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これからどんな困難があっても、みんなで乗り越えられる――真っ白なキャンバス河口湖フリーライヴレポート

宗像明将音楽評論家
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

2022年7月9日、真っ白なキャンバス(通称、白キャン)のワンマンライヴ「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」が河口湖ステラシアターで開催された。

この日は、コール&レスポンスなどの声出しが、白キャンで約2年4か月ぶりに解禁されたライヴ。白キャンは「MIX」と呼ばれる掛け声など、ファンの激しい歓声で知られていたが、コロナ禍においてそれが封印された状態が続いていた。今回の声出し解禁にあたっては、ファンのマスク着用が徹底され、ファン同士が接触していると、プロデューサーの青木勇斗みずからが注意に走る場面もあった。

会場の河口湖ステラシアターは、屋根が可動式であり、常に換気が可能な施設。実際、開演前の夕刻は、屋根が出ていても汗が止まらないほど外気が流れこんでいた。

開演時間が近づくと、ファンの期待が高まっていくのがわかる。そして開演を告げるSEが流れた瞬間、ファンの大歓声が会場に響き渡った。キャパシティ3000人の会場に対して、今回は感染症対策のために1500人まで収容人員を削減。それでも、1500人もの声を聞くこと自体が久しぶりだった。

1曲目の「アイデンティティ」のイントロが流れてもメンバーがステージに登場しない。どういうことだろうと思った瞬間、ステージ後方を覆っていた布が落とされ、壁面に設けられた2段のステージにメンバー7人が登場した。「アイデンティティ」の間奏を前に、西野千明が「河口湖ステラシアター、大きなクラップお願いします!」と叫ぶと、会場には「パンMIX」と呼ばれる掛け声が響いた。この日の「アイデンティティ」は、終盤が長くエディットされており、その間にメンバーは壁面からステージへ。アウトロでは「ガチ恋口上」と呼ばれるコールが叫ばれた。

真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

「ダンスインザライン」は、コロナ禍で発表された楽曲ゆえに、ファンがどう対応するのか気になっていたが、新たに挿入されたMIXのほか、「イントロのメロディーをそのまま歌う」という行為も聴こえ、「その手があったか」と妙に感心させられた。

開演から約20分が経過したところで、最初のMCに。メンバーの自己紹介が行われたが、コロナ禍において加入した浜辺ゆりなは、初めて「ゆりなー!」というファンからの歓声を浴びることに。浜辺ゆりなは両手を耳にあて、飛び跳ねて喜んだ。

浜辺ゆりな(撮影:真島洸(M.u.D))
浜辺ゆりな(撮影:真島洸(M.u.D))

「ポイポイパッ」では、メンバーが大きな水鉄砲を持って客席へ。ファンに水を撒いていた小野寺梓が、自分のパートになると急に普通に歌う姿に驚かされたが、その耳にはイヤモニが。今回のためにイヤモニまで発注したのかと、その意気込みに感嘆していると、目が合った浜辺ゆりなに水をかけられた。会場を駆けまわって、落ちサビでステージに集合したのだからメンバーも大変だ。

小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))
小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))

麦田ひかる(撮影:真島洸(M.u.D))
麦田ひかる(撮影:真島洸(M.u.D))

鈴木えま(撮影:真島洸(M.u.D))
鈴木えま(撮影:真島洸(M.u.D))

「untune」はシンガロングのパートがある楽曲。いつ以来なのかわからないほどとなる、ファンのシンガロングが響いた。

「untune」が終わるとメンバーがステージを去ったが、ただひとり麦田ひかるが残った。彼女は、白キャンのダンスの要となる存在。その麦田ひかるにしか表現できないであろうダンス・パフォーマンスが展開された。そして、バックトラックはそのまま「Whatever happens, happens.」へとつながり、メンバー全員がステージに。「Whatever happens, happens.」は、イントロも間奏もMIXで埋めつくされている楽曲であり、久しぶりに完全体を聴いた感覚すらあった。バックトラックはそのまま「オーバーセンシティブ」へと接続し、見事な流れにファンの歓声が湧き起こった。

橋本美桜(撮影:真島洸(M.u.D))
橋本美桜(撮影:真島洸(M.u.D))

白キャンでは、6月下旬から三浦菜々子が喉の不調で休養を余儀なくされていたが、彼女の見せ場が多い「オーバーセンシティブ」では、三浦菜々子が完全復活。休養時の葛藤を込めたかのような強烈なシャウトを聴かせた。

