学費負担軽減

5.働き方・就職(賃金やワークライフバランスなど)

(20代)

1.働き方・就職(賃金やワークライフバランスなど)

2.少子化対策(妊娠、出産、子育て環境の整備など)

3.経済政策・成長戦略

4.教育・学費負担軽減

5.貧困問題・格差是正

(30代)

1.教育・学費負担軽減

2.経済政策・成長戦略

3.少子化対策(妊娠、出産、子育て環境の整備など)

4.働き方・就職(賃金やワークライフバランスなど)

5.安全保障・外交

(40代)

1.経済政策・成長戦略

2.少子化対策(妊娠、出産、子育て環境の整備など)

3.教育・学費負担軽減

4.働き方・就職(賃金やワークライフバランスなど)

5.安全保障・外交

(50代以上)

1.経済政策・成長戦略

2.少子化対策(妊娠、出産、子育て環境の整備など)

3.安全保障・外交

4.憲法改正

4.貧困問題・格差是正

6.消費税含む税制改正

中でも最も重要だと思う争点は?

では、個別具体的にはどういう内容に関心があるのか?

一部回答から抜粋したい。

気候変動に関しては、上記の質問でも上位に入っておらず、全体的な関心の広がりには欠けるものの、関心のある層からは高い危機感を感じる。

また少子化対策として、所得制限の撤廃を求める声が目立った。

・給与が上がる経済(20代・男性)

・出産費用の無償化・教育の無償化(20代・男性)

・気候変動(20代・女性)

・気候変動に端を発する、教育や働き方、地方創生などにおける様々な変革。(20代・女性)

・喫緊の課題としては原発の再稼働、新設(18・19歳・男性)

・消費税をどうするのか(18・19歳・男性)

・環境問題で、二酸化炭素の排出削減について(18・19歳・男性)

・外交・安全保障(台湾有事に関して) (18・19歳・男性)

・デフレ解消及び、給料上昇を伴うインフレ(〜17歳・男性)

・気候変動対策(環境政策でもあり、経済政策でもあり、安全保障政策でもある)(20代・女性)

・日本の合計特殊出生率が1.30となり、少子化が加速していることから、人口減少問題が最も重要な争点であると思う。(18・19歳・男性)

・ジェンダー平等(20代・女性)

・健全な人材の流動化で賃上げをはかること。同時に、ベーシックサービスなどのセーフティネットの整備。(20代・男性)

・少子化対策。これだけ人口比が歪になった国で、若者は希望を持てない(20代・男性)

・次の世代を担う人材を育成する教育。学びの質をすべての人に保障できるような社会にしてほしい(20代・男性)

・経済対策。教育国債の発行が出来るか。(20代・女性)

・少子化対策です。特に、子育て支援に関する所得制限は、高所得者は高負担により生み控え、中所得者は所得制限を心配して働き控えをしており、安心して子供が産めるのが生活保護者だけになっている事態です。(30代・女性)

・「代表制民主主義」自体の立て直し。 全ての国民が「自分の民意が代表されている」という実感を持ち、国家の長期戦略を議論するシステムを政府や国会、政党の中にどう作るか。 その基礎となる、国民が正確で理性的な情報に触れられる情報空間をどう再構築するか。(30代・男性)

・気候変動は早急に、優先的に取り組みが必要だと声を上げていかなければ間に合わないから(30代・女性)

・教員の働き方改革が現実的に機能していないので見直してほしい。給料なども再度考えるべきだと思う。(30代・女性)

・少子化待ったなしなので子育て支援の所得制限撤廃(30代・女性)

・労働市場の流動化、高齢者に偏った社会保障の改革(給付削減)(40代・男性)

・少子化対策が失敗続きです。今までの方法では変わりません。子育て支援にかかる所得制限で産み控えが起こっています。また子どもの進路が制限され将来の納税者を潰していると思います。障がい児福祉の所得制限は本人だけでなくきょうだい児にも影響しヤングケアラー問題につながります。所得制限をなくしてください。(40代・女性)

・明石市長のような本気で少子化対策に取り組んでくれる政治家が必要(40代・女性)

・長期的展望を踏まえた経済対策。いつまでに何をするのか具体的なビジョンを示してほしい。(40代・男性)

・経済成長と規制緩和です。平均所得が上がらない、新しい産業が生まれない、若い人がこの国に希望が持てる要素がもはや一つもない。こんな社会にわが子を出したくないです。政治が変わらなければ子どもは海外に出します。(40代・女性)

現状の政府や政治で課題だと思うのは?

