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プレーオフ争いの裏にある「皮肉」とは。/リーグワンD1第12節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
球を持つのは昨季リーグ戦トライ王の尾崎晟(写真提供=JRLO)

 国内リーグワン1部のプレーオフ争いにあって、第11節終了時まで4位だったのがコベルコ神戸スティーラーズだ。

 1年限りの加入となるフランカーのアーディ・サヴェアが攻守で爆発するうえ、ロックのブロディ・レタリック共同主将が鋭い出足と危機察知能力で堅陣を支える。

 前年度9位と低迷も、デイブ・レニー新ヘッドコーチが豪華戦力を最適化していた。レニーはニュージーランドのチーフス、オーストラリア代表のボスとして厳格な姿勢で知られていた。

 上位4傑によるプレーオフ行きに迫ったなか、第12節では目下3位の東京サントリーサンゴリアスにぶつかった。

 4月7日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場。27―36で屈した。

 前半は敵陣深くまで攻め込みながら、タフな防御に跳ね返されること多数。守ってもイエローカードが2枚と規律を乱した。6―8とリードされて後半を迎えてからは、向こうの端から端まで球を動かす攻め、中盤の接点でのペナルティに苦しめられ、徐々に点差をつけられた。

 対するサンゴリアスはラストワンプレーでラインアウトのエラーから失点したのを受け反省も、防御組織の整備、フッカーの堀越康介主将曰くタックラーの素早い起立を「レフリーにクリアに見せる」という順法精神には手応えを掴む。

 フルバックの松島幸太朗は、チーム状況を聞かれて応じる。

「波は多少、ありますけど、よくなっている感じはする。むらなくやっていきたいです」

 これでスティーラーズは5位に転落。もともと5位だった横浜キヤノンイーグルスが、6日の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でリコーブラックラムズ東京に31―12で勝ったのと相まってのことだ。

 来る第13節。イーグルスが目下最下位の花園近鉄ライナーズとぶつかるのに対し(12日/東大阪市花園ラグビー場)、スティーラーズは現在2位の東芝ブレイブルーパス東京に挑む。

 このブレイブルーパスにあって「神戸戦の週は、ミーティングでいつもより多くの映像を出してしまいます!」と話すのはタイ・リーバ。トッド・ブラックアダーヘッドコーチの「相手に容赦なく襲いかかるチームにしたい」という要望に応え、鋭い出足の防御を唱える新アシスタントコーチだ。

 前年度までスティーラーズで指導にあたっていたとあり、このクラブが生来的に有するつぼにはまった際の強さを警戒。第3節(ノエビアスタジアム神戸/46―39)に続く同カード2連勝へ、気を引き締めていた。

「彼らがどれだけいいチームなのかを知っていながら最大限の準備をしないのは罪だと思い、自分が知る部分も含め伝えようとしている。いつもより気合いが入っています」

 当時のスティーラーズでは当時の総監督で現メンターのウェイン・スミス氏がスタイルの大枠を策定。ヘッドコーチ、アシスタントコーチも、スミスの作る流れに沿ってチーム戦術を整えていた。

 そのためリーバも、多くの裁量を任されているブレイブルーパスで落とし込むのとは違ったシステムを唱えていたという。

 チームは生き物。結果の裏には積み重ねがある。

 レニー体制発足までの背景に触れ、リーバはこうも述べた。

「皮肉なことに、自分が在籍した結果の出ない時期がなかったら、世界的な名将と呼ばれるデイブ・レニーを連れてくる動きはなかったでしょう。いまはメディカル、S&Cにも彼が信頼する能力の高いスタッフを配置。今季はプレーオフ行きを争っている段階ですが、優勝に手をかけるのも時間の問題です」

 ブレイブルーパスは第12節で、前年度王者で第11節終了時に6位というクボタスピアーズ船橋・東京ベイに22―20で辛勝。好機をエラーで逃し続けながらも、ラストワンプレーで逆転した。

 思うに任せなかった試合を勝ったことでかえって強さをにじませるなか、怪我からの復帰が期待されるのはリーチ マイケル主将。自身の練習復帰を間近に控えていた4月某日、出場が流動的な次戦のポイントを簡潔に語る。

「神戸は次が『ファイナル』ですよね。次に負けたら、(プレーオフ行きは)かなり厳しい。(焦点は)そこですよ。彼らのその必死さと、自分たちの必死さがマッチしたらだめ。(自分たちの必死さが相手のそれを)上回らないと」

リーグワン ディビジョン1 第12節 結果

リコーブラックラムズ東京 12―31  横浜キヤノンイーグルス

静岡ブルーレヴズ 43―14 三重ホンダヒート

埼玉パナソニックワイルドナイツ 53—12 三菱重工相模原ダイナボアーズ

トヨタヴェルブリッツ 47―30 花園近鉄ライナーズ

コベルコ神戸スティーラーズ 27―36 東京サントリーサンゴリアス

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 20―22  東芝ブレイブルーパス東京

リーグワン ディビジョン1 第12節 私的ベストフィフティーン

1,茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)…スクラム、突進、モールでの壁役。

2,坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…強烈なタックル、モール防御、ルーズボールへの反応。インサイドサポートでチャンス拡大も。

3,垣永真之介(東京サントリーサンゴリアス)…得点後の攻防で好ジャッカル。我慢の時間帯に好守。

4,リアム・ミッチェル(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…タックル、ハンズパス、ワークレート。

5,ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス)…タックル、接点への身体の差し込みが効果的だった。

6,ラクラン・ボーシェ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…隙あらば球に絡んだ。自陣22メートルエリア線付近でのピンチでジャッカル。直後のスコアで試合の流れが定まった。

7,嶋田直人(横浜キヤノンイーグルス)…序盤、守勢に回るなかでチョークタックル、ジャッカルを重ねて向こうのリズムを鈍らせた。数的不利を強いられていた26分には、自陣の深い位置でコーバス・ファンダイクらと走者を羽交い絞め。失点を防いだ。

8,ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…再三のラインアウトスティール、軽快な走り。

9,藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…持ち出しからのランとパスのコンビネーション、キックチャージ、スクラムからの防御のコース取り。相手の嫌がる動きを重ねた。

10,松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…防御の近くまで迫りながら大外の空洞へキックパスを放ち先制点を演出。

11,マリカ・コロインベテ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…防御の動きを見切ってのフィニッシュ、キックチェイス、速攻。

12,梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)…突進を繰り出してすぐに迎えたフェーズで、味方のキックを追う選手をサポート。そのままフィニッシュした。防御時のラインスピードも光った。

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…横と繋がって防御網を保つ。ターンオーバーからのアタック、自陣からの速攻に参加して正確なスキルを発動。

14,尾崎晟也(東京サントリーサンゴリアス)…自陣ゴール前でのジャッカル、タッチラインの外に出されぬ粘り腰。キックとチェイス。

15,キーガン・ファリア(静岡ブルーレヴズ)…自陣ゴール前からの速攻でチャンスを拡大したり、キックオフレシーブからのビッグゲインでノーホイッスルトライを演出したり。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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