Yahoo!ニュース

怪我で日本代表離脱のベン・ガンター、ワールドカップ行きへ「私には課題がある」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
登壇するガンター(筆者撮影)

 昨季のリーグワン王者である埼玉パナソニックワイルドナイツに所属するベン・ガンターが11月28日、12月17日に開幕する国内リーグワンのプレスカンファレンスに出席。来年のワールドカップフランス大会への思いを聞かれた。

 身長195センチ、体重120キロの25歳。オーストラリア出身でタイ国籍を持つ。

 もともと練習生として入ったワイルドナイツでは、2016年10月30日に19歳6日で当時の国内トップリーグ(TL)の最年少出場記録を更新した。代表資格を得る前の2018年、初めて日本代表候補に相当するスコッドへ名を連ねた。

 2019年のワールドカップ日本大会には、当該の代表資格を得るのに必要な連続居住年数をクリアできないことがわかって出場できなかった。

 それでも昨季、日本代表デビューを果たし、今夏は対フランス代表2連戦で活躍した。秋の代表候補合宿でも、実戦練習で得意のジャッカルを連発するなど好調を維持していた。

 好事魔多し。

 その秋のキャンプ中、左肘を故障。国内外での代表活動に加わることができず、雌伏の時を過ごした。

 来るべき実戦復帰へ、淡々と準備を重ねている。心境を明かした。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——日本代表の活動期間中に、怪我をしてしまいました。

「肘をオペしました。いまは手術を経て万全の状態に戻るよう、ワイルドナイツのスタッフとともにリハビリを進めています。復帰時期は調整中です。

 怪我をしたのは練習時のタックルの局面でした。疲労がたまり、肘の状態が芳しくないところ、必要なタックルテクニックを欠いてしまった。それがアンラッキーな怪我に繋がった。

 オペはオーストラリアで実施しました。それとともに、家族と急遽、会わなければいけない事情があったので(帰国した)。ワイルドナイツ、日本代表が私をバックアップしてくれて、(手術と家族との用事の)両方のことをさせてくれる時間を作れて感謝しています」

——怪我をした時は好調を維持していました。落ち込むことはなかったですか。

「もちろん怪我をした瞬間は落ち込みましたが、すぐに適切なオペができ、むしろワイルドナイツのシーズンをフルで戦う準備ができたと思っています」

——日本代表はこの秋、3つのテストマッチをおこないました。

「ゲームに出ていないことで、コーチ、ファンの目線から全体を俯瞰できたのがよかった。復帰後、これを活かしたいです」

——復帰後のジャッカルを楽しみにしているファンは多いですが。

「ジャッカルに注目していただくことはありがたいですが、それは私のプレーの一部です。ラグビーでは、ひとりではジャッカルができない。チームメイトがいいタックルをしてくれるから、自分が2人目としてジャッカルに入れる。お互いの繋がりのもと、幸運にも自分がターンオーバーに行ける位置にいる。自分だけではなく、チーム全体で練習してきたことをお見せしたいです」

——ワイルドナイツについて。

「毎年、前年度を上回ることをチームとして大事にしています。リーグ全体のレベルが高まっているので、現状維持は衰退と同じです。自分たちも成長曲線を描けるよう、選手、スタッフともに高い意識で練習しています」

 カムバックの向こう側には、来秋のワールドカップ初出場を見据えていよう。

——日本大会の出場を逃して3年が経過しました。ワールドカップへの思いは。

「前回大会には出られず、悲しい気持ちになったのは事実です。ただ、その経験は無駄じゃなかった。

 当時は心身ともにワールドカップへの準備ができていなかった。しかしこの数年間、国際舞台でプレーしてきた経験が自信になりました。また、コンスタントにインターナショナルレベルのプレーをするのに必要なフィットネスが身についてきた。フィジカル、メンタルが成長したなか、ワールドカップへ頑張っていきたい思いです。

 メンバーに決まったわけではない。選ばれるには沢山のことをしなければいけない。それと同時に、大会を楽しみにしています」

——日本代表では、ガンターさんのプレーするフォワード第3列の争いが熾烈です。元主将のリーチ マイケルも好調。どう見ますか。

「それは日本代表にとってもいいことです。高いレベルの競争により選手層が厚くなる。フィールド外での仲のいい友達が切磋琢磨する。そのなかで、私にはやるべき課題があります。特にアタックについてです。これからグラウンドに戻るにあたり、(怪我を治した腕での)キャッチとパスで自信を取り戻したいです。身体が記憶していたものを呼び戻せるよう、準備したいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事