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帝京大学の高本幹也、元同級生・李承信の代表デビューに何を思った?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季の大学選手権決勝での高本(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 プロラグビー選手の李承信は今年7月、21歳の若さでテストマッチ(代表戦)デビューを果たした。

 対フランス代表2連戦で、日本代表の司令塔として先発。勝利こそ掴めなかったものの、落ち着いてタクトを振っていた。

代表戦計3試合に出場。フランス代表戦ではゴールキッカーも務めた。
代表戦計3試合に出場。フランス代表戦ではゴールキッカーも務めた。写真:西村尚己/アフロスポーツ

 日本のラグビー界では、多くの選手が大学のクラブを経て次のステージへ進む。

 ただし李は、大学を中退していた。

 大阪朝鮮高級学校を経て2019年に入った帝京大学を、わずか1年で退学した。現在は、国内リーグワン加盟のコベルコ神戸スティーラーズに在籍する。

 大学時代の同級生は、いまや最上級生となっている。

 そのひとりが高本幹也だ。

クレバーさが光る。
クレバーさが光る。写真:西村尚己/アフロスポーツ

 高本は大阪桐蔭高校時代に冬の全国大会を制し、李とともに高校日本代表に選ばれている。帝京大学ではともに将来の主軸候補として期待されたが、袂を分かった。

 ポジションはスタンドオフ。李と同じ位置だ。

 立ち位置と目線を自在に変化させながら、ラン、パス、キックを使い分ける。学生屈指の司令塔と謳われており、卒業後はリーグワンの強豪クラブでのプレーが期待されている。

 目下、長野・菅平高原で合宿中の高本は、7月3日の関東大学オールスター戦後に取材対応。チームを離れた同級生への思いを語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——同級生が日本代表になりました。

「悔しいというより、うらやましいという思いが強くて。僕も、入ってみたいな、というのが、素直な気持ちです」

——連絡は。

「たまに連絡を取ります。『去年の(大学選手権の)決勝、お疲れ様』とか」

——2人の関係は。

「中学生の頃から対戦経験があって。接点があるのは高校生の頃ですかね」

——近畿地区の16歳以下の優秀選手による選抜チームで、一緒になった。

「僕が10(スタンドオフ)で承信が12(センター)になることが多かったです。承信が12の時は外側(のポジションの選手)をしっかりマネジメントしてくれる。

向こうがどう思っているかはわからないですけど、僕としては絶対に負けないぞという気持ちがあって。けど、お互い頑張っていこうということも、それぞれ思っていたと感じます」

——帝京大学でも同級生となりました。退学の相談は受けたか。

「普通に、ナチュラルに、重そうな感じではなく(相談された)。僕としては残って欲しかったです。引き止めは、しました。強引にではないですが、『一番いい選択をしたらいい』と伝えました。ただ、承信がそっち(退学)を選んだので、(最終的には)そっちで頑張って欲しいという気持ちが僕のなかではありました」

 李には、海外への思いがあった。カテゴリー別の代表として世界に挑んだことで、ハイレベルなプレー環境を求めたくなった。それを退学理由のひとつとした。

 ニュージーランド挑戦を目指し、その頃に同国のクラブでプレーしていたメイン平へ相談をもちかけていた。

メインも今夏、代表デビュー
メインも今夏、代表デビュー写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 メインとは高本とともに高校日本代表に入っており、特に仲が良かったようだ。

 高本は続ける。

——李選手は紆余曲折を経てスティーラーズに入りました。リーグワンでプレーする姿を見て、どう感じましたか。

「やはり、悔しいではなく、うらやましいというのがあって。僕も早くそういう舞台で活躍したいとは、思います」

——高本選手も、将来的に世界で戦いたいと話しています。

「世界レベルの選手と戦うにはフィジカルが必要。体重を増やして、怪我をしない、相手に当たり勝つフィジカルをつけていければと思っています。ウェイトの数値、上がってきています。僕、1年生の時、ベンチプレスが100キロもあがらなかったんですけど、いまは130キロを。スクワットも120キロくらいから175キロくらいになり、デッドリフトも最近は200キロを」

 帝京大学は前年度、9連覇を果たした2017年度以来の大学日本一を達成。その時から主力だった高本は、ラストイヤーも頂点を目指す。

 監督が岩出雅之氏から相馬朋和氏に交替するなか、こんな決意を明かしている。

「相馬監督には去年のシーズンの途中から来ていただいたので、今季、特にラグビーのことの変化はなくて。ただ、チームのマネジメントに関することで、話し合うようにはなりました。4年生として、帝京大学ラグビー部として、チャンピオンチームを目指す。優勝するだけでなく、尊敬される、応援される、というのを目指していこうと。これをしたら尊敬されるんじゃないかということをするのではなく、尊敬される行動がどういうことなのかを自分で考えてやっていくこと(が大事)だと、チームで考えています」

決して大柄ではないが、技術と冷静さが光る。
決して大柄ではないが、技術と冷静さが光る。写真:つのだよしお/アフロ

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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