自身にとっての白キャンを語る映像パートの後、この日に向けて発表された新曲「キャンディタフト」へ。メンバーは新衣装で登場した。「キャンディタフト」は、白キャンにとって初のラヴ・ソングであり、変化していこうとする姿勢を強く感じさせる楽曲だ。

また、声出し解禁というライヴではあったが、「共に描く」「ルーザーガール」「わたしとばけもの」など、コロナ禍でそのときどきの活動の指針となった楽曲もしっかり披露され、コロナ禍で白キャンが新たに開拓してきた表現の意義が再確認されたのも感慨深かった。

真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

「空色パズルピース」は、三浦菜々子のアカペラでスタート。マイクは腹部まで下げ、会場には彼女の生歌が響いた。ファンの賞賛の拍手と歓声とともに「空色パズルピース」は始まった。

三浦菜々子(撮影:真島洸(M.u.D))
三浦菜々子(撮影:真島洸(M.u.D))

「HAPPY HAPPY TOMORROW」では、メンバーが再び客席へ。ステージに戻るころには、ステージの両脇から大量のシャボン玉が噴射されていた。

西野千明(撮影:真島洸(M.u.D))
西野千明(撮影:真島洸(M.u.D))

「全身全霊」もまた、イントロや間奏がMIXで埋め尽くされている楽曲だ。内面を描く歌詞と、久しぶりに聴く「ホグワーツMIX」という意味不明なMIXが、ともに耳に入ってくることに酔いしれた。

そして、本編の終盤で満を持して歌われたのが「SHOUT」だった。白キャンの代表曲であり、他のアイドルにライヴでカヴァーされることも多い。イントロが鳴った瞬間、「SHOUT」で声を出せる日を待ちわびていたファンたちの熱気が急激に高まった。ファンのMIXとコールを愛してきた小野寺梓は、自身への熱い「あずさ」コールが叫ばれた瞬間、それまで我慢していた涙を遂にこらえきれなくなった。小野寺梓の歌う落ちサビと、「可変三連MIX」と呼ばれる掛け声が重なる瞬間を、私は甘露のように味わった。

本編の最後を飾った「PART-TIME DREAMER」では、終盤で銀テープが噴射された。

真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

それでも鳴りやまないアンコールの声に、「桜色カメラロール」でメンバーが再登場。白キャンにとっての節目に歌われることが多い「自由帳」も披露された。

最後のMCでは、橋本美桜が涙を見せた。「自分はけっこう冷めてるように見えるんですけど、みんなの愛を感じられて楽しかったです」と。その橋本美桜の頭を、同期の西野千明が撫でた。鈴木えまは、「自分たちがみんなの居場所になりたいけど、今はみんなが居場所を作ってくれてるなと思っちゃって。だからもっともっとみんなの居場所になれるようにがんばります」と頭を下げた。話すのが苦手な過去の彼女とは別人のようだ。

さらに西野千明が「やってみたいことがあるんだけどさー」と言いだし、1500人のファンでiPhoneのライトを照らし、ウェイヴを作る一幕も。そして、アンコールの最後として「いま踏み出せ夏」が始まった。夏にふさわしい楽曲だ。

驚愕したのは、その終盤で花火が打ち上げられたことだ。歌い終わっても、花火はまだまだ打たれ続ける。「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」というイベント名通り、ごく一部の席以外は無料だというのに、大量の花火が白キャンの夏を彩った。

花火のみならず、新宿から会場への無料シャトルバスの運行、週刊誌「FLASH」裏表紙への広告掲載、多数の関連動画の公開など、無料イベントだというのに、採算度外視とも思えるほどの施策が打たれた。また、開催にあたって地元の多数の店舗とのコラボも行われた。富士急行線では白キャン仕様の臨時快速列車が運行され、河口湖駅も白キャン一色に。開催地との協力関係も大きなインパクトを生んでいた。

最後の最後、小野寺梓は「この期間をみんなで乗り越えられたから、これからどんな困難があっても、みんなで乗り越えられる気がします」と語った。「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」は、この困難な時代のなかで、まぶしいほどに「未来」を感じさせるイベントであった。

真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

<セットリスト>

01.アイデンティティ

02.白祭

03.ダンスインザライン

04.共に描く

05.闘う門には幸来たる

06.ポイポイパッ

07.untune

08.Whatever happens, happens.

09.オーバーセンシティブ

10.レイ

11.キャンディタフト

12.ルーザーガール

13.わたしとばけもの

14.空色パズルピース

15.HAPPY HAPPY TOMORROW

16.全身全霊

17.SHOUT

18.PART-TIME-DREAMER

19.桜色カメラロール

20.自由帳

21.いま踏み出せ夏

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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