Yahoo!ニュース

10代の学生から集まる「9月入学」反対の声

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:アフロ)

「9月入学」をめぐる議論が盛り上がっている。

休校に伴う学習の遅れや学校間格差を是正するため、準備期間を設け、9月入学、9月新学期に移行させようというものだ。

野党や一部の首長から「9月入学」の検討を求める声が上がり、安倍晋三首相や萩生田光一文科大臣も「検討する」と述べている。

一方で、筆者が代表理事を務める「日本若者協議会」には、9月入学反対の学生の声が集まってきている。

今のところ賛成の意見はなく、反対意見のみである。

これは今のところ賛成意見が目立ち、それに反対するためだと思われるが、日刊スポーツ新聞社が29日、ネットで「9月入学制についてどう思いますか」という緊急アンケートを実施したところ、反対が約55%で、賛成の約41%を上回り、特に10代以下では反対が約77%に上った結果を見ても、反対意見の方が主流を占めてそうである。

個別の論点に関する意見は別の記事で述べたいが、まずは当事者である学生の声を一部紹介したい。

ちなみに筆者も大学院の修士2年生であり、オンライン授業が実施されている中、わざわざ卒業時期をずらすのはやめてほしいと思っている一人である(どうしてもずらしたければ半年間休学する)。特に就職が決まっている最終学年の大学生で卒業時期をずらしたい学生はいないのではないだろうか。

私は断固として反対派です。

先生たちは私達のために今たくさんの課題を作ってくださったり、オンライン授業などで、現状回復に力を入れてくださっています。それなのに、今9月から新学期にしてしまうと、先生達の努力が無駄になってしまうし、私は今年受験生なので、このような改革を急にされたら動揺します。

もっと若者の意見を尊重し、メリットだけではなくデメリットも考え、今は先の問題を解決しようとするのではなく、今目の前にある問題を解決させてからでないと、先の問題も中途半端になってしまうのではないでしょうか。

しかも、9月にコロナウイルスが完全に収まっているとも思えません。9月に完全に収まり、児童が安全に新学期を迎えられるという徹底的根拠はあるのでしょうか。

私は不安でしかありません。

(高校生)

今、急に新学期の時期を変えても私たち学生は困ります。

受験の時期が夏になるととても暑い中受験を受けないといけなくなりますよ?

人は寒さには厚着などでしのげますが、暑さはどうでしょう?

全裸になる訳にも行きません。

制服で受験は受けないといけないのに、どうやって暑さをしのぎますか?

今まで遅れた授業の分はどうにだってなります。

毎日、学校から課題を出し、生徒一人一人も意識を持って勉強に励めばいいだけです。

今この時期は皆家にいます。

政府さん、この大変な状況で新学期の時期を変えるというのはそんなに重要ですか?

考え直してください

(高校生)

9月入学への賛成の意見を多数見てきましたが、コロナが9月に収まる確信もないのにタイミングがいいからこの際、と非常に恣意的な考えが多いと感じられます。

私立に通う方々の半年分の学費の補償はするのでしょうか。生活ギリギリの方もいらっしゃる中で家庭からお金を取っても、私立が全部負担しても賄いきれないと思いますし混乱が生じるのは目に見えています。

また学力格差についてですが、この半年間オンライン授業を行った学校とそうでない学校の間が空いたままで、むしろそちらのほうが格差が生じると思います。

そして9月にコロナが収束しなかった場合、来年の4月にするべきだとまた改変の考えが生じかねません。それは受験生だけでなく新卒採用する多くの企業にとってもマイナスでしょう。

色々な意見がありますが、1番危惧しているのは政治家など上の方々が賛成の意見しかないことです。

教育現場にいる反対派の意見もテレビ等のメディアに大きく報道されません。

どうか私(たち)の声を聞いてほしいです。

9月入学にはせずオンライン授業の拡充を実施して子供達の学び場を充実させ、勉学の家庭、学校間の平等を目指していただきたい

もし9月入学になった場合

他国に合わせて9月に変えるのなら他国で行われている飛び級制度を作ってほしい

それなら生涯年収の減少も自分の力で変えられる機会がある

(大学生)

9月入学に移行したら留学生が増える、という意見がありますが、既に多くの大学で9月入学は可能になっており、特に影響ないのではないでしょうか。

(大学生)

こうした意見を見る限り、少なくとも数多くの論点を1ヶ月以内に整理することは難しく(5月中には結論だけでも固まらないとスケジュール的に移行は難しい)、甘い見通しのまま移行して混乱する可能性は高そうである。

当然、ここまで重要な事項である以上、有識者会議(中教審)を設置し、パブリックコメントなど、多くの審議プロセスを経らなければならず、その多大な検討コストを他に先んじて行うべきか否かが微妙なところである。

現在、日本若者協議会でも9月入学の是非について検討している最中だが、これ以上議論が進むようであれば、提言がまとまり次第、各政党、政府に申し入れを行う予定のため、学生は下記まで意見をお寄せ頂きたい。

要望受付フォーム設置のお知らせ

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

室橋祐貴の最近の記事