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イングランド代表主将の出場停止に、対戦する日本代表指揮官の反応は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
出場停止処分を受けるファレル(写真:ロイター/アフロ)

 ワールドカップフランス大会の開幕を今年9月に控えるラグビー日本代表は現地時間8月26日、トレビゾでイタリア代表との本番前最後のテストマッチをおこなう。同24日にメンバーを発表した。以下の通り。

1,クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/10/29・12

2,堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1986/1/21・71

3,具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)…183・117・1994/7/20・24

4,ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・110・1994/10/13・15

5,ヘル ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…193・120・1990/7/12・18

6,リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)…189・113・1988/10/7・79

7,福井翔大(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・101・1999/9/28・1

8,姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…187・108・1994/7/27・28 ◎

9,流大(東京サントリーサンゴリアス)…166・75・1992/9/4・33

10,李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)…176・85・2001/1/13・9

11,ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)…177・95・1994/4/12・3

12,長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…179・90・1999/11/25・3

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・102・1997/5/2・13

14,セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)…181・93・1992/6/9・4

15,松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)…178・88・1993/2/26・50

16,坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1993/6/21・36

17,稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/6/2・48

18,ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・115・1989/5/7・25

19,サウマキ アマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ)…189・108・1997/3/8・0

20,ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・120・1997/10/24・7

21,齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)…165・73・1997/8/26・14

22,松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…181・92・1994/5/3・32

23,中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)…182・92・1991/6/3・34

◎=主将

…以下=身長・体重・生年月日・キャップ数

 今回、ワールドカップに4大会続けて出る堀江翔太らが先発。7月の試合でレッドカードを受けていたリーチ マイケルも、出場停止処分が明けてスターターに回った。メンバー選出の意図やゲームプランについて、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見で語った。

会見に応じるジョセフ(スクリーンショットは筆者制作)
会見に応じるジョセフ(スクリーンショットは筆者制作)

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——メンバー選考の意図は。

「今回はワーナー・ディアンズ、アマト・ファカタヴァが怪我をしていて、ラピースもレッドカードでいない(ピーター・ラブスカフニ=8月5日のフィジー代表戦でレッドカードを受け、出場停止期間中)。キーマンを3人も欠いているなか、判断しています。

 それによって今まであまりチャンスのなかった故障明けの福井翔大、サウマキ アマナキが入りました。サウマキは負傷から戻ってハードワークしていたのですが、ずっと競争の激しいポジション(ロック)にいたため、今回初めて機会を得ました。

 クレイグ・ミラー、姫野和樹、具智元、リーチ マイケル、ジャック・コーネルセンらは、一貫性を持ったプレーをしてくれるキープレーヤーなので、今回も入りました」

——司令塔団の位置づけ。

「ナギ(流大)はリーダーシップ、スピード、経験からなるいい判断をもたらしてくれます。試合の最初に、チームへ自信をつけさせてくれる。齋藤直人もいい選手ですが、どちらがスタートでどちらがフィニッシャーかを色々と試すなか、今回はナギにスタートを託しました。松田力也も経験がありますが、まだまだトップパフォーマンスは発揮していないと感じます。そのため承信をスタートで起用しようと思っています」

——ウイング、フルバックの起用理由。

「この3人がベストプレーヤーだと思うから。テストマッチに勝つにはこの3人がいいと思っています」

——国内戦の時期から、フォワード第1列の先発組、リザーブ組を様々に入れ替えているような。

「フィジー代表戦の先発3人(稲垣啓太、坂手淳史、ヴァル アサエリ愛)は、もっといいスタートをして欲しかった。(ラブスカフニの)レッドカードもあってか、受け身で、強度が高くない状態で試合を始めてしまいました。

 堀江翔太は所属のワイルドナイツでもいいラグビーをしている。今回はスタートとして、チームにどんなものをもたらすかを見ていきたいです」

 冒頭で故障者の名を挙げる際、バックアップメンバーに回っているアマト・ファカタヴァの名を挙げていた。今夏の国内戦全5試合でロックとして先発したファカタヴァへの信頼度の高さがうかがえる。

