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フィロソフィーのダンスはその瞬間、その場を肯定していく――「TIF2019」3DAYSレポート

宗像明将音楽評論家
フィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019

世界最大規模のアイドルフェスの3日間

8月の初頭、東京・お台場には蝉の鳴き声は響かない。耳に届くのは、お台場のさまざまな場所に設置されたスピーカーから流れてくる音楽だけだ。動かずに立っているだけでも汗が止まらなくなるような猛暑のなか、今年も世界最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」が開催された。

4人組グループ「フィロソフィーのダンス」は、2019年8月2日から4日にかけて開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」で、メインステージである「HOT STAGE」にも出演した。ウルフルズ、氣志團、ナンバーガール、Base Ball Bear、相対性理論などを世に送りだした加茂啓太郎のプロデュースのもと、2015年にデビューしたグループだ。ファンクやR&Bを歌う彼女たちは、2018年12月16日に開催された品川ステラボールでのワンマンライヴに約1,500人を集めた実績を誇る。テレビ朝日では冠番組「フィロのス亭」も隔週水曜日に放送中だ。

オーディエンスの人生をポジティヴなものにするフィロソフィーのダンス

「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」の3日間、フィロソフィーのダンスが単独名義で出演したのは4ステージ。さらに、メンバーである日向ハルがソロで出演したステージや、prediaとのコラボレーションによるステージ、最終日の「グランドフィナーレ」への出演も含めると、実に7ステージにも及んだ。

こうしたアイドルフェスの場で、フィロソフィーのダンスは圧倒的に強い。横綱相撲の連続と言ってもいい。しかし、どのステージでも多くのオーディエンスを集められる彼女たちの魅力を一言で表現するのは簡単ではない。日向ハルの圧倒的な声量、奥津マリリの歌声のニュアンスの豊かさ、十束おとはの高音から低音までの音域の広さ、佐藤まりあの歌声があわせもつアイドル性と力強さ。そうしたヴォーカル面に加えて、「フィロのス亭」によく表れているように、各自のキャラクターが生みだすエンターテインメント性の高さも特筆したい。それが音楽と接した瞬間、フィロソフィーのダンスはオーディエンスの人生を非常にポジティヴなものにする。

彼女たちの飾り気のなさは、他者にも飾り気を求めない。その瞬間、その場を肯定していく。フィロソフィーのダンスが、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」のすべてのステージで示したのはそうした姿勢だった。

湾岸スタジオ屋上の夜景をバックにしての「SKY STAGE」

フィロソフィーのダンスにとっての「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」は、初日である8月2日、野外の「FESTIVAL STAGE」で12時30分からスタート。出番の前のメンバーは、自撮りをしたり、声を出したり、柔軟体操をしたりしていた。

そして、「DTF!」「アイドル・フィロソフィー」「ライブ・ライフ」を歌うフィロソフィーのダンスを前に、オーディエンスの振る手が海のように広がった。

同じ8月2日、陽も沈んだ20時15分から、フジテレビ湾岸スタジオの屋上の「SKY STAGE」で2度目のステージが始まった。周囲には湾岸一帯のアーバンな夜景が広がり、日中が嘘のように風が優しい。歌われたのは「イッツ・マイ・ターン」「アイム・アフター・タイム」「フリー・ユア・フェスタ」「ヒューリスティック・シティ」。ファンク色よりもソウル色が強めで、躍動的であると同時に大人の魅力を感じさせるステージだった。

SKY STAGEでのフィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019
SKY STAGEでのフィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019

メインステージ「HOT STAGE」での全国ツアー発表

「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」の2日目、8月3日はメインステージである「HOT STAGE」に16時30分から出演した。多くのアイドルが憧れる大舞台である。フィロソフィーのダンスの名前が会場にアナウンスされるとフロアから大歓声が起き、ステージ袖で佐藤まりあは耳をそばだてた。

このステージでは曲間が短く、ノンストップでつなげられた部分もあった。「ダンス・ファウンダー」「イッツ・マイ・ターン」「バイタル・テンプテーション」「エポケー・チャンス」と続いた中には、2018年にオリコン週間シングルランキングで7位を獲得した「イッツ・マイ・ターン」と、フィロソフィーのダンスの楽曲の中でもっともディープなファンクの「バイタル・テンプテーション」が同居している。

HOT STAGEでのフィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019
HOT STAGEでのフィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019

MCで、十束おとはが全国ツアーの開催、そしてツアー・ファイナルが12月17日の新木場Studio Coastであることを発表すると、フロアからは大きな歓喜の声が湧きおこった。

続いて、この夏に発表された新曲「ダンス・オア・ダンス」、「イッツ・マイ・ターン」と両A面シングルだった「ライブ・ライフ」と続き、バラードの「ジャスト・メモリーズ」へ。「ジャスト・メモリーズ」は、フィロソフィーのダンスのスケールの大きさを体感させる一曲でもある。

最強の4人組だと証明した野外ステージ「SMILE GARDEN」

最終日である8月4日は、12時55分から「SMILE GARDEN」に出演した。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」でもっとも大規模な野外ステージだ。ミディアム・ナンバーの「夏のクオリア」、ダンス・ナンバーの「ダンス・オア・ダンス」、熱く盛りあがるソウル・ナンバーの「ダンス・ファウンダー」と「ベスト・フォー」。その「ベスト・フォー」を歌うとき、日向ハルはこう語った。「SMILE GARDENで私たちが最強の4人組だと証明して帰りたいと思います」。かくして、それは灼熱の野外ステージで証明されたのだった。

SMILE GARDENでのフィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019
SMILE GARDENでのフィロソフィーのダンス (C)TOKYO IDOL FESTIVAL 2019

16時15分からは同じくSMILE GARDENで、フィロソフィーのダンスとprediaのコラボレーションが行われた。歌われたのは、フィロソフィーのダンスの「ジャスト・メモリーズ」「ダンス・ファウンダー」、prediaの「The Call」「NAKED」。2010年の結成以来、高い歌唱力を誇るprediaとのコラボレーションは、さながらヴォーカル・グループが刺激しあうかのようだった。このコラボレーションは、19時30分からHOT STAGEで開催されたグランドフィナーレでも披露され、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」の最後に華を添えた。

こうしてフィロソフィーのダンスは盛夏を駆け抜け、12月17日の新木場Studio Coastに向かって走りだす。そのキャパシティは約2,400人。彼女たちの単独公演としては最大規模だ。フィロソフィーのダンスが、アイドルファンにとどまらず、より幅広い人々にリーチしていくであろう秋、そして冬を楽しみにしたい。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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