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日本代表・山沢拓也、5年ぶり代表戦で「キャップにこだわらず」の真意は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
堂々たるコントロール(写真提供:日本ラグビーフットボール協会)

 直近のテーマが「自分らしく」。今日の総括も「自分らしく」できたところがあった、である。

 ラグビー日本代表の山沢拓也は言う。

「キックでエリアを取っていくところは、自分らしさというか、自分がやりたいプレーでもある。エリアを取っていくことでチームに勢いを与える。そうして貢献できればいいと思っていました。いくつかミスはありましたけど、比較的、敵陣でプレーすることもできた」

 6月25日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州。司令塔のスタンドオフとして5年ぶりの代表戦に先発。序盤から両端のスペースへ端的にキックを蹴ったり、攻守逆転からスペースをパスで切り裂いたりと、ウルグアイ代表を圧倒する。

 36―0で迎えた後半22分までプレーし、43―7で勝利した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――今日の自己評価は。

「自分のやるべき仕事はそれなりにできたかなと思っています。1試合を通してエリアをマネジメントして、敵陣でプレーし続けることをフォーカスしていました。いくつか自分たちの規律のところ(反則)のために自陣で釘付けになってしまったんですけど、基本的には敵陣でプレーできたので、失点は少なく抑えられました。それはよかったかなと思いました」

――緊張は。

「緊張はそんなに…まぁ、ちょっとはしました」

――攻撃面では。

「今日に関してはウルグアイ代表のディフェンスが前に出てくるものでもなかったこともあって、(ボールを)回しやすい環境ではあった。それで外に回してゲインが切れたのはよかった。ただ…」

 収穫に加え、反省も忘れない。後半開始早々、中盤で外のスペースへ球を運びながら味方の落球に終わったことを鑑みてか、このように続けた。

「…そのなかで、スコアまで繋げられないところがあった。相手の流してくるディフェンスに対してどういうアタックが効率的か、プレー選択もバリエーションを交えながらやっていければもっといいアタックができるかなと思います」

――4本あったコンバージョンゴールをすべて外してしまいましたが。

「ちょっと、言い訳になりますけど、風が読めなかったところもありまして。ウォーミングアップの時に蹴った時に感じた風と、前半に実際に蹴った時に感じた風の浮き方が違ったので。1本、蹴ってそのミスを修正できればいいキックにつながるかなと思います」

 身長176センチ、体重84キロの27歳は、謙虚さと勤勉さ、何より独自の才能で知られる。

 人をかわす技術、人に捕まった後のボディバランス、多彩なキックが持ち味だ。

 深谷高校で本格的にラグビーを始めるや、3年時には日本代表候補に選出される。筑波大学4年時には当時のトップリーグに参加していたパナソニックワイルドナイツ(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)に加わる。「大学生トップリーガー」として話題を集めた。

 ただし、ここまで日本代表で得られたキャップ(代表戦出場数)は、わずか3に止まった。2016年秋に就任のジェイミー・ジョセフヘッドコーチには、戦術理解度やコミュニケーションの領域で課題を指摘された。

 今回は前年度までの主力格が選外となるなか、新参者(※)との競争の末にチャンスをつかんだ格好。今季発足の国内リーグワンでは終盤に司令塔の座を保ち、おもに防御で魅していた。

 山沢は続ける。

――スクラムハーフの齋藤直人選手との連携は。

「齋藤選手は自分の声を待つだけじゃなく、自分の感覚、判断でプレーすることもしていたし、コントロールのところでもフォワードの人たちをリードできていた。その辺は、うまく役割分担ではないですが、お互いに助け合いながらできたのはよかったと思います」

今度のパフォーマンスを受け、ジョセフにはこう言われた。

「山沢は、ジャパンのジャージィを着て経験を積むことでもっといい選手になる」

 7月2、9日の対フランス代表2連戦(それぞれ愛知・豊田スタジアム、東京・国立競技場)へ、ひとまず及第点をもらったような。山沢は明日を見据えた。

「気持ち的には今回の試合でファーストキャップくらいの感覚。(前の代表戦は)5年も前のことなので、今日はフレッシュな気持ちで試合ができた。そこまでキャップにこだわらず、毎試合、毎試合、出られたら、自分ができることをしっかりやりたいと思います」

 記録にとらわれず、目の前のミッションに集中する。

※ 中尾隼太、李承信(それぞれ東芝ブレイブルーパス東京、コベルコ神戸スティーラーズ=どちらも初選出)。李はこの日、後半22分に途中出場。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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