 ファカタヴァはバックアップメンバーとしてチームに帯同している。チームの大会参加日程が全て終了するまで、出場機会を探ることとなるか。

 またウイング、フルバックにスピードランナーを並べていることからは、本番で波状攻撃を仕掛けたい意図が垣間見える。

——いまのチームの状態は。

「国内の5試合ではレッドカードが出て、チームにフラストレーションがたまり、変に自信を削ぐことに繋がった。怪我人も出た。しかし、バッドラックは全て(日本に)置いてきた。いまはフィジカルともにいい状態。

 今週は大事です。ワールドカップへ向かうなか、メンタルを準備しないといけない。ワールドカップのセレクションが日本国内で終わったことで、いまの選手はプレーに集中できていると見ます。それまでは自分が選ばれるのかという不安があるなかでプレーしていましたが、いまは33人が一体化し、集中できているように見えます」

——この時期にイタリア代表と戦う意味。

「イタリア代表はパーフェクトな相手。過去8戦中2度しか勝っていない、欧州6カ国対抗で揉まれている相手です。セットピースベースのゲームをする。ワールドカップで戦うイングランド代表、アルゼンチン代表にも同じようなところがあります」

——今週の戦い方は。ポゼッション重視か、キックを交えるか。

「暑くて手が滑るなか、どれくらいボールを保持するか、いつ蹴って相手に渡すかのバランスは大事。自分たちのラグビーがどういうものか、自分たちはわかっている。それを気候、相手によって変えていこうと思います。

 キッキングゲームのバランスと、プレッシャー下でのゲームコントロールを見ています。自分たちのラグビーができていればいいプレーをする。プレッシャー下でいかに一貫したプレー、コントロールができるかを見てみたい」

——ここ数試合、キックの本数が減っている。ワールドカップ本戦に向けて意図的にそうしているのか。

「前回、キックの本数が減っていたのは、相手がフィジー代表だったから。彼らにボールを与えると危険だったのでそうせず、フィットネスで勝負するつもりだった。レッドカードでストレスがかかり、修正に時間がかかりましたが。

 フィジー代表やオールブラックス(ニュージーランド代表)のようにボールを渡したら危険な相手との試合では、自分たちのフィットネスで勝負する試合をします。ただしイングランド代表やアルゼンチン代表のようにスクラムの強い相手との試合では、バランスが必要になります」

——スクラムはどう修正するか。

「フォワードが8人いれば問題ない。長谷川慎さんのコーチングでハードトレーニングしています。身体が大きくない分、強い相手に対してレジストできるスクラムをやってきています」

 大会中の注目ポイントには、対戦国の動向もある。

 日本代表と予選プール同組のイングランド代表では最近、オーウェン・ファレル主将の処分が二転三転した。

 まず12日のウェールズ代表戦で危険なタックルをしたとして、当初出されたイエローカードからレッドカードに判定が変わって退場。レッドカードをもらった選手はその後に出場停止処分を受けるのが一般的ななか、試合後の裁定委員会はレッドカードへの変更は誤りだったとし、処分が再びイエローカードに引き下げられた。

 しかし22日までに、国際統括団体のワールドラグビーが異議申し立て。試合中に出された退場処分が支持され、ファレルは4試合出場停止の処分を受けた。これによりワールドカップではアルゼンチン代表との初戦、さらには日本代表との2戦目に出られなくなった。

 危険なタックルへの判定がより厳格になる渦中の出来事。夏の国内戦でリーチ、ラブスカフニをレッドカードで失っているジョセフは、強豪国との大一番で相手のキーマンがプレーできなくなった事実をどう語るか。質問に応じた。

「イングランド代表は乗り越えるしかない。我々もリーチとラピースを失ったことでダメージを受けました。ワールドカップでは間違いなく全てのチームに影響する。今回のワールドカップでは、(レッドカードに伴うトラブルに)適応し、乗り越えられるチームが勝てると思います」

 ちなみにこの会見は、対面とオンラインを併用した。現地取材者の質疑を優先し、その後、オンラインでつなぐ日本の報道陣の質問も受け付けた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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