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退所して今がどん底、でも本は無料でも出していた――手越祐也「AVALANCHE」出版記者会見レポート

宗像明将音楽評論家
手越祐也(筆者撮影)

真実ではない情報を残したまま、次の人生に行っていいのかな

2020年8月5日、手越祐也の記者会見が都内で開催された。これは、この日発売された手越祐也のフォトエッセイ「AVALANCHE」(双葉社)の出版会見。初版の段階で、現在の出版状況ではかなり強気の5万部だという。6月にジャニーズ事務所を退所してから、異例のスピードでの動きだ。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

会見前にメディアに配布された資料には、「AVALANCHE」の目次のコピーも。「はじめに」「第1章 ジャニーズ退所」「第2章 NEWSについて」「第3章 大好きな歌とファンたちへ」「第4章 ジャニーズ喜多川さん、ジャニーズ事務所の先輩・後輩たちへの感謝」「第5章 僕が出会ってきた芸能人と『イッテQ!』」「第6章 『サッカー愛』と『地球でトップ3のスーパーポジティブ』」「第7章 初恋 恋愛遍歴 結婚」「第8章 世界挑戦と夢」と記されていた。

そして、手越祐也が登場。カメラのシャッター音が一斉に響くなか、「生まれてから芸能活動をはじめてからの第1章、そしてこれからのギャップを埋めたくて『AVALANCHE』を出しました」と語り、会見はスタートした。以下、その要旨を掲載する。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

「この1か月半、半年分ぐらいの充実したなかで、何かモヤモヤがあって。17、8年やってきて、真実ではない情報を残したまま、次の人生に行っていいのかなと思ったとき『?』が浮かんで。今までいた素晴らしい場所から独立して、何もわからない状態になったんです。楽しくはあったけど、賛否の『否』も多く来て、綺麗事ばかり書いたら僕が本を出す意味がないなと自問自答して。まっすぐ生きすぎたからこそ、巻きこんで嫌な思いをさせた人に申し訳なさを抱えたままだったし、仕事やプライベート、全部で関わった人への感謝を伝えたかったんです」と出版の真意を述べた。

さらに「SNSにも賛否がたくさん来ます。今、SNSのパワーはすごいと思うけど、自らの命を絶つ人もいる。独立したからこそ知るSNSの素晴らしさと怖さがあります。『スーパーポジティブ』と言ってますけど、自分を守る盾みたいなものなんですよね。批判があるなかでも未来を明るいものにしようとして、『勇気をもらえたな』と思ってもらえるように、生身の人間として真実を表明していくという決意表明なんです」と出版経緯について語った。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

山口くんが先導してくれたらいいな

さらに農業を支援する「手越村」構想については、「日本の農業の素晴らしさについても伝えていきたいし、九州の豪雨のボランティアに行った友達からも情報が来ますし、支援していきたい」と話し、さらに「生身の手越祐也……何度も言って恐縮ですけど(笑)、その第2章がこれから始まるので、この本を出版しました」と語った。

特典映像については「これからはアイドルとは考えてないです、エンターテイナー。でも、ファンの皆さんのことを考えました」とのこと。さらに、ボランティアへの参加応募券に触れて、「ボランティアって、助けに行ってパワーがもらえるものなんです。助けているようで、助けられている。経験した人じゃないとわからないので、僕と一緒に行った人が、ボランティアの大切さを広げていってほしいと思って特典のひとつにしました」と、自身が主宰するINGプロジェクトにも言及した。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

手越村については、「海外に行って和食に感銘を受けて。高齢化するなかで、ものすごい体力が必要だと思うんです。それによって僕らの『食』は守られていると思うんです。食を通して家族のコミュニケーションも守られています。食を生む場は自然も多い。僕というフィルターを通して食について伝えていきたいと思います」とも述べた。

また、「弁当をシングルマザーに運ぶボランティアも、実際にご自宅にうかがって、『ピーマン食べられるようになったんです』とか聞いて。食が嫌いな人はいないじゃないですか、体も作るし、コミュニケーションにもなる。お弁当を運びながら、農業に携わりたいと考えました」と、INGプロジェクトを始めてからの日々を振り返った。「『DASH村』に出たときも、山口(達也/元TOKIO)くんはかっこいい人なんです。先導してくれたらいいなと思います、こき使ってもらっていいんで」と笑った。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

出版はお金のためだと思われるのが一番悔しい

質疑応答では、「退所して今がどん底だと思うんですよ。そんな手越祐也を見て、『どん底の手越でも頑張ってるから、私も頑張ろう』と思ってくれたらいいなと思います。僕はスーパーポジティブです、でも中身は生身の人間です」という発言も。

山口達也についての質問には、「連絡先を知っているわけではないので、農業に関わっていけるなら、人間としても事務所の先輩としても大好きな山口くんに頼りたいという構想があります。この会見で初めて山口くんも知ることなので、断られたらしょうがないです」と笑い飛ばした。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

さらに恋愛についての記述に関しては、「自由に生きすぎて、食事をしたり、乾杯をしたり。男性も女性もいて、みんないるなかなのに『密会』と書かれて。相手の人やファンの方も傷つけた。それに関して申し訳なかったんです。密会でもないし、巻きこんでしまったことを正したかったんです」とのこと。

今後の音楽活動については、「すでに7、8000曲集まっているんです。もちろんオンラインでも聴けるようにしたい。構想は決まりつつあるし、YouTubeでみんなで作っていきたいと思います」と語り、8月に予定をしていた有観客ライヴが新型コロナウイルスの影響で中止になったことについて、「これからは応援してくれる人にとっての手越祐也だと思っているので、ライヴ配信をしたい」と明かした。

手越祐也(筆者撮影)
手越祐也(筆者撮影)

独立後の収入についての質問には、「攻めますね!」と苦笑。「リアルなんですけど、会社の口座もないんですよ。開設を母親がしてるんですけど。だから1円も入ってないです。この本も、暴露本なんじゃないか、いろんな人を巻きこんで稼ごうとしてるんじゃないかと言われると思うんです。でも、無料だとしても、僕は出していたんです。自分の人生を理解してもらって、次に行きたいんです。お金のためと思われるのが一番悔しいですね」と語ったが、なおも「予想では収入アップになりますか?」と食い下がるレポーターに「お金に興味ないんですよ。お弁当や農業のプロジェクトに私財を使っていきたいですね、みんなが笑うために使えたらいいなと思います」と笑った。

1時間以上、言葉が滞ることなく、滑らかに話し続けた手越祐也。著書の発売とともに、自身のプロジェクトを積極的に動かしていこうとする姿勢がうかがえた記者会見だった。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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