Yahoo!ニュース

「簡単ではないと承知しますが…」。オールブラックス戦、日本代表の狙いは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
今年7月9日のフランス代表戦も国立競技場で(ボール保持者は山中、その右は齋藤)。(写真:つのだよしお/アフロ)

 ラグビー日本代表は10月29日、東京・国立競技場でニュージーランド代表とぶつかる。

 オールブラックスの異名をとるニュージーランド代表は、ワールドカップ3度優勝の強豪。最後に同カードがあったのは2018年11月3日。東京・味の素スタジアムで31―69と敗れている。

 今度の一戦は、2019年の同日本大会で初の8強入りを果たした日本代表にとってチャレンジングな80分間となりそうだ。

 27日、両軍の出場メンバーが発表された。同日、日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見。意気込みを語った。

会見はオンラインで実施(スクリーンショットは筆者制作)
会見はオンラインで実施(スクリーンショットは筆者制作)

 以下、メンバーと会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

背番号,名前(所属先)…身長・体重・生年月日・キャップ(代表戦=テストマッチ)出場数 ◎=キャプテン

1,稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/6/2・42

2,坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1993/6/21・30 ◎

3,具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)…184・122・1994/7/20・18

4,ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…201・117・2002/4/11・4

5,ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・110・1994/10/13・9

6,リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)…189・113・1988/10/7・75

7,姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…187・108・1994/7/27・22

8,テビタ・タタフ(東京サントリーサンゴリアス)…183・124・1996/1/2・12

9,流大(東京サントリーサンゴリアス)…166・75・1992/9/4・27

10,山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…176・84・1994/9/21・4

11,シオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ)…187・105・1998/12/20・9

12,中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)…182・92・1991/6/3・30

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・102・1997/5/2・7

14,松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)…178・87・1993/2/26・44

15,山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)…188・98・1988/6/22・24

16,日野剛志(静岡ブルーレヴズ)…172・100・1990/1/20・5

17,クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/10/29・6

18,竹内柊平(浦安D-Rocks)…183・115・1997/12/9・1

19,下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)…188・105・1999/1/17・0

20,ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…187・112・1997/1/20・4

21,齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)…165・73・1997/8/26・8

22,李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)…176・85・2001/1/13・3

23,ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…192・102・1989/4/13・3

——2018年以来の対戦。当時といまと比べ、どう進化したか。

「何度か話しているが、コロナ禍で1年間、活動がキャンセルされた(2020年)。その後、私たちは10数試合しかゲームができていない。オールブラックスはその約4倍の試合をしている。

 ラグビーができないなかでチームとして成長するのは難しい部分があるが、今年、たくさん試合ができていることは重要。若い選手が世界のベストチームと戦うことは素晴らしい経験になる。チーム総体の評価としては、後れを取っている。ただ、新しい経験を積んでいる。今後のツアーでも新しい成長を促していける」

——今回、勝つには。

「ティア1チーム(上位国)はパワーを使う。そこにどう対抗するかが重要。自分たちはセットピース(スクラム、ラインアウトといった攻防の起点)からもいいボールを供給し、バックスにいいアタックをさせる。ここが明確なフォーカスだと思っています。

オールブラックスはセットピースからドミネートして、ゲームコントロールをしようと試合に入るでしょう。止めるのは難しいでしょうが、そこへの対策に大半を費やし、練習しました。セットピースから質のいい球をバックスに供給できれば、素晴らしいトライを見せられると思っています」

——2018年といまとで、今回のほうがより勝つイメージが明確では。

「前回、具体的にどんなイメージだったかは覚えていない。ただ選手たちがプランを理解し、遂行できるかが重要。オールブラックスのパワー、オフロード、運動能力にどう対抗するか。セットピースを止めればチャンスは生まれると思いますし、勝てるチャンスが出る。簡単ではないと承知していますが、そうしてプレッシャーをかけたい」

