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ジャパン、どうだった? 勝敗じゃない見方。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
フィフィタは防御に課題を残すも突破力と運動量は示した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 ラグビー日本代表は10月1日、東京・秩父宮ラグビー場でJAPAN XV名義でオーストラリアAとぶつかり、22―34で敗れた。

 来年9月からのワールドカップフランス大会を見据えるチームにとって、この秋のバトルは本番に向けた模擬試験に相当していそうだ。

 特に10月に3つある対オーストラリアA3連戦では、チーム戦術を遂行しながら勝利を目指し、その流れで収穫と課題を発見することが期待されていた。

 試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと坂手淳史キャプテンが会見した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ

「残念な結果になりました。(ツアーの)最初の試合とあって難しい部分があるなか、選手の意志は凄く感じられた。ディフェンスは機能してよかった。勝ちたい気持ちがディフェンスで現れていた。50~60分頃、相手に圧力をかけてポイントを取れた。しかし、最後にソフトなトライを獲られたと感じています。精度を意識し、一貫性のあるゲーム作りをしなければいけない」

坂手

「結果を出したかった、出せるゲームだったので、残念です。自分たちのラグビーができた部分、できなかった部分もある。しんどい時間を守り切ってこともありましたが、プレッシャーを受けて小さいヒビからゲインされ、トライまでいかれたところもある。アタックでは、ミスが多かったですね。ペナルティとミス、そこで僕たちの前に出ていくモメンタムを消してしまった。ここも修正したいと思っています」

 JAPAN XVは終始、大外への展開を封じるダブルタックルを機能させる。

 序盤こそ攻防の境界線より前から飛び出したとしてラインオフサイドを数多く取られたが、中盤以降は修正したような。

 トライによる失点は後半8、18、21、33分にあった。

 18分のシーンでは連続フェーズのさなか、飛び出すタックラーの死角へ多角度のパスを通されて少しずつ前進を許した。最後はラック周辺に人員が寄るなか、隙間を突かれた(ゴール成功で22―20)。

 33分は、自陣10メートル線付近右中間のラックから展開された。向こうの走者の1人が左から右に移ることにより、狭い区画で数的優位を作られた(ゴール成功で22―34)。

 この時、後方のカバーに回りながらタックルを外されたウイングの松島幸太朗は、改善点を明確化している。

「(タックラーが)ひとりの選手をかぶって見ていた。前のラインにいる人のコミュニケーション次第で全然、違う結果になったと思う。映像を見て、お互いにどこが悪かったかを(改善)できると思う」

 対するオーストラリアAのライアン・ロネガン主将はこうだ。

「日本のディフェンスはよかった。特に前半。我々を追い詰めようとした時に反応が早くなる、整備されているという印象です。ただ後半に入ってからは、そこに隙間がのぞくように見受けられた。我々にとっては、前半できなかったことが後半にできるようになる隙間が見えた。疲れも出てきたのかもしれません。そこでプレッシャーをかけ、ゲームプランを貫くことで、活路を見出せた」

 坂手の総括は。

「よく守れていたところは、前半、自陣22メートル(線周辺)に入られた時。ダブルタックル、ダブルコリジョンを意識していて、それができたところが多々あった。ソフトトライを獲られたところでは、立ち位置、コミュニケーションのミス、ラインアウトのアライメントのミス(後半21分の1本を指してか)があったと思います」

 防御で手応えと修正点を見出したJAPAN XVは、攻めてもスタイルを貫く。

 後半3分には、ウイングのシオサイア・フィフィタの好突破で敵陣深い位置へ進む。一時は被ターンオーバーも、タフな防御で落球を誘う。

 直後のスクラムから、スクラムハーフの齋藤直人が技ありの動きとパスで勢いを作る。アウトサイドセンターのディラン・ライリーがラストパス。フィフィタが無人の左サイドを快走した。両チーム通じての初トライを奪った(14―6)。

 松島が登場間もなくトライを奪ったのは後半15分。相手ボールキックオフからのフィフィタのランがきっかけだ。

 自陣深い位置左のフィフィタがハーフ線を通過し、この日好守連発のロック、ジャック・コーネルセンにバックフリップパスを放る。

 コーネルセンが敵陣10メートル線付近左でラックを作ると、流大が短いパスを放ってフランカーの姫野和樹がさらに前進。まもなく右サイドのスペースへ大きく展開し、インサイドセンターの中野将伍のラストパスと松島のフィニッシュを生んだ。

 総じて、キッキングゲームと機を見てのカウンターアタック、飛び出す防御の裏側へのキックでチャンスを作った。他方、接点の周辺で球を繋ぐ際のエラーに泣いた。

——この日のエラーはどうなくしていくか。

坂手

「映像を見ていないので、どういうミスが多かったかなというところは感覚でしか言えないのですが、ボールを持ち込んだ時のノックオン、勢いを出しそうなところのブレイクダウンでのミスが多かったかなと。コンタクトの入り方、ボールを守ることを見直したいです」

 JAPAN XVの選手で目立ったのは、途中出場したロックのワーナー・ディアンズ。タックル、スクラムハーフ周辺でのユニットに置ける突進で存在感を発揮した。

 この日がデビュー戦となった右プロップの竹内柊平、フランカーの下川甲嗣、スタンドオフの中尾隼太も防御で魅した。

 特に下川は、9-6で迎えた前半終了間際に自陣22メートル線付近中央でジャッカルを繰り出し、相手の反則を誘った。

 ジョセフは続ける。

「新しい選手が出場できたことは自分たちにとって良かった。新しい10番、プロップ、フランカーにとって、いい機会になった。自分たちの選手層に厚みを持てたおかげで、このような選手が活躍できたと思います」

——下川選手、中尾選手について。

ジョセフ

「新しい選手が、新しいチームに入っていくのは難しいと思うが、彼らはたくさんの観衆の前で自分の仕事を遂行してくれた。

 下川は前半、いいプレーをしてくれた。未来がある大きな選手。若いことは素晴らしい。スーパーラグビー(国際リーグ)でプレーする選手を相手に戦えたことは、いい経験になったと思います。日本の未来においてもいい兆しです。

 中尾もチームをリードしてくれた。野口竜司、松島の同時投入で素早さを使いたいということで途中交代をしましたが、素晴らしかった」

——故障や病気から復帰した松島選手、姫野選手、流大選手について。

ジョセフ

「姫野はいいインパクトを与えてくれた。流も松島もそうです。得点を追うさなかに松島がスコアしたところも、素晴らしい。3人の質の高い選手が後半に出てきた。彼らの特別性、経験は、今後も必要になる。彼らも長い間ラグビーをしていなかったので、今後ラグビーをする必要がある。中村亮土、具智元、稲垣啓太も(今後)怪我を治して戻る予定です」

 自前の型に手ごたえを掴み、理想と現実の距離感を再認識し、かつ新戦力も発掘できた。この午後は勝敗に関わらず、目的の多くは果たされたと言える。ジョセフはこうも言う。

「気持ちが(前に)出すぎた(結果、防御が破られるなどした)という問題があった。ただ、こうした問題はあってもいい。今後もやる気とパッションは失わず、遂行力を求めるのが重要です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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