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校則のHP公開で「ブラック校則」は淘汰されるか

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

東京都・世田谷区立中学校の校則が今秋から各校のホームページで公開される。

2019年6月14日の世田谷区議会で、上川あや区議会議員が「生徒と保護者だけではなく、地域に広く開かれるべきだ」と、校則の原則公開を求めたのに対し、池田豊教育政策部長は「各学校のホームページでの公開についても取り組んでいく」と答えた。

地毛証明の提出や下着の色の指定など、理不尽な指導やルールが学校現場に残る、いわゆる「ブラック校則」が注目されて久しいが、抜本的な改善にはつながっておらず、今も日本各地で繰り返されている。

校則のホームページ公開で「ブラック校則」は淘汰されるのか、「校則の見直し」の行方も注目される。

都議会でも同様の質問

今秋に世田谷区立中学校の校則がホームページで公開されれば、「義務教育学校の校則全校公開は恐らく日本初」(上川あや議員)であるが、大阪では、生まれつき頭髪が茶色い生徒に黒く染めるよう強要していた問題を受けて、すでに154ある全府立高校が校則をホームページで公開し、入学後の「ミスマッチ」を防ぐだけではなく、校則の点検・見直しを求めている。

また、東京都議会でも6月12日に、池川友一都議会議員が「校則の決め方や公開」について質問し、校則の変更に生徒の意見を聞くこと、ホームページで公開することを求めている。

先日、高校生や大学生などが参加する日本若者協議会のみなさんと意見交換し、入学前に情報提供がなく、入学した途端、決まりだから従うようにと言われるケースを改善する一つとして、校則をホームページで公開するという提言を受け取りました。

 大阪では、中学生が高校を選択する材料の1つとして、すべての府立高校がホームページで校則を公開しています。

Q8 都立高校の校則など、学校のルールについて、入学前にわかるように学校のホームページで積極的に公開すべきですが、いかがですか。

出典:6月12日 本会議 池川友一都議の一般質問

「学校の中の民主主義」をいかに実現するか

「校則問題」の根本的な問題は、「ブラック校則」自体ではなく、合理的な理由もなく、その校則が残ってしまっていることである。

明確な変更プロセスが確立していれば、時代に合わせて、生徒も先生や校長を説得する材料を揃えて校則の変更を訴えることができるが、実際には、過去の踏襲で「なんとなく」決まっていることが多い。

そもそも、学校のルールや校則に生徒の視点が重要だという考えも浸透していない。

先述の池川都議の質問の中でもこう触れられている。

校則の変更や制服の導入を一方的に行い、生徒が意見を言っても聞きもしないという事例も、いくつも寄せられています。

Q4 ある都立高校では、生徒の過半数が再考を求めたにも関わらず、校長が一方的に髪を染めることを禁止すると生徒心得を変更しました。生徒会と校長とのやりとりで「生徒の意見を聞かなくていいのか」という質問に対し、校長は「必要ない」と、回答しています。

 別の都立高校では、制服の導入と髪染めの禁止を内容とする校則の変更が一方的に通告され、生徒総会で「校則改定を取り消すことを求める」「生徒の学校生活に関わる重要な決定をする場合、在校生及び保護者に明確な説明なしに、決定、公表、実施をしないことを求める」という決議が上がったにも関わらず、生徒の意見に一切耳を傾けることなく、校則が変えられました。

 こうしたやり方は問題ではありませんか。

出典:6月12日 本会議 池川友一都議の一般質問

主権者教育や教科書で「民主主義」を教えているにも関わらず、最も身近なコミュニティである学校の中は「民主主義」ではないのが現状だ。

若者の投票率の高いスウェーデンやドイツでは、生徒が先生・校長らと対等に学校の校則や授業内容、給食の内容などについて話し合い、意思決定に関わる機会が確保されている。

こうした身近なところから、主権者としての感覚を育てているからこそ、自分たちが働きかければルールを変えることができるという自信や信頼が形成されているのであって、急に「選挙に行こう」と言っても、その意義や価値を感じることはできない。

こうした問題意識から、筆者が代表理事を務める日本若者協議会では、「校則の公開」だけではなく、校則の決定に生徒が関わること、校則の決め方のルールを定めることを求めている。

校則の決定権を生徒に付与、校則の公開

「学校総会」を設置し、生徒代表・学校代表・保護者代表が、学校の校則や授業内容、給食の内容などについて話し合い、決定する場を設ける。学校に入る前に校則を確認できるように、HPで校則を公開する。

出典:日本版ユース・パーラメント2019 報告記事(政策提言一覧)

もちろん、「ブラック校則」自体を早急になくす必要はある。

しかし、単に「上から押し付ける」形でルールを決めるのではなく、生徒が自分たちでコミュニティ(学校)のルールをどうすべきか話し合い、関係者(先生・校長・保護者)と決めていく。そうしたプロセスを確立し、生徒の自律を重視することを期待したい。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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