——メンバーに入ったワールドカップ経験者への期待は。

「シニアメンバーは練習でもしっかりリードしてくれた。選手たちからもいいメッセージを伝えてくれた。自国の国立競技場で、約65000人の前で試合ができるのは素晴らしい。ワールドカップ経験者はそこで成功したことでの信念を持っていると思う。いい試合をしてくれるのを願っています」

——司令塔のスタンドオフでは、山沢拓也選手が今年2度目のスターターとなりました。対オーストラリアA・3連戦で2試合に先発した李承信選手はベンチスタート。司令塔団では他に、スクラムハーフで流大選手が先発し、齋藤直人選手がリザーブに回ります。

「山沢のことはコーチ陣が評価している。前回(夏の対フランス代表2連戦で)はコロナ、怪我(秋に脳震盪)でしっかりした準備ができなかったが、いまは身体の調子がいい。順調に、練習もできている。ここで彼に機会を与えようと、私は考えていました。

(司令塔団の)コンビネーションを…という考え方は持っていない。流は前回の試合で素晴らしいパフォーマンスをしているし(対オーストラリアA・3連戦の3試合目に先発)、他選手からもリスペクトを得ている。リーダーとしても素晴らしいと知っている。大きな価値がある選手である流と山沢がオールブラックスを相手にどんなプレーをするかを観たくて、起用しています。

李は若くポテンシャルがある。今週はリザーブから出てどんなインパクトを示せるかを見たくて、このような起用法にしています」

——リザーブ陣の顔ぶれについて。

「前回の試合で学びがある。20点差で勝っていても、メンタルで相手に勢いを与えたらプレッシャーがかかる(対オーストラリアA・3試合目の展開。大量リードを終盤に詰められた)。今回、後半は、経験のある選手がその経験を活かす。ミラー、齋藤、李も同じ。後半の流れを作ることは大事」

——日野選手がリザーブに入った理由は。

「複数のフッカーの候補がいるなか、リーダーとして引っ張ってくれている。彼がいることで他の選手へ彼が声かけをしてくれるケースも出る。彼がどんな試合をするか、楽しみにしています」

——オールブラックスのメンバー構成について。

「オールブラックスにはクオリティの高い選手がいるので、誰が出ても一緒。(首脳陣が)ゲームタイムを与えたい選手もいる。また、休み明けでリフレッシュできていると思います。我々は相手を選手個々として見ていませんが、デイン・コールズら経験者が戻ることを受け自分たちのラグビーをしなければ(と再確認)。大事にすべきは、自分たちのチームにフォーカスすることです」

 チームは今年、7月に対フランス代表・2連戦、10月には「JAPAN XV」名義で対オーストラリアA・3連戦最終節を実施した。

 強豪国を相手に自軍のプレースタイルを遂行するのを主目的とし、計5戦の戦績は1勝4敗。2023年のワールドカップフランス大会で2大会連続での決勝トーナメント進出を果たすべく、日本大会時より若返ったチームに経験値を与えている。強化の途中段階だ。

 今度の会見で「自分たちのチームにフォーカスすることです」と強調するのは、そうした背景からだろう。内省的な態度で組織を、主力候補を成長させる。

——今度の大一番をどう捉えるか。

「素晴らしい経験です。特に山沢は、(国内)リーグワンでは沢山の試合に出ている。ただ、個々でオールブラックスと戦えることには価値がある。ワールドカップ前にこのような試合が必要。今年のフランス代表戦、オーストラリアA戦はチームとして成長できる試合でした。今度の試合も大切なものになります」

——オーストラリアA戦後、オールブラックス戦の週間前までやや長期のオフを与えています。そのスケジューリングの意図、集合後の感触は。

「選手はいままで(9月上旬からの候補合宿を除いても)約4週間、厳しい合宿をしてきた。休みを与えるにふさわしいと思いました。結果、しっかりリフレッシュして、家族、友人からエナジーをもらって、いい精神で戻ってきてくれた」

 指揮官が中長期的な視野でチームを強化するなか、最前線に立つ選手たちは真剣に勝利を目指す。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事