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日本代表が敗戦も、指揮官はそれほど怒ってない?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
グラウンドでは真剣な顔つき(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、笑顔を浮かべていた。その理由は…。

 ラグビー日本代表は7月2日、愛知・豊田スタジアムでの対フランス代表2連戦の1試合目を落とした。ハーフタイムまで13―13と競り合いながら、23―42と敗戦。しかし試合後、指揮官は穏やかな顔つきだった。

 坂手淳史主将とともに会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――後半にペースを落とした。

ジョセフ

「80分間を通して、試合です。最高気温35度という暑さのなかでプレーする難しさを感じた。前半を13-13で終えられた。後半開始早々、7点差を追う展開となったのは改善点になります。後半はミスが多く、フランス代表に圧力をかけられた。しかし、日本代表には自分たちからアタックをしかけていく意識があった。それはよかったと思います」

坂手

「前半はいい形でアタックしていたし、ハーフタイムもいいコミュニケーションを取った。『後半最初の10分で、フランス代表がくる。ここで自分たちのいい形のラグビーを』と。ただ、遂行力があまりよくなかったですね。ミスボールを拾われ、ここからビッグゲインされたり、アウトサイドでゲインを切られたり。それが、セカンドハーフの内容に繋がったと思います」

――後半にミスが増えた理由は。

坂手

「後半はスキルをしっかり使おうと言ってゲームに入ったのですが、そのスキルの部分で、反応が遅れたところがあったかな、と。いまの感覚ではそう思います。また、ゲームを(映像で)見ていきたいです」

 日本代表は6月3日に始動。予備軍のナショナルディベロップメントスコッドと同時並行でキャンプをおこない、本隊側は4つ組まれたテストマッチのうち2試合目に登場。この日のフランス代表戦は、坂手らにとって今季2度目の実戦だった。

 この試合の直前期には、想定外のピンチに直面した。

 新型コロナウイルスの陽性反応を受け、まずは主力候補と見られていた堀江翔太、齋藤直人、野口竜司の3選手が離脱する(齋藤は3日に再合流)。

 スタンドオフで先発予定だった山沢拓也も、試合前日の練習前に発熱。出場メンバーの変更がなされた。

 世界ランクで8つ上回る2位のフランス代表に対し、急造の布陣で挑む側面があった。

――今週は選手の入れ替わりを余儀なくされた。今後もそうなるかもしれない。どう捉えていますか。

ジョセフ

「怪我や病気により(一部の選手が試合に)出られなくなった。ただ自分としては、いまいる選手たちにわくわくしている。10番(司令塔のスタンドオフで急遽先発)の李は21歳でビッグゲームに出ることになった。彼に出場を伝えたのは木曜日です(当初はリザーブで登録)。彼がスタートで出るのは重要で、素晴らしいいい経験になった。彼は自ら学んでいくことによって成長する。コーチとしていい経験を与えられたと思っています」

 ここからジョセフは、攻撃面の数値で好感触を得られたと強調。さらにこう続ける。

「自分たちのなかでモメンタム(勢い)を出し、プレッシャーをかけられることがわかった。今後はバランスが大事。これを35分ではなく、80分、やり続けないといけない。そう意識し、次の試合に向かいたいです」

 9日、東京・国立競技場での同カードを見据える。坂手はこうだ。

「僕たちのやろうとしているラグビーのスピード、スキルを使おうとすることは表現できた。ただ、遂行力ではまだまだ足りない部分がありました。もっと精度を上げないといけない。クイックボール(接点からの早い球出し)を出せたところはありましたが、そのパーセンテージももっと上げないと、僕たちのラグビーには繋がっていかない」

 目指す形を実現すれば相手にとって脅威になれるとわかった。ただ、目指す形の再現性はもっと高めなければいけない。そう言いたげだった。

――それにしても、負けたのに表情が穏やかに映ります。理由はありますか。

 指揮官はまた笑った。

「年を取っただけだと思います! …選手たちを誇りに思います。今週は逆境にありました。ディテールを落とし込む過程で選手がいなくなった。そのなかでも代わりに入った選手が対応できた。(ワールドカップフランス大会のある)来年には、そういう選手がたくさんいるということになる。ファーストステップとしては、よかったと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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