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勝手に編成。対ワイルドナイツ勝利へ理想のスコッド。スピアーズ戦展望も【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
21―19と競り合ったイーグルス戦。クリエルとライリーのマッチアップ。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 どこまで勝ち続けるのか。

 一昨季の旧トップリーグ最終年度から国内タイトル2連覇中の埼玉パナソニックワイルドナイツは、2シーズン目に突入した今季のリーグワンでも開幕9連勝中だ。

 直近の第9節では、コベルコ神戸スティーラーズに48―10と快勝。序盤に反則で相手に得点機を与えながらも、前半を10―7とリードで折り返した。

 自陣での防御が冴えた。

 ロックのリアム・ミッチェル、アウトサイドセンターのディラン・ライリーがタックルしては起き上がり、また刺さる。もしくはカバーに回る。接点ができれば、フッカーの坂手淳史主将らが向こうのサポートよりも先にボールへ絡む。

 後半は向こうに計2枚のイエローカードが出たなか、要所で加点した。得点機を作るまでの動き、得点機を掴むまでの動きに統一性がにじんだ。

 ワイルドナイツに白星が積まれるほど、昨季のシーズンMVP、フッカーの堀江翔太が笑いながら残した談話が深みを帯びる。

「どのチームも、どのレフリーも、どのメディアも、僕らに負けて欲しいと思っている。どう考えてもそうでしょ。僕が逆の立場やったら、絶対にそう思います。…でも、こういうプレッシャーを味わえるのは、(連覇している)いましかない。いつかは負けるかもしれないですけど、自分たちがやって来たことを出さずに負けるのはよくない。自分たちのやって来たことをしっかり出して、負けたらしゃあない。それと、やってきたことを出せれば勝てると、僕らは思っている」

 これからは上位陣との連戦がある。

 第11節(3月11日/東京・秩父宮ラグビー場)では同2位の東京サントリーサンゴリアスが昨季の決勝と同カードに臨む。さらにその前の第10節(3月4日/埼玉・熊谷ラグビー場)へは、昨季3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイが見参する。

 スピアーズは開幕節でサンゴリアスを破り、ここまで負けなし(1分)と好調だ。

 シーズン中盤にはリードを奪った後の戦術の遂行力に改善点を覗かせながらも、ここ2試合では目指す複層的な攻撃を首尾よく運用した。

 序盤戦好調の三菱重工相模原ダイナボアーズ、東芝ブレイブルーパス東京から、続けて大量得点を奪った。

「我々の持っている約束事(システム、プラン)のなかで、ひとりひとりが役割を徹底すれば、絶対にスコアチャンスは生まれる。(うまくいかなければ)プランBもある。(皆で)一緒になってアタックしよう。そう常々、言っています」

 こう話すのは、スピアーズの田邉淳アシスタントコーチ。フラン・ルディケヘッドコーチのもと、攻めのシステムと技術を涵養する。

 ワイルドナイツのOBでもある田邉は、王者へどう挑むか。

 相手が強みに掲げる堅守を破るか、あまり堅守を披露させないようキックを多用して落下地点へ圧をかけるか…。大まかな計画はこのどちらかに二分されそうななか、田邉は具体策を明かさずに展望した。

「接点がひとつ。ボールがひとつ。それ以外のところをどう破っていくか…」

「我々もずっとボールをキープし続けるということはないと思う。我々もキックを採り入れ、遂行力もある。どこでどう使うかの判断だけをしっかりしようと思っています」

 焦点は「我慢」にあるとも話す。

「我々にも得点力がある。そこには自信を持っていい。ただ相手もディフェンス力があるから、そこに自信を持ってくる。どちらが、先に我慢できなくなるか(が勝負を分ける)、じゃないですか」

 ここでの「我慢」とは、最後までクラブの「約束事」を破らずにプレーし続けることを指すだろう。圧力下でのハンドリングや判断のミス、反則を避けたい。

 組織としての「我慢」する資質。最高潮に達した際のワイルドナイツが、もっとも誇れる領域にもあたる。その「我慢」に焦点を当てるスピアーズは、きっと奇をてらわずに自分たちらしく勝ちたいと考えているのだろう。

 このほど、数年来、チームが定期的に知見を請うジョン・クイーン・メンタルコーチを本拠地に招いた。

 これまで培ってきた実力を大舞台で発揮すべく、心理面でも準備を施す。

「チームとして共有することは、『ビッグゲーム。メディアの発信力は高まる。それは当然だ』。それで我々のなかで変わることは何か? 変わらない。プロセス、準備、ゲームプランも変わらない。開始早々に20点を取ったとしても、取られたとしても変わらない。我々のラグビーを思い切ってぶつける。それが、いまのところのプランですね」

 ここからは余談。1部に加盟する全11チームが目指しているであろう打倒ワイルドナイツに、最も近づきうるスコッドを独自で編成した。

 競技の本質に即せば、混成チームが勝つのは難しいのは明白。組織で動いていない「夢のスコッド」よりもスピアーズ、サンゴリアスのほうがはるかに目標達成に近いのを前提としつつ、下記の条件のもと23名を編んだ。

・総じて今季好調かつ、勝負強い選手を重用

・ワイルドナイツの攻めのテンポを鈍らせたり、タックラーを蹴散らしたりできるフィジカリティのある選手を重視(特にバックファイブ、ウイング)

・キックゲームに対処できる資質(キック力、カバーリング、ハイボール処理の技術など)を重視(特にスクラムハーフ、スタンドオフ、ウイング、フルバック、インサイドセンター)

・直接対決でワイルドナイツを苦しめたチーム、選手を特にチェック

・「仮想対決」のため、現在故障している可能性が高い選手も含める

・リザーブはインパクトより組織プレーの再現性に寄与しそうな人を並べる

・外国人枠のルールはリーグワンに準拠

1、岡部崇人(イーグルス)

2、中村駿太(サンゴリアス)

3、小鍛冶悠太(ブレイブルーパス)

4、ワーナー・ディアンズ(ブレイブルーパス)

5、ジェイコブ・ピアス(ブレイブルーパス)=カテゴリーB

6、下川甲嗣(サンゴリアス)

7、ピーター・ラピース・ラブスカフニ(スピアーズ)

8、クワッガ・スミス(ブルーレヴズ)=カテゴリーC

9、齋藤直人(サンゴリアス)

10、サム・グリーン(ブルーレヴズ)=カテゴリーB

11、木田晴斗(スピアーズ)

12、中村亮土(サンゴリアス)

13、ジェシー・クリエル(イーグルス)=カテゴリーC

14、イノケ・ブルア(イーグルス)

15、松島幸太朗(サンゴリアス)

16、日野剛志(ブルーレヴズ)

17、海士広大(スピアーズ)

18、垣永真之介(サンゴリアス)

19、コーバス・ファンダイク(イーグルス)=カテゴリーB

20、リーチ マイケル(ブレイブルーパス)

21、ニック・フィップス(グリーンロケッツ)=カテゴリーC

22、田村優(イーグルス)

23、レメキ ロマノ ラヴァ(グリーンロケッツ)

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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