有権者によるメールでの選挙運動解禁の検討【若者政策推進議連第六回総会】

2019年2月12日に行なわれた若者政策推進議連第六回総会

2018年5月24日に設立された超党派の若者政策推進議員連盟(会長:自民党・牧原秀樹衆議院議員、通称若者議連)。昨年の通常国会では、被選挙権年齢引き下げと供託金額引き下げについて提言をまとめ、各政党の政調会長に対し申し入れを行なったが(提言文章)、今国会では「第三者によるメールでの選挙運動の解禁」の検討を進めている。

2019年2月12日に行なわれた、第六回若者政策推進議連総会では、情報セキュリティ大学院大学学長補佐・情報セキュリティ研究科 湯淺墾道教授と総務省自治行政局選挙部選挙課 土屋直毅企画官を講師に、第三者によるメールでの選挙運動規制の経緯や論点、規制を廃止した場合の問題等についてヒアリングを行なった。

LINEやSNSのメッセージ、落選運動は一般の有権者も送信可能

2013年7月に行なわれた第23回参議院選挙以降、解禁されたインターネット選挙運動。

今では多くの候補者や政党がインターネットを活用し、選挙運動を展開しているが、急速に変化するインターネット環境の中で整合性の取れていない規制が散見される。

その中でもっとも違和感の大きい規制の一つが、電子メールの取り扱いだ。

現状、有権者が投票の呼びかけなどの選挙運動を行う際には、Gmailなどの電子メール(SMTP方式)は違法だが、LINEやフェイスブックのメッセンジャー機能は合法とされている。

一方で、特定の候補者の落選を促す、落選運動用のメールは有権者も送信可能になっており、「メール受信者からみれば、選挙運動用メールと落選運動用メールの相違に合理性がない」(湯淺教授)。

インターネット選挙運動解禁ガイドライン
インターネット選挙運動解禁ガイドライン

ネット選挙解禁の際には、各党でメールの規制をどうするか検討が行われたが、現状の規制になった理由は大きく3つ。

一つは、メールは密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすい点。

次に、複雑な送信先規制等を課しているため、一般の有権者が処罰の対象になりかねない点。

最後に、ウイルスなどの悪質なメールにより被害が出る恐れがある点。

しかし現実的には、メールと一対一のLINEで密室性が大きく変わるとは言えず、アカウント乗っ取りやフェイスブックを使ったフィッシングサイトへの誘導などといった問題は、SNSやショートメッセージでも発生しており、メールだけ特段リスクが高いとは言い難い。

また、湯淺教授によると、なりすまし対策は「送信ドメイン認証技術や金融機関のように電子署名を使えば技術的には可能」だという。

インターネット選挙解禁時の検討経緯
インターネット選挙解禁時の検討経緯

一方、ネット選挙運動が解禁された際には附則第5条として、「電子メールを利用する方法による選挙運動については、次回の国政選挙後、その実施状況の検討を踏まえ、次々回の国政選挙における解禁について適切な措置が講ぜられるものとする」と書かれているが、次々回の国政選挙に当たる2019年参院選に向けては、こうした規制緩和についての議論が活発に進められているとは言えず、早急な検討が期待される。

公職の候補者及び政党等その他政治団体以外の者が行う電子メールを利用する方法による選挙運動については、次回の国政選挙後、その実施状況の検討を踏まえ、次々回の国政選挙における解禁について適切な措置が講ぜられるものとする。

出典:公職選挙法改正法 附則第5条

解禁に向けた検討課題

そのほかの検討課題としては、欧米で問題となっている選挙セキュリティや送信先規制として個人情報保護法の観点も述べられた。

Election Security

■第1段階

  • 有権者の民意形成への介入と世論誘導によって選挙結果に影響を与えようとする段階
  • 政党、候補者へのサイバー攻撃と情報の暴露
  • フェイクニュース、個人情報を利用したマイクロターゲティング

■第2段階

・投票所を案内したり開票結果を公表したりする選挙管理期間のウェブサイトへの攻撃や選挙に関するニュースサイトへの攻撃等によって選挙に混乱をもたらそうとする段階

■第3段階

・選挙管理機関へのサイバー攻撃や電子等表記へのサイバー攻撃等によって、有権者名簿や投票記録それ自体を改ざんする等、直接的に選挙結果を操作しようとする段階

出典:情報セキュリティ大学院大学学長補佐・情報セキュリティ研究科 湯淺墾道教授による配布資料より引用

「現状、個人情報保護法で政治団体の政治活動は適用除外になっているが、個人情報に関する意識が高まっており、個人情報保護法上問題ではないかという批判が一定程度上がる可能性はある」(湯淺教授)

また、参加した国会議員からは以下のような質問・意見が述べられた。

・「解禁すべきだと思っている。SNSのメッセージが問題なくても、電子メールで禁止されていると、非常にややこしくて、有権者はできない方に引っ張られてしまう。こうしたことから、シンプルでわかりやすい制度にしていくべきだと思っている。もう一つ、政治活動用の有料バナー広告は今は政党に限っているが、世界的に見てもCMが上限規制がなく行われている国は非常に珍しいのではないか」(立憲民主党・中谷一馬衆議院議員)

「立法事実として、懸念されていたようなことは実際にあったのか?」(自民党・牧原秀樹衆議院議員)

→「網羅的なものは持ち合わせていないが、規制した結果、懸念していたようなことは起きていないのではないか」(総務省 土屋企画官)

→「むしろSNSが急激に発展したため、SNSが誹謗中傷の舞台になっている。有料バナー広告に関しても、SNS事業者の方が規制の対象になりつつある。また検索結果の有料広告をどう規制するかについても、議論が進められている」(湯淺教授)

