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下川甲嗣、日本代表「初陣」で見た課題とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
身長188センチ、体重105キロ。今後はもっとボールタッチも増やしたいと話す。(写真:つのだよしお/アフロ)

 この秋、ラグビー日本代表に初選出された23歳の下川甲嗣が、10月1日、東京・秩父宮ラグビー場で「デビュー戦」に臨んだ。

「JAPAN XV」名義で臨んだオーストラリアA戦へ、背番号6をつけて先発。50分間、プレーした。フォワード第3列のフランカーとして、コンタクトシチュエーションで魅した。

 前半6分、走り抜けようとしたランナーを横から捕まえ、上腕と背中の力で敵陣方向へと押し返して倒す。

 以後は防御ライン上をきびきびと動きながら、前半終了間際には自陣22メートル線付近でジャッカル。反則を誘う。攻めては突進、鋭い援護を披露した。

 試合後、ミックスゾーンで思いを明かした。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——相手から感じたものは。

「力強さはもちろん、スピードも感じました。相手に向かってくるスピード、展開スピード…。感じました」

——相手のすべてが海外出身者というなかで。

「1回、1回の接点の強さをはじめて感じた。想像通り、激しいなと」

——ただ、タックル時は相手に差し込まれず、その場で走者を止めていたような。

「ゲインライン(攻防の境界線)を切らせない。先に自分から仕掛けることは意識しました」

——今後の課題は。

「50分間、プレーしましたけど、リーチ マイケルさん(下川と同じフォワード第3列で元代表主将)、ラピースさん(こちらも主将経験者でフランカーのピーター・ラブスカフニ)は80分間、ハードワークしていた。2人のしていることのすごさを改めて実感した。僕も、80分を通してハードワークできるようになりたいです」

——と、言うことは、50分のプレーでも疲れがあったのでしょうか。

「ありました。前半、プレーが切れずにずっと続いていた時間があったので、思った以上に、疲れました」

——その「切れずにずっと続いていた時間」を終わらせたのは、下川選手のジャッカルだったような。

「(笑いながら)…正直、ちょっと、覚えてないです」

 最後まで試合に出たかった。ただ、最後まで出ていないかったなかでも疲れを感じた。素直な思いだろう。

 ひとまず、国際レベルでフル出場できる選手となることが、目標とするワールドカップフランス大会出場への第一条件となるのだろうか。フランス大会は2023年におこなわれる。

 福岡の草ヶ江ヤングラガーズ、修猷館高校を経て入った早稲田大学では、3年時に大学日本一を達成した。

 2021年度に現東京サントリーサンゴリアスへ入ると、旧トップリーグのデビュー戦においてファーストタッチでトライを決めたり、自身2シーズン目にあたるリーグワン元年で開幕からレギュラーになったりとインパクトを示す。

 シーズン終盤は故障で離脱も、9月からの候補合宿にリストアップされた。代表首脳からの評価が高い証か。仲間からの評価も上々。タフな実戦練習を通し、主力組を驚かせた。

 例えば、同じフォワード第3列の姫野和樹は自ら下川の名前を挙げて言った。

「下川はいい選手。これからフィジカリティで強くなっていけばもっといい選手になる」

 ひたすらタフな選手を求めるジェイミー・ジョセフヘッドコーチも、こう話していた。

「フィットネスがあり、身体が強く、可能性がある選手。いい練習をしてくれていたので、いい勢いのまま試合に出てもらいたい」

 今回の出番を掴んだこと自体、信頼の証ともとれる。渦中、本人は冷静に立ち位置を見つめていた。試合前日の会見に出席した際、こう述べていた。

——ポジションを勝ち取った心境は。

「今回、対オーストラリアAの第1戦でのスタートメンバーとなった。大きなチャンスだと感謝していますし、いますごくわくわくしている。ポジションを取ったという思いよりは、ジェイミーヘッドコーチに実戦でどれくらいできるかを見てもらえるチャンスを与えてもらったという感覚。ポジティブに捉えて、自分の持っているパフォーマンスを最大限に活かしたいです」

——オーストラリアA戦の持つ意味は。

「最終的な目標はワールドカップ出場。この3週間(合宿)では、チームのシステムのなかで自分の持ち味をどう表現するか、試行錯誤してやってきた。明日の実戦でそれを発揮する場がある。頑張りたいと思います」

——ここまでの学びは。

「グラウンド外のことから言うと…。合宿では、これまでの僕の人生でないぐらいのタフな練習があったなか、先輩方がどんな身体のケア、コンディション管理をしているのかで知識を得ました。グラウンド内ではスキルです。例を出すと、リーチとトレーニング後にインディビジュアル(個人練習)でオフリロードパス、タックルスキルをした。あとは、国際レベルで戦っていけるコンタクトレベルで、ハードに行く。それには、3週間(タフな合宿の)で身体が順応してきた部分です」

 チームは8、14日にも福岡、大阪でオーストラリアAとぶつかり、29日、オールブラックスことニュージーランド代表に挑む。こちらはオーストラリアA戦と違い、正規のテストマッチとなる。

 東京・国立競技場でのこの試合に下川が出られれば、オールブラックス戦でテストマッチデビューを果たすこととなる。

 試合前、3週間後にどうなっていたいかと聞かれた。即答した。

「とりあえず、明日の試合に集中したい。その結果、終わった時点でオールブラックス戦のメンバー選考に食い込んでいけたらと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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