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スコットランドが世界で初めて「生理用品無償化」の法案可決。日本にも負担軽減求める声

室橋祐貴日本若者協議会代表理事

若い女性の4人に1人が「生理の貧困」

2020年11月24日、スコットランド議会はタンポンやナプキンなど生理用品を無償で提供する法案を全会一致で成立させた。生理用品の無償配布を法整備するのは世界で初めてだという。

背景には、若い女性が生理用品の購入に苦労している「生理の貧困」がある。

2017年、イギリスの慈善団体「プラン・インターナショナルUK」が行った調査によると、若い女性の約10人に1人が生理用品を購入できず、15%が購入に苦労し、19%がコストを理由に自分にあまり合わない製品に変更していると回答。

トイレットペーパーを代わりに使ったり、服が汚れることを恐れて学校を欠席する女性も半数以上存在することがわかった。

さらに、スコットランドの若者支援団体「ヤング・スコット」が2018年に女子学生約2000人を対象に実施した調査では、スコットランドの学校や大学などに通う約4人に1人が、生理用品へのアクセスに苦労していることが明らかになった。

こうした「生理の貧困」を解消しようと、スコットランド政府は2018年の9月から、大学を含む国内の学校に通う39万5000人の女子生徒全員に、生理用品を無償で提供していたが、予算の都合上、すべての女性を対象にしていたわけではなかった。

そこで、2019年末、2016年から「生理の貧困」をなくそうと活動を続けてきた野党・労働党のモニカ・レノン議員は「スコットランドの全女性が、公共施設において、いつでも無償で生理用品を受け取れるようにする」という内容の法案を提出し、今年11月24日の議会にて可決。生理用品を必要とする人が誰でも無償で手に入れられるよう、地方自治体に法的義務を課す。

法案成立を受けて、レノン議員は「スコットランドの誇るべき日です。全国どこででも無償で生理用品にアクセスできるというシグナルを世界に送ることができました」と喜びの声を上げた。

ニュージーランドや韓国などでも同様の動き

こうした動きはスコットランドだけではない。

イングランドやニュージーランドも学校での生理用品の無償提供を始めており、「生理の貧困」の解消に向けた動きは世界中で広がっている。

カナダやオーストラリア、ドイツ、イギリスなどの国々では生理用品への課税が廃止もしくは引き下げが行われている。

アメリカ・ニューヨーク州では2016年に、学校、ホームレスの避難所、刑務所で無償提供する法案を可決している。

また韓国では、韓国最大の地方自治体である京畿道が来年から、満11歳から18歳までの全ての女性青少年に、生理用品の購入費用を支援する政策を実施する。

1人当たり毎月1万1000ウォン(約1000円)、年間13万2000ウォン(約1万2000円)を、「地域貨幣(所定の地域内で現金と同じように使えるデビッドカード)」で支給するという。

日本でも若者が声を上げる

change.org
change.org

日本では政府や自治体による同様の取り組みはまだないものの、負担軽減を求める声は上がっている。

#みんなの生理の谷口歩実さんは、大学生の時に署名サイト「change.org」で「生理用品を軽減税率対象にしてください!」という署名を立ち上げ、12月12日13時時点で約4万3千人の賛同が集まっている。

12歳で初潮を迎え、50歳で閉経するまでに毎月5日間生理があると仮定した場合、月経のある人は一生涯で456回、2,280日間(およそ6年半)も月経を経験することになります。毎月の生理で使う生理用品代を1,000円だとすると、負担は一生涯で「45万円以上」にものぼります。これは生理用ショーツ、痛み止め、ピルなど月経に必要なその他のものを除いた額です。生涯45万円も負担する生理用品に、さらに日本では現在10%の税金がかけられています。生理のある人は、ない人に比べ、生涯で50万円近くも多くの負担を強いられているのです。

出典:change.org

#みんなの生理が実施したアンケートによると、経済的負担が重いという声が多数上がっており、今後日本でも海外と同様の負担軽減策が求められる。

中学生のとき生活必需品を買うときは親にお金をもらえることになっていたが、申告するのが恥ずかしく言えなかった。母親は小さい生理用品を使っていたが、私は量が多いため大きいものを自分で買わなければいけなかった。

肌が弱いのでオーガニックコットンのものを使いたいが値段が高い。また、生理1~3日目に飲む痛み止めも購入してる人も多いのでは?

周りでも漢方やハーブティーなど生理による不快症状の緩和にあらゆる努力をしてる。なぜお金をかけて努力してるか?それは心と体を整えて仕事や勉強を頑張りたいからです!

