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プレーオフ行きブレイブルーパスの「レジリエンス」/リーグワンD1第13節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ボールを持つのはディアンズ。攻守で抜群の存在感(写真提供=JRLO)

 ラストワンプレーで40-40と同点に追いついたが、コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー新ヘッドコーチは不満足だ。

 4月14日、東京・秩父宮ラグビー場。東芝ブレイブルーパス東京との国内リーグワン1部・第13節をドローで終え、こう言い切った。

「フラストレーションがたまる試合。順位の状況を考えれば負けに等しい」

 国内リーグワンで目下12チーム中5位。この日を含む残り4試合で4強によるプレーオフへ進むには、勝利が欲しかった。まだ関門突破の可能性は残されるが、終盤の追い上げもむなしく引き分けただけに顔つきは厳しい。

 序盤に向こうの猛攻にタックルを外され、ハーフタイム明けは得点した以上にチャンスを作りながら仕留めきれないことがあった。前年度9位のチームの指揮官となるや、ポジションごとの役割を明確化し、かつ一貫して選手の動きを厳しくチェック。その流れでいまに至るため、こうも述べる。

「確かに昨年より間違いなくよくなっている。ただし新しいコーチ陣が新しいことを落とし込むには時間がかかる」

 かたやブレイブルーパスは、勝ち点の計算上プレーオフ行きを決めた。

 フッカーの原田衛副将は、後半に自陣での不用意なエラーでスティーラーズを活気づけたと反省。こう続ける。

「ただ、僕らのなかにあるオフロードパス(タックルされながらのパス)の方針に則って放ったうえでのミスであればダメージはないですが、そうではないなかで簡単に(繋ぎの失敗を)やってしまうと、相手に流れが渡ってしまう」

 ただし先述通り、必死の粘りで向こうの反撃をしのいだこともあった。原田は続ける。

「そこがいまの東芝の強さ。僕らのレジリエンス(が現れている)」

 ここでの「レジリエンス」は、ラグビー界でよく用いられる。苦境を乗り越えるための力を表現することが多い。

 確かにこの日のラストワンプレーで、ブレイブルーパスは数的不利ななか自陣ゴール前左での相手ボールスクラムを耐えた。最初のうちは7人。圧を食らいながら組み直しを命じられれば、センターのセタ・タマニバルをフランカーに入れて8人になってしのいだ。

 左プロップの三上正貴は言う。

「人数的に有利な神戸がプレッシャーをかけていた。こっちはそれを止めようと低くして(構え)、ヘッドアップ(頭が上がる反則)を取ろうとした。コーション(レフリーからの注意)がかかったらフランカーを入れようと思っていました。最後はセタが入って、逆に押し返していた」

 その後の展開では「外にトライされれば(コンバージョンが外れやすくなり)プレーオフが決まる(可能性が高まる)とわかっていた」(三上)と、相手の攻めを端側に追いやるように守った。

 右端にグラウンディングされた直後のコンバージョンには皆で圧をかけ、失敗に追い込んだものだ。

 そのほかの場面でも、インゴールでのグラウンディングを防ぐ動き、相手のキックの弾道へ先回りする意思が見られた。

 さかのぼって前節では、ディフェンディングチャンピオンのクボタスピアーズ船橋・東京ベイにゲームを支配されながら、クライマックスシーンでの追い上げで22-20と逆転勝利を挙げている。

 うまくいかない試合でも最低限の結果を勝ち取っている。いったいなぜ、一昨季、昨季の順位が4、5位というブレイブルーパスが、王者さながらの「レジリエンス」を持ち合わせているのか。

 ニュージーランド代表勢の加入や勝ってきた事実が集団に自信を付与していることも理由に挙がりそうだが、それ以前からの積み上げも無視できまい。右プロップの小鍛治悠太はこう証言する。

「練習でコーチ陣が(詳細を)詰めてくれている。(点差、時間帯などの)シチュエーションを想定し、『この場合は、こうする』みたいな練習を。あと、よくクリップ(映像)を出して『こいつは、諦めずに走っているぞ』というのを見せる。(いい習慣が)浸透している」

 自分たちにとってよい働きをクリアに定義づけ、高次で再現できるよう促し続けた結果、いまがある。

 ブレイブルーパスは一時、責任企業の苦境から新人獲得に難儀していたもの。最近では望月雄太・前採用の地道なアプローチでその流れを変えつつあり、各年代の骨太な主戦級を招いている。然るべき才能に然るべきコーチングを施した堆積が、新戦力の加入でさらに引き立っている。

 組織作りは1日にしてならず。

リーグワン ディビジョン1 第13節 結果

花園近鉄ライナーズ 33―52  横浜キヤノンイーグルス

リコーブラックラムズ東京 26―50 埼玉パナソニックワイルドナイツ

静岡ブルーレヴズ 31—31 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

三菱重工相模原ダイナボアーズ 20―37 トヨタヴェルブリッツ

東京サントリーサンゴリアス 60―10  三重ホンダヒート

東芝ブレイブルーパス東京 40―40 コベルコ神戸スティーラーズ

リーグワン ディビジョン1 第13節 私的ベストフィフティーン

1,茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)…スクラム、好突進、相手の快速選手を仕留めるタックル。

2,日野剛志(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…スクラムを終始、優勢で終える。防御やスイープでも魅した。

3,垣永真之介(東京サントリーサンゴリアス)…スクラムで優勢。ジャッカルも繰り出した。

4,ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…前半3分頃の中盤でのチョークタックルを先制点の呼び水とし、以後は危険地帯へのカバー、ラインアウトスティール、鋭いキャリーと八面六臂の活躍。失点直後の自軍キックオフでボールの落下地点へアクションし、味方の追加点を引き出したのは67分のことだ。

5,ルード・デヤハー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…終盤まで運動量と集中力を保ち、接点周辺でのラン、チョークタックル、ラックチェイスで渋く光る。

6,ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…相手の接点へ球に絡んでのターンオーバー、ルーズボールを受け取っての突進で試合の主導権を渡さず。

7,山本凱(東京サントリーサンゴリアス)…強烈なタックルでゲインラインを押し戻すこと多数。突進も効いた。相方の箸本龍雅とともに奮闘。

8,アマナキ・サウマキ(コベルコ神戸スティーラーズ)…2トライを奪うなど力強いキャリーを重ねた。

9,流大(東京サントリーサンゴリアス)…死角へのパス、キックがワンサイドゲームを引き寄せた。

10,田村優(横浜キヤノンイーグルス) …ゲインライン付近でのパス、防御の裏側へのキックで前進を図った。

11,マリカ・コロインベテ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…鋭いキックチェイス、爆発力。

12, イザヤ・プニヴァイ(東京サントリーサンゴリアス)…要所で長距離のランニング。タックルも力強かった。

13,チャールズ・ピウタウ(静岡ブルーレヴズ)…オフロードパス、杭を打つような突進、防御を引き寄せながらのスペースへのさばき。

14,尾﨑晟也(東京サントリーサンゴリアス)…インサイドサポート、大外での待機から2トライと決定力を示しながら、逆側へスイングする動きで数的優位も作った。

15,ボーデン・バレット(トヨタヴェルブリッツ)…スタンドオフでプレー。死角で球をもらってのフィニッシュや50・22のキックなど個人技が冴えた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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