次に、「現状の政府や政治で課題だと思うのは何ですか?」と聞いたところ、若い回答者が多かったからか、若い世代の意見が反映されていない、若者向けの政策を増やしてほしいという声が多かった。

・政府の経済成長に対するビジョンが見えない。(30代・男性)

・人口構造が原因で、政治家が、これからを生きる若者よりも高齢者の声の方を聞いてしまうこと。(20代・女性)

・高齢者の意見を優先しすぎる(30代・女性)

・意思決定の視点が近視眼的に感じる。

市民の声、未来の声が届きにくい仕組みになっている。対話の機会が少ないと感じる。

政治家自身の働き方改革が必要。余裕を持って未来のことを考える時間さえ取れないのではないかと感じる。(20代・女性)

・①与野党ともに緊縮財政や高齢者に偏った予算支出を当然視していて、積極財政や子ども・若者への投資の視点が欠けていること

②スキャンダルや足の引っ張り合いになっていること(20代・男性)

・国民・一般市民との意識の差・感覚の差が激しすぎる。自由、柔軟性、政治家の高齢化、ジェンダー格差(20代・女性)

・女性の割合が低いこと。理由の1つは、女性視点がない政策が多すぎること。2つ目に、男女平等が重要視されなければ、性的マイノリティーなど男女にも含まれない人々がいることへの理解も進まないと思うから。(20代・女性)

・国民の代表であるはずの議員が、ジェンダー・年齢・その他のバックグラウンドなどにおいて偏りすぎていること。そして彼らが自分たちの利益追求と保身に走っていること。(18・19歳・女性)

・経済もそうだが、若者の政治参加を制度面でどう整備していくかが課題である。(20代・男性)

・環境問題が政治や選挙の争点となっていないこと。人々の生活より防衛が重要視されていること。(18・19歳・女性)

・新しい資本主義と言いながら、保守的な経済成長を前提としたフレームワークから抜けきれていない。そのため、若者や女性の権利を低く見積もっている。(20代・女性)

・若者を考えた、政策の少なさ。

投票率が当たり前のように50%を切ること。(原因として考えられる政治が変わらないという若者の無力感)

経済や安全保障環境の変化に即座に対応できない、政府システム。

有能な人間が集まっているはずなのに、デジタル化が進まない行政(〜17歳・男性)

・世論の政治に対するリテラシー・関心の低さとそれを問題にする人たちの庶民に対するリテラシー・関心の低さ(30代・男性)

・様々なマイノリティの視点が政策に活かされていない。国民のために働いているのではなく、政治家が政治家のためになるような政策や意見を国民に提案することすらなしに勝手に進めているように感じる。(20代・女性)

・現状、日本の教育で優秀な層は外資に行くというスキームとなっています。そのため、日系企業の経済力促進を図るため、賃上げをトリガーとして、日系企業に優秀な層を集め、企業の力を底上げしていくことが最重要課題であると思います。(20代・男性)

・高齢者の社会保障ばかりにお金をかけ、若年世代にお金が回ってきていない。それに伴い、若者の結婚率、出生率が低下している。また、エネルギー不足によって日本が海外から工場を誘致できないのも問題。あと、今の円安対策。(20代・男性)

・本気で日本の未来を考えている政治家があまりいない、と子育て支援関連の政策や発言から感じられること。

規制の多さ。

税金の使い方に無駄が多すぎること。

政治家の高齢化、世襲。政治家に70歳定年制度を設けてほしい。もっと新陳代謝の起きる仕組みにすべき。(30代・女性)

・景気の悪さ、少子化対策に対する対策の薄さ、子育て世代・若年層に対する施策がない(20代・女性)

2022年参議院議員選挙に向けて政府や候補者に伝えたいことは?

最後に、「2022年参議院議員選挙に向けて政府や候補者に伝えたいことは?」と聞いたところ、やはり若者向けの政策を増やしてほしいという意見が多かった。

・社会人になる目前になって将来が不安すぎる。この不安を掬い上げてどうか政策に反映させてほしい。(20代・女性)

・相対的に数の少ない若者のことを本当に考えてくれているのか知りたいです。若者向けに付け焼き刃な政策ではなく、10年20年後を見据えた社会保障改革や人への投資はなぜ実現しないのでしょうか。(18・19歳・女性)

・私は20代女性です。お互い改姓を希望しておらず、選択的夫婦別姓が認められるまで、事実婚でいます。賃金も上がらない、出産育児費用がかかる、女性のキャリアはライフイベントで振り落とされていく、教育費もかかる、今の日本で子供を産み育てたいとは思えません。(20代・女性)

・私たちは、みなさん方が思っている以上にみなさんのことを見ています。社会の根底に根付いてしまった様々な不平等を是正するため、多様な声を聴こうとしてほしいと思います。また、気候変動が解決されず、生きることができなければ、経済の発展も男女平等もなにもありません。再エネベースの気候変動対策をしっかりしていただきたいと思います。(20代・女性)