・「見直すという条項が入っており、与野党でも反対が出ないのではないか。まずはこの若者議連で、電子メール解禁をするという方向で意見をまとめ、各党協議の橋渡しを始めても良いのではないか。5~6年前はSNSがそんなに広がっていなかったが、もうメールよりSNSの方が使われている。LINEでこの人に一票入れてというのはOKで、メールはダメというのは訳がわからない。それこそ政治参加を阻害してしまう。基本的には全部OKにする。一方で、フェイクニュースの問題やSNSで虚偽内容を発信しても今は野放しになっており、次の段階に来ていると思う」(立憲民主党・落合貴之衆議院議員)

・「ウェブページにおける誹謗中傷防止策として、なぜプロバイダ責任制限法は機能していないのか?」(日本共産党・本村伸子衆議院議員)

→「公選法ではSNSはウェブサイト扱いだが、事業会社からするとメール(通信の秘密の保護対象)という認識であり、プロ責法の対応は受け付けていない。フェイスブックは海外事業者であり、日本法の規制を適用させることは困難。また、プロバイダ責任制限法の改正によって、選挙運動における誹謗中傷は誰が書き込んだのかすばやく開示できるよう修正はしたが、選挙運動中に間に合わせるのは現実的に難しい。仮に開示されて削除請求しても選挙が終わっている。開示請求に関しても、候補者の本人確認をする必要があり、選挙運動中に候補者本人であることを証明することが難しい。そうしたことから、改正手続きは有効活用されていない」(湯淺教授)

左から希望の党・井上一徳衆議院議員、日本共産党・本村伸子衆議院議員、公明党・平木大作参議院議員
左から希望の党・井上一徳衆議院議員、日本共産党・本村伸子衆議院議員、公明党・平木大作参議院議員

・「諸外国の事例を聞くと個人情報保護との絡みが強くなってくるように思える。商品を売り込む一般のマーケティングと比べて政治活動の規制はより強化されるべきと思うが、そのあたりの議論を教えて欲しい」(公明党・平木大作参議院議員)

→「米大統領選のケンブリッジ・アナリティカ問題をきっかけに、議論が活発化している。規制に強く動き始めているのはEU。フェイスブックなどのプラットフォーマーに対して強い対策を促している。具体的には、世論誘導的なフェイクニュースの蔓延を防ぐことや、個人情報保護をもっと万全を期すよう求めている。さらに、世論誘導の広告についてもっと慎重に審査せよ、第三者が対策をファクトチェックできるようにせよ、というようなことも強く求めている。アメリカも今まで規制しないスタンスだったが、最近は規制の方向に動き始めている。最近はマイクロターゲティングで個々人を特定して世論誘導工作を行う手法が広がっており、そこへの法規制が実施・検討されている」(湯淺教授)

・「選挙関係は強い規制があるが、国民投票法はあまり規制がなく、最近は国民投票法でも規制すべきではないか、という議論が行われている。どのような規制が検討されているのか」(希望の党・井上一徳衆議院議員)

→「国民投票運動は規制を最小限に自由にする、という考えのもと法律が作られている。公選法はビラやポスターなど文書図画頒布の規制がベースにあり、そこで認められているものだけがネット選挙で使えますよ、という建て付けになっているからネットが使えるか使えないかという話がそもそも出てくる。国民投票の場合は文書図画頒布の規制がないため自由になっている」(総務省 土屋企画官)

→「現状、国民投票についてはTVCMの規制について議論が進められているが、若い世代はあまりTVを見ないのでネット広告をどうするかも議論すべきではないか」(湯淺教授)

・「誹謗中傷・フェイクニュースについてのSNSへの規制について、湯淺先生の意見は?」(自民党・鈴木隼人衆議院議員)

→「沖縄の県知事選挙を見ると、誹謗中傷・フェイクニュースがかなり問題になってきた印象がある。特に両当事者の陣営同士では冷静にやりましょう、と呼びかけていたにも関わらず、勝手応援団的に、陣営がコントロールできない人たちが問題を起こした。他方、有権者1人1人の発信を規制して防ぐことは現実的に難しい。そうなると、SNS事業者に対して、一定のラインを超えた誹謗中傷は事業者の判断で削除しますという運用やユーザーへのガイドラインを作ってもらうのが良いのではないか」(湯淺教授)

・「選挙は有権者が主体。基本的には、性善説で全部OKとした上で、顕著なものを規制していかないと、これだけデジタルが急速に普及していく中で、次のプラットフォームが出てきた時に毎回『これは良い』『これはダメ』とやっていかないといけない。メールは密室性が高いとされているが、SNSも高い。例えば、Gmailをスクリーンショットで撮ってSNSに流すこともできる」(自民党・中曽根康隆衆議院議員)

自民党・中曽根康隆衆議院議員(右)
自民党・中曽根康隆衆議院議員(右)

・「今の中曽根先生の話はその通りだと思う。ポストインターネットの規制もキリがない。メール/フェイスブック/LINEの差が明確ではないので全部OKにするべき」(勉強会に参加した高校2年生)

・「リツイートやシェアは選挙運動の対象。現状高校生でツイッターを使っている人は多くいるが、高校生の選挙運動が規制されており、規制緩和していくべきではないか」(筆者、日本若者協議会代表理事)

・「技術の進歩は我々の予測を上回る。メールの議論は党内で参加していたが、一部のベテラン議員が大反対し、『これが実現したら我々の選挙がぶっつぶされる』という議論があったが、現実にはそれほどのインパクトはない。落選運動の方が効果があるように感じる。貴重な意見を頂いたので我々がこの分野の議論をリードしたいと思う」(自民党・牧原秀樹衆議院議員)

今後、若者議連ではさらに「第三者によるメールでの選挙運動の解禁」を中心に検討を進めていく。

議論に参加したい若者団体は若者議連のHPから登録できる。