Yahoo!ニュース

強いチームにある「答え」。ワイルドナイツで復帰の福井翔大に聞く。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 一昨季まで国内ラグビーシーン2連覇の強豪、埼玉パナソニックワイルドナイツが、今季のリーグワン1部の第12節終了時点でプレーオフ行きを決めた。同リーグ発足元年から3季連続。 

 4月6日、本拠地の熊谷ラグビー場で三菱重工相模原ダイナボアーズを53―12で破った。12戦全勝。翌日の他会場の結果を受け、4位以上を確定させた。混戦模様の今シーズンにあって、第13節で決めた昨季よりも1週早く大台に達した。

 もっとも、今季限りで引退の堀江翔太は「皆、あまり知らないんじゃないですか」。自らも決定の翌日の8日、クラブハウス内で同僚から聞いて知ったという。一戦必勝の構えだ。

 なかでも日々の取り組みを大切にしたいと訴えるひとりが、福井翔大である。身長186センチ、体重101キロの24歳で、東福岡高校から大学を経ずにプロ入りしたことで話題を集めた。

 昨秋は日本代表の一員として、ワールドカップフランス大会に出場。閉幕後はリーグワンでの王座奪還へ決意を新たに奮闘も、第7節の故障からしばらく戦列を離れていた。

 復帰したのはダイナボアーズ戦の後半16分。接点に絡む際の強靭さを示したうえで、本人はこう振り返った。

「うちのチーフの竹蓋(真哉=メディカルトレーナー)さん 、佐藤(義人=堀江らも師事する治療家)さんの判断、みんなの協力のおかげでここ(復帰)まで来られた。『自分のプレーをできるのかな』という不安が強かったので、(終わってみると)安心し、久しぶりのそのラグビーの温度感が味わえて楽しいという印象でした」

 取材に応じたのは8日の練習後。話の流れで、多くのファンが一度は思う「ワイルドナイツはなぜ強いか」のトピックに触れる。

「答え、であったり、何か問題が起きた時に何が悪かったかがわかること(が大事)」

 独特な見立てに、集団競技の本質をにじませる。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「うちには、作り上げてきたものがある感じがします。1年目の2018年度にトップリーグ6位を経験している(20年度以降は2度優勝)。そういった意味でも(いまは)すごいチームになってきているんじゃないかなと思います」

——当時になくて、いまあるものは何か。

「答え、であったり、何か問題が起きた時に何が悪かったかがわかること。

 やっぱり、チームがうまくいってない時って、答えがない時だと思うんですよね。自分たちがやっていることに一貫性がなかったりだとか。同じページを見られていなかったりするから、そういう(問題解決に関する)質問しても答えが出てこないです」

——「答え」はどう作るか。

「コーチ陣、リーダー陣のなかに『アタック、ディフェンスのシステムはこれがある。やり続ける』というのがあるから。見ていてわかると思うのですけど、うちには『誰かが試合に出るならその人のスペシャルサインを作る』というものは多分、ないと思います。それは、ロビー(・ディーンズヘッドコーチ)が作り上げたものなのかなと思います。

 答えを作ることは難しい。ひとりひとりがチームのシステムを信用していないとその話を聞こうとも思わないし、海外のビッグネームは違うことをしだす。(それに対し、ワイルドナイツは)チームを信頼していますね。言われたことをやれたら勝てていて、そうでないとチームの足を引っ張っちゃう」

 以下、しばらく筆者の見解を記す。

 現在リーグワンには海外のスター選手が相次ぎ参戦しているが、実力者の採用が成績に反映されないことは決して不思議なことではない。

 ラグビーでは福井の言うところの「答え」、つまり、そのチームにとっての目指す動きの詳細が選手間、スタッフ間で高次で共有されているかが肝要だ。複数の選手やスタッフの証言から明らかだ。

 ワイルドナイツは各国代表経験者をずらりと並べていることで注目されるが、その隊列が一定の「答え」をもとに一枚岩となっているのが真骨頂である。

 それは、試合中のあらゆる現象から読み取れる。

 選手間の幅を保って広範囲をカバーする組織守備、攻める方向へ洪水のごとくあふれる攻めのフェーズアタック、球の蹴り方や追い方の落とし込み、圧力下においてもスペースにパスをさばく技能、タックルやジャッカルを決める際の歩幅や姿勢の身体化…。

 ちなみにチームにいるフランス大会日本代表の計11名のうち、ジャック・コーネルセン、ベン・ガンター、ディラン・ライリーの3名はテスト生出身である。

 さらに堀江も、当時日本一未経験の帝京大学からニュージーランド挑戦を経て入部。ヴァル アサエリ愛は無名の埼玉工業大学から加わっていて、いまのプロップを始めたのはワイルドナイツに入ってからだ。

「笑わない男」として知られる稲垣啓太は、関東学院大学4年時に加盟リーグでの下部降格を味わっている。

 世代随一の逸材と見られていた高卒の福井を含め、ワイルドナイツの選手は入部前の才能と並んで入部後の鍛錬で光っている。好素材がワイルドナイツで戦うのに必要な資質を獲得した結果、世界で戦えるようになったとも取れる。

 これらの経緯を鑑みれば、ずっと勝っているこのクラブの現状を受け「戦力の偏り」とやらを論じるのがいかに本質と異なるのかがわかる。

 改めて福井の問答。

——離脱前、ニュージーランドのチーフスを迎えたクロスボーダーラグビーで勝利しています。

「チームでこれまでやってきたことをやっただけ。だから、だから僕らがやってきたことは間違ってなかったかなと改めて感じました」

——ワイルドナイツの強さの秘訣について。他に何かありますか。

「あとやっぱり、お互いがお互いをリスペクトしあっている。ノンメンバーの選手に対しても、この人が試合に出たらやれると思っている。そういった一体感もあると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事