・どんどん「若い世代」の関心が高まっているのを感じます。

持続可能で、若い世代に希望を与えられるような政治こそ本来のあるべき姿だと思います。今ある問題を先送りせず、表面だけの対話をするのでなく、どんどん変化し続ける「今の時代」に目線を合わせ、昔ながらのやり方を抜本的に見直す姿勢も必要だと思います。(18・19歳・女性)

・気候変動問題をもっと真剣に取り組んでください。人類絶滅もあり得ます。もう時間がありません。(30代・女性)

・与党とか野党とか、主義主張とか思想とか、そういったもので対立するだけじゃなく、本当に日本の未来を考えて議論してほしい。それに「検討する」「注視する」「〜までには」じゃなくて、すぐに実行してほしい!(切実)(20代・男性)

・誰もが安全に安心して暮らせる国際政治を目指してほしい。

若者向けの支援政策を充実させてほしい。(20代・女性)

・若者の意見を現実の政策に反映する仕組みの構築をお願いします。(30代・男性)

・子どもへのマスク着用義務を、できる限り撤廃して欲しい。他人の顔や感情がわからない子も多く出てきており、あまりにも子どもたちがかわいそう。(30代・男性)

・多くの社会問題や解決しなければいけない課題は沢山在りますが、その中でも気候変動は緊急性の高い最重要課題だと考えています。私たちが住む土地、地球環境が健康な状態でなければ、経済成長も仕事も教育も、成し得ることができません。国民の声を大切にして、本当の意味で国民のための政治をお願いします。(30代・女性)

・①子ども・若者のためにお金を使ってください。

②行政が余計な規制をするのではなく、民間が自由にチャレンジできるように静かにしていてください。スタートアップや研究に「選択と集中」ではなく、手あたり次第お金だけ支出してくれれば、そのなかからイノベーションが生まれ、最終的には税収増や支出減に繋がり、全世代が幸せになります。

③デジタル化を本気で進めてください。いちいち【紙・役所で対面・何度も同じことを記入】を求められるのは無駄です。そうしたい人だけ有料サービスでそうすればよいと思います。基本はデジタル&自動化をデフォルト設定にしてください。(20代・男性)

・本気で気候変動対策してください。同性婚・夫婦別姓認めてください。戦争できる国にしないでください。言い出したらキリがないけれど、今は何時代なの?と思ったり、また戦前に戻っちゃうのかなと不安になったり、そんなことばかりです。日本の現状を考えると怒りが湧いてくるし、涙が出てくるし、恥ずかしいです。ほんとに恥ずかしいです。高校生にこんなこと言わせないでください。皆さんが何をするのか、それは誰のためなのか、私はしっかり見ています。(18・19歳・女性)

・全ての候補者に「高い供託金を払って、プライベートを犠牲にして、日本の未来を良くするために立候補してくれてありがとうございます」と感謝したいです。(18・19歳・男性)

・私は今高校を卒業したばかりの身ですが、10年20年後、100年後の未来を案じています。気候変動はもう既に私たちの生活を侵食し始めていて、タイムリミットもなくなっています。対策を共に進めていきましょう。(18・19歳・女性)

・シルバー民主主義からの転換を何としても目指してください。票が少ない若者世代かもしれないけど、この先を生きるのは私たちです。

プライマリーバランスのツケばかりおっしゃいますが、国の在り方を正さずほったらかされるツケの方がよっぽど嫌です。(30代・男性)

・中長期的な目線でものを考える立場にあるのは参議院議員の役目だと衆議院議員の方がおっしゃっていました。もちろん一理ありますが、共に中長期的な目標に向けてじっくり議論し、迅速に実行に移す。

そんな政治を支えられるような、市民活動を展開していきたいと思っています。

共に社会変革のため行動していきましょう。(30代・男性)

・若者との議論の場を増やすだけでなく、若者が政治介入できる仕組みをまず作ってください。子供国会、被選挙権の年齢引き下げなど。(20代・女性)

・今回の参議院選挙にはあまり関係ないかもしれませんが、低用量ピルの低価格化について、政府はどうお考えなのかお聞きしたいです。私は来年から新社会人になります。しかし一般的な生活を送るためには3ヶ月に一回、低用量ピルの処方のため通院し、医療費として一万円程度払わなくてはなりません。そうしなくては普通の生活が送れないからです。以前、緊急避妊薬の販売についてもお話がありましたが、私のような生理痛で苦しんでいる女性たちが、日常生活を送るために必要不可欠である低用量ピルの低価格化についてはどうお考えでしょうか。女として生まれただけで、毎月かかる生理用品や薬代への保障は国で行うべきではないでしょうか。(20代・女性)

・若者に向けた政策、日本の成長を重視した政策をとってほしい(18・19歳・男性)

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

室橋祐貴の最近の記事