だからまずベースとしてナプキンタンポンの値段を下げてほしい。国の大臣たちに生理は排泄と同じことと思われてる気がする。。。

不正出血が毎日あるため、通常時もライナーを使用しています。これは病気なので、医療品として購入できれば良いのにといつも思います。

生理用品が安くなって欲しい

200~300円ぐらいがいい

オーガニックナプキンが高くて買えない

最低でも減税対象にすべき。希望は生理用品の無料化、もしくは保険対象製品にして、購入者は3割負担。

大学生です。今までは親が買ってきてくれていたナプキンを使っていました。自分で買うようになり、最初は安さ(1パック800円くらいだと思っていたら400円くらいで買える)に驚きました。しかし、多い夜用、夜用、昼用、軽い日用、量が増えてきたのでタンポン……と買いそろえると初期投資でだいぶかかり、なくなるペースがかなり早いことに気がつきました。想定していたより高くついてしまいます。また、婦人科も受診するようになり、定期的に受診代もかかるようになりました。

まだバイトをしていなかった頃、お金がなく食事を1日1食以下にすることもあった時に生理が急にきてしまい、ナプキンを買わなければならなかったのが金銭的にも精神的にも辛かったです。ご飯を抜いてもすぐに生理はとまりませんでした。むしろ周期より早くきたかもしれません。

生理痛がひどく、ここ数ヶ月は避妊用ではない低容量ピルを服用しています。それによって毎月三千円かかります。また、生理用ナプキンは使い捨てのものだと自分的には高額で、金銭的にも精神的にも負担です。一日にいくつものビニールゴミを捨てているという事実も辛いです。

生理用品という生活必需消耗品に非常に多くのお金を使わざるを得ない状況に不満を持っています。おりものシート、そして普通の日用と多い日用、夜用のナプキン。それぞれ揃えるので1ヶ月に1000円ほど。そこから毎月700円分ずつ買い足していくとして、1年で8700円。12歳から47歳あたりまでの月経だとすると、35年。生涯で生理があるだけで304500円かかることになります。生理用ショーツも買っているので実際にはこれよりさらに多くお金を使うことになります。

現在私は23歳で、社会人になってからこの生理用品にかかるお金の多さを実感しています。今この社会で、男女の賃金に格差があるこの社会で、女性だけが多くのお金を生活必需品に使っている現状は理不尽に思えてなりません。

それに加えて私は月経困難症を患っており、痛み止め薬に3ヶ月に一度2000円ほど、また低用量ピルにも3ヶ月に一度4000円ほどお金を使っています。これを生理が無くなるまで続けると、かかるお金は計り知れない膨大なものです。低用量ピルに関しては、保険適用なのにも関わらず保険の効かない避妊用ピルとほとんど変わらない値段であることにも疑問を持っています。病気の治療も避妊も、どちらも同等に重要でどちらも女性の権利です。正当な金額で薬を販売してほしいものです。

そんな中、せめて生活必需品である生理用品だけでも無料で提供されてほしいと思います。日本には貧困に苦しむ人々もいます。そういった家庭で必要十分な生理用品が購入できているとは思いません。長時間ナプキンをつけることは衛生的にも非常に悪く、病気にかかることがあります。このような心配のある家庭にまずは必要十分の生理用品が届くことを私は願っています。

東日本大震災の際、ある避難所では生理用品が寄付されたにも関わらず「こんな時に何を考えてるんだ」とそれを受取拒否した方がいたと聞きました。世の中の男性全員が生理用品が女性の生活必需品であると理解しているわけではないのだと衝撃を受けました。このような事態を招かぬよう、生理用品は女性の生活必需品であり、男性が生涯払う必要のないものを35年間払い続けているのだという現状を社会に周知していただきたい、そしてこの現状を変えていくためにも、無償化や免税減税などの改革を行っていただきたいです。

社会の意識も同時に変えていかなければならないのです。「女だけずるい」となってしまうことも懸念して、教育を徹底してほしい。私が小学生の頃、生理についての授業は女子だけが受けていました。これでは女性の身体に何が起こっているのか、何が必要なのかわかりません。生理用品が無料になることで男性に不利益はないこと、そもそも男女の賃金格差は生涯にかかる生理用品の値段よりもはるかに大きいものであること、買えないことで病気を患う可能性があることなど、しっかりと事実を周知をしてほしいなと思います。

10月1日には、与党・公明党に署名を提出。

トイレットペーパーは無料で備え付けられており、生理用品も同様に無料で提供すべきではないだろうか。今後の動きに期待したい。

左から、#みんなの生理の谷口歩実さん、公明党・矢倉克夫青年委員長(参院議員)、公明党・竹谷とし子女性委員会女性局長(参院議員) 写真:筆者撮影
左から、#みんなの生理の谷口歩実さん、公明党・矢倉克夫青年委員長(参院議員)、公明党・竹谷とし子女性委員会女性局長(参院議員) 写真:筆者